5話 怪しい占い師
宝物殿での一件を終え、勇者の剣(100均)勇者の盾勇者の弓(水鉄砲)勇者のローブ(ビニールカッパ)勇者の鞄を装備して、私の格好は、休日の日曜日に家族でキャンプ。下の子から玩具を持たされ、親から荷物を持たされた、雨の日の長男である。
ありきたりに言って、ダサい。
「おお、裕也よ。一段と勇者らしく、様になっているな」
王様は、褒めているのだろう。バカにしているように聞こえるけど。
「そうですな、王よ」
大臣、止めろ。忠臣として、「勇者がこのようでは、彼の国からの心象を損ないます」と言え!
「 」
騎士団長、発言しろ!「この装備は、私が選びました」と進言しろ!そうしないと、私が好き好んで選んだみたいじゃないか!!
視線に気付いて微笑むな!不安で見つめた訳じゃないわ!
クッソ、イケメンだな!!
「裕也よ。先も言ったように、時間を与えることはできない。だが、支援を惜しむつもりもない。政治的理由で騎士団や傭兵をこちらで用意する事はできないが、情報や物資、金銭で十分に支援をさせてもらう。隣国に着いたら、王家の紋章を蓮の御紋を掲げている商会を頼れ」
「ありがとうございます」
「それでは、勇者よ。旅立ちの時だ!」
国王の一言で王城の扉が開かれ、大勢の騎士が微動だにすることなく並んでいる。
騎士と騎士の間を通って城門を出ると、そこには街が広がっていた。
美しく整備された石畳の地面。
奥には市場があり、その賑やかな声がこちらまで聞こえている。
「お兄さん。そこのお兄さん。果物買っていかないか
?」
「1ついくら?」
「銅貨3枚だか、勇者様には特別に銅貨2枚でいいぞ」
私は、小袋から銅色の硬貨を2枚取り出し渡す。
「毎度!」
受け取った果物は、バナナの様な形をしていて、食べてみたが甘くはなかった。
「そっか、異世界だもんな。品種改良なんか無いよな」
視界の横に、怪しい人物が写った。
「そこの人。ちょっと、寄ってきな」