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ZEROから魅せる成り上がり  作者: 半目真鱈
プリローグ

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第9話 精神混濁症

「おい…大丈夫か?顔色が悪いぞ。」

「いえ、大丈夫です。」


 メギドさんが心配した声色で大丈夫かと問うてくるが、今の俺にはそれは死の宣告と同義だった。何が起こるのか分からない。それが一番大きかった。


「それで、さっきの用事って何なんですか?」

「あぁ…お前の精神混濁症で話を聞きたいって奴が居たんだ。そいつと会ってもらう」


 それからメギドさんに連れられた場所は来たこともある。俺が精神混濁症でお世話になった資料室だった。そこには能面の如き女性が立っていた。


「こんにちは。そして改めて宜しく。私はプリメード・リーカルと申します」

「よろしくお願いします。それで、今回は何の様なんですか?」


 俺が首を傾げて問うてみると、プリメードさんは分厚い辞書の様な物を取り出した。それに圧倒される間もなく。女性は口を開いた。


「私、実は精神混濁症の研究者でして、貴方に起こった症状を聞かせて欲しいんです。」

「そう言う事ですか。分かりました。最初は…」


 それから俺は、プリメードさんに事の内容を語った。彼女と資料室で会って語り合った時、それから実際に如月英人を殺害しかけた事。そして、人核分裂を起こした事。


「今も人格は分裂しているんですか?」

「はい、今も瞑想したら人格と会話できます。これが何かの役に立ちましたか?」


 俺が問うてやると、彼女は辞書の如き書物に、俺が体験した事を一文字の狂いも無く書き記していた。


「役に立ちましたとも、貴方のお陰で仮想人格を作り出す事での治療。それが見えたのですから。」

「そう言えば本には技能洗浄をしない違法業者が居るって見たんだけど、それの治療って出来るんですか?本に載って無くて。」


 それを聞くと「良い事を聞いてくれました。」と言って能面の如き笑顔からとても嬉しそうな笑みを浮かべていた。だが、その奥に見た覚えのある瞳が有った。ハスクの瞳、好奇心と言う名の獣の眼だ。


「現在の魔道技術では精神混濁症を治療する手段が無いんですよ。ですが、貴方のお陰で治療の芽が出てきました。本当に有難う御座いました。これからも、末永くご一緒したく思いますよ」


 そう最後に、ハスクの様にニヤ付いた笑みが、頭の中を離れない。そして、それを最後に、メモに何らかの文字を書いていた。言語理解があると言うのに、意味が分からないでいると、メギドさんが声を上げた。


「こうなった彼女に話は通じない。後は訓練に戻るぞ。お前の魔力付与はまだまだ伸ばせる。それをもっと磨くが良い」

「分かりました。」


 俺はメギドさんと共に訓練場にまで戻ってきた。そこで目にしたのは、皆が拙いながらも魔力付与を成功さしている光景だった。俺はあんな短時間で出来たのか。と言う驚きがあった。


「よぉ。悠馬君よォ。ちょっと新しい力を覚えてな。実験台になってくれや」

「そっちこそ。俺も魔力付与は十分に鍛えてんだよ。」


 鱗を生やした竜童さんが俺にパンチを叩き込んでくる。俺は咄嗟に回避したが、次から次へと来る拳撃の嵐に対処が出来なかった。


「俺の固有技能は〈捕食者〉。摂取した生物の特徴をコピーする。王様の恩寵でよ。貰ったんだよ。異世界に存在する最強種、ドラゴンの血を」

「ドラゴン…まさか、その鱗は竜の?」


 竜道満は、俺の質問に答える間もなくパンチを俺の腹に叩き込んだ。幸いにして痛覚無効と再生が有るから問題は無いが、衝撃によって俺は吐き出してしまった。


「おいおい唾が飛び散ったぞ。汚ねぇな悠馬君よォ」

「そっちが、やったんだろうが。」


 俺の言を無視するかの如くに放たれた拳…俺は咄嗟に〈隠者〉を発動して透明になる。


「どこ行きやがった。」

「…済まないね。今、お前と戦いたく無いんだよ。」


 此奴に対する殺意が溢れそうになった。これはダメな兆候だ。俺はそのまま自分の部屋へと戻る。そこで、再度瞑想をして、瞑想空間に来ると、キシュアとハスクが何やら語り合っていた。


