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君がわたしにくれたもの  作者: 雨世界
飛鳥 あすか ただ、まっすぐに生きる。
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 二週間後、明日香がバイト先に行くと、そこには匠がいた。

 匠は明日香と同じ北高の一年生で、バイト先が同じということもあり、今のところ、明日香が北高に来て新しく知り合った友達の中で、一番仲が良くなった男子生徒だった。

 ちなみにクラスも一組で一緒のクラスだ。

「明日香。お前、林先輩に振られたんだって」と匠は明日香の顔を見て言った。

 ずっと秘密にしていたのに、ばれてしまった。まあ朝陽先輩と五十嵐響子先輩の噂は有名だからしょうがないことではあった。

「そうだよ」と言いながら笑っている匠の肩にパンチをして、それから明日香は更衣室でお店の制服に着替えをした。

 その日、朝陽先輩はバイトがおやすみの日だったのだけど、お客さんとしてお店にやってきた。しかもあの、五十嵐響子先輩と一緒に、だ。

 いらっしゃいませをしたのは明日香で、二人の姿を見て、一瞬明日香はその動きを完全に止めて、その場でフリーズしてしまった。

「こんばんは、梢さん」と五十嵐響子先輩が笑顔で言った。

 その声で明日香の金縛りは解けて、明日香は二人を空いている席に(できるだけ目立たない、お店の奥の席)案内した。

「ありがとう」と五十嵐響子先輩は言った。

 当たり前だけど、五十嵐響子先輩はいい人で、朝陽のことで一方的に五十嵐響子先輩のことをライバル視していたのは明日香だけだった。だから明日香を見る五十嵐響子先輩の瞳に一点の曇りもなかった。

 それになんだか以前よりも朝陽先輩同様に、五十嵐響子先輩はその身に纏っていた攻撃的な雰囲気が柔らかくなって、落ち着いて、まるで厄が落ちたみたいに温和になった。

 唯一、明日香が五十嵐響子先輩に勝てると踏んでいた性格の面でも、今では到底、梢明日香に勝ち目はないように思えた。

 明日香の心は今、この瞬間にでも暗黒の方面に落ちそうになっていた。

 明日香の気持ちは崖の上にかかっているぼろぼろの橋の上をふらふらとした足取りで歩いて渡ろうとしてる人のように、不安で、頼りなかった。

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