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茜は蜜柑色をした浴衣を着ていた。髪はポニーテールで、鮮やかな赤色をした紐でその綺麗な髪をまとめていた。
梓は上品で落ち着いた服装をしていて、黒のパンツと白のシャツという出で立ちだった。時計も靴も、高価そうなものを身につけていた。
匠は紺色の浴衣姿だった。手には白いうちわを持っている。
明日香が匠の姿を見ていると、匠がそっと近づいてきて、梓と距離を取ると、「大丈夫だよ。ちゃんと途中でいなくなるからさ」と小声で明日香にそう言った。
明日香は匠のお腹にパンチをしてやりたかったけど、梓がこっちを見ていたので、にっこりと微笑んでから、匠の手のこうを軽く指でひねってやった。
「いて!」と匠は言ったが、明日香はそんな匠を無視して茜のところに移動した。
「じゃあみんなまずは神社にお参りに行こうか?」と茜が言った。
「そうだね。そうしよう」
そう言って明日香は茜と一緒に人ごみの中を歩き始めた。男子二人も、そのあとについて移動をした。
「朝陽先輩や五十嵐響子先輩も来てるかな?」茜が言った。
「たぶん、来てると思う」明日香は言う。
「あったらどうする? 挨拶する?」
「……もちろんするよ。でも、すごくいい雰囲気だったら諦める。邪魔しちゃ悪いから」と明日香は言う。
「えらいね、明日香は」そう言って茜は明日香の頭を撫でた。