「では、お前の技能〈隠者〉は相手の記憶にも残らないと言う事か?」

「はい…それが原因で、私は父と母と会話した事がありませんでした。ですが、それがどうかしたのですか?」

「何か盛り上がっている様だけど、何かあったの?」


 俺が現れた事に気が付いたのか、ハスクは少しだけ興奮したかのごとくに語りだした。


「あぁ…お前か。なに、隠者の技能考察をしていただけだ。その技能は異質だからな。何せ、本人の力で制御が効かない。これは、私の知識には無い事だ。」

「そう言うのって珍しいの?」

「少なくとも、私の同年代では同じような子が、二人居たのですが。」


 それを聞くと更にハスクは興奮しだした。何やら好奇心の獣を目覚めさしてしまったようだ。


「私が牢獄に収監されたのは凡そ100年ほど前だ。その時には、技能の暴走何て言う事象は無かった。」

「待って。100年って言った?嘘でしょ?見かけ40位なんだけど?」

「ご存じないのも当然ですわね。ハスク・リードと言えば、150年前に禁忌の研究で名を上げた天才魔術師です。その功績の一つが、不老研究ですわ。」


 不老研究?マジで世界を変えるレベルの発明じゃん。


「何、片手間の産物に過ぎん。しかし、夢の研究とまで言われたモノを貶めるのが好きなのだよ。この国の連中は。」

「どう言う事?その不老研究が何か悪用されたの?」

「現在の王国法では第二級犯罪者には最低でも100年の禁固刑が科せられます。それを可能にしたのが、件の不老研究です。」


 待って、確かアメリカじゃ懲役1000年とか有ったけど、それをリアルでしたのか?考えるだけで胸に何かが重くのしかかる。もしかしたら、一歩間違ったら俺もそうなるやも知れん。


「死ぬほど悪趣味だな。」

「確かにそうですわね。ですが、それ程までに危険視されているのですよ。」

「そうだな。実際に私は禁固千年の刑だ。」


 考えれば考える程に腐っている。夢のような不老を、ここまで悪辣に使えるものか。


「それに加えて、多数の縛りが、刑を終えても続く。正に永劫地獄となる。だが、まさかこんな奇跡に出会えるとは思っても見なかった。とことんまで使い潰す積りだ。まぁ君が壊れるか、世界が壊れるのが先かだがね。」

「と言うか、ナチュラルに実験動物を見るような目をしないでくれる?嫌なんだけど。」


俺の言に賛同するかのようにキシュアが言う


「確かにそうですね。今のあなたは彼の技能の一部、それが、反逆するなど」


 それを言うと、ハスクは面白いモノを見たかのように笑い出した。底の見えない邪悪な笑みだ。


「フハハッ…誰が私を解放しろと頼んだ。勝手に奪ったのはお前だ。だからこそ、私はお前をとことん使い潰す積りだ。そうなりたくないのなら、それ以上の成果を見せろ。」


 ハスクは邪悪すぎる笑みを浮かべたまま消えて行った。その後に現れたエウゴが語る。


「儂もそうだが、メイガースの嬢ちゃん以外は、クソッ垂れの犯罪者だ。儂も含めて、あまり奴の言葉を信用するな。」

「うん…ご忠告どうも。そうする様に心がけるよ。」

「はい、彼の天才性は理解してます。そして、狂気性も」


 俺はその言葉を言い残して、瞑想空間から逃げるように退散した。あそこまで捻くれているとは…我が人格ながら問題があり過ぎる



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