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「……と、いうわけなんです、木野さん」
明日香はそのことで木野さんに相談をした。木野さんには悪いと思ったけど、ほかに相談できるような人物が明日香には思いつかなかったのだ。
「まあ、話はわかったけどなんで俺なわけ?」と木野さんは言った。
二人はバイト前に、お店の近くにある喫茶店で待ち合わせをしていた。誘ったのは明日香で、今日は相談料としてコーヒー代も明日香持ちだった。
「そういうのって、もっと相談する人、ほかにいるでしょ? とくに梢さんは友達も多いんだしさ」
確かに最初は親友の茜に相談しようかとも思ったけど、できなかった。茜は梓と昔から仲がよかったからだ。
他の友達にはこういった相談はあまりしたくはなかった。
「お願いします。木野さん以外に頼れる人がいないんですよ。相談に乗ってください」明日香は木野さんに頼み込む。
「そりゃ、梢さんの頼みだから聞いてあげたいけどさ、……この間のことを考えているんだとしたら、あれは例外だよ。俺は基本、他人に無関心だし、あれは、……朝陽と梢さんの話だったから、俺は俺らしくもなく、二人にちょっかいを出したんだよ」と木野さんは言った。
そのことは確かに明日香もわかっていた。
でも木野さんが恋愛経験豊富なこともまた、事実だった。
そのことを木野さんに言うと、「恋愛経験が豊富だからって、恋愛が上手いわけじゃないし、相手を傷つけないで問題を解決できるわけじゃないよ」と木野さんは言った。
「なによりも問題は梢さんの気持ちでしょ? 梢さんはその梓ってやつと付き合う気はないの? そいつ、すごくかっこいいんでしょ?」と木野さんは言った。
「ないです。全然ありません」と明日香は即答する。