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君がわたしにくれたもの  作者: 雨世界
飛鳥 あすか ただ、まっすぐに生きる。
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 夜空に綺麗な花火が上がった。

 遠くのほうから、ばーん、ばーん、という音がして、空に綺麗な花が咲いた。黄色い花。オレンジの花。赤い花。

 明日香は梓に手を握ってもらいながら、少し斜めになった草木の生えた地面の上に腰を下ろして、梓と一緒にその花火を見ていた。

 その花火がばーん、ばーん、とうちあがるたびに、明日香の中にあった淀み、固まっていた、不純物のようなものが溶け出して、……やがて、消えていった。

 それからは涙となって、明日香の内側から、外側へと流れ出ていったのだ。

 梓がそっとハンカチを明日香に差し出した。

「大丈夫?」と梓は言った。

 梓は明日香が泣いていることにすぐに気がついた。梓はずっと明日香を見ていた。梓は、……とても優しいのだ。

 その優しさに気がつかなかったのは明日香のほうだった。

 明日香はずっと朝陽先輩のことばかりを見ていた。

 その朝陽先輩を思う気持ちは嘘ではないし、今も明日香の中にその気持ちはしっかりと残っていた。

 でも、その強い気持ちが、一途な思いが、自分を大切に思ってくれるている人の心を、明日香に気がつかなくさせていた。

 見えにくくさせていた。

 明日香は林朝陽先輩以外の人間が見えないという、奇妙な病気になっていた。恋は盲目という言葉が、本当のことなのだと明日香はこのとき初めて知った。

「ありがとう」明日香は梓のハンカチを受け取った。

 そのハンカチで涙を拭いた。

 明日香は自分の中にある変なプライドとか、強がりとか、そういうものを捨てようと思った。もっと自然に、自分らしく生きようと決心したのだ。

 それから明日香は梓と一緒に花火を見た。

 花火は、とても綺麗に見えた。

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