第2話 いつも通りの異世界転移
2日目です
その日のことを忘れることは、生涯無い。
そんな1日は、ある日突然訪れた。
いつも通りに朝の支度を済ませて、いつも通りの道と電車で学校に着く。
そこには、いつも通り誰もいない教室。
自分の席に座ると、僕はゆっくりと目を閉じる。
いつもは騒がしい教室の一番静かな時間。
ざわざわと音がする。
皆が、登校してきたのだろう。
耳の中に膜が張られて、全ての音が一つ遠くに感じる。
「裕也よ、目覚めよ。勇者、裕也よ」
聞き覚えの無い、重圧を感じる太い声。
目を開ければ、そこは何処かの宮殿。どんなに寝ぼけていても、築80年を超えた公立の教室ではない。
「どなたですか?」
「私は、エムレス ロイヤル フォント。この国の国王である」
国王。つまりは、偉い人だな。
どうやら、周りの人もピリピリしているし。
うん。間違いない。
余りにも、頭が動いていないな。
だが、国王様の前で寝ぼけた顔。リラックスモードの座り方。
うん。アウトだな。
そう思えば、周りの人のピリピリとした表情も国王の前である緊張ではなく、イライラに思えてきた。
慌てて立ち上がり、姿勢を正す。
「そう、かしこまらずとも良い。そなたを、この国に呼んだのは理由がある」
「その理由とは、なんでしょうか」
「隣国を救うってほしい」
は?
「すみません。隣国を救ってほしいとは」
「言葉通りだ。隣国のモウヤンは、滅亡の危機にある。彼の国は、魔獣災害により苦しい戦いを虐げられていると聞く。裕也には、勇者として彼の国の救援にあたってもらいたい」
耐えたー。こういう展開はラノベでは、自国を救ってほしいが基本だから、そっちじゃないのかよと思ってしまった。
「わかりました。ところで、僕にはどんな力があるのでしょうか?」
「何か特別な能力があるのか?」
「わからないです。能力を測る石板とか、ありませんか?」
「ないぞ。そういうのを、持っているのか?」
「じゃ、どうやって戦うのでしょうか」
「身体を鍛えるのであろう。騎士団長よ」
国王は、隣に控えていた男に話しかける。
「そうですな。人を相手にするのも、魔獣を相手にするのも変わりませ。心身を鍛え、武器を手に倒す。これの他にはありません」
能力無し。これは、ハードモードか?
ハードモード系異世界転移。シリアスな物語を楽しむことごできる作品群だが、自分ではやりたくない。
「国王陛下。しかしながら、隣国の状況は一刻を争います」
「鍛える時間は無いと」
「そのとおりでございます」
本気かよ。普通の戦場に危険地域に、一般高校生を送り出すのかよ
「そういうわけで、申し訳ないな。裕也には、明日にでもここを経っていただきたい」
「冗談をよしてください」
「申し訳無い。その代わり、かつての勇者が遺した装備がこの国には幾つかある。それを渡そう」
そんな。マシンガンと戦車でもなければ無理だな。