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第五章 恐怖か憎悪か

 

 三人は山岳地帯の小さな村にたどり着いた。村の静かな風景には違和感が漂っており、村人たちの視線は冷たく、特にアクアには厳しいものがあった。


「アクア、どうした?入らないの?」


 渉が尋ねると、アクアは少し躊躇い、地面を見つめた。尖った耳が目立つ彼女だが、エルフ特有の黄金色の瞳を持たないため、彼女がハーフエルフであることはすぐにバレてしまうのだという。


「私は……行きたくない」


 その言葉に、渉の心は痛んだ。彼女の過去を考えると、無理に引っ張ることはできなかった。


「俺たちが一緒にいるから、少しはマシなんじゃないか?」


 レオルが優しく言うが、アクアは目を伏せたままだった。


「村人たちは、私を見て怖がる。ハーフエルフだって理由で……」

「それならこうしたらどうかな?」


 渉はカバンの中にしまってあったニット帽を被せるアクアは少し驚いたように顔を上げたが、まだ不安の色が残っている。


「でも、私の存在が迷惑になるかもしれない。村に入れば、また悪いことを言われる……」


 その言葉に、レオルは反応した。


「お前のせいで何かが起こるなんて、誰が決めたんだ? 俺たちは仲間だし、お前がいることで俺たちは助けられている」


 渉も続けた。


「俺はこの世界の事はわからないけど、種族で迫害されるなんて間違ってると思う。他はどうあれ俺はアクアを大切だと思ってるよ」


 アクアは少し考え込み、心の中でその言葉を反芻した。


「……私の瞳は、エルフとは違う。すぐにバレてしまう。それが怖い……」

「だったら、少しずつ慣れていこう。最初は無理に行く必要はない。俺たちが先に行くから、アクアはその後に続けばいい」


 渉は優しい声で言い、アクアはその提案に少し心が動いたようだった。


「……わかった。でも、行くのが怖い」

「大丈夫、俺たちがいる。少しずつ進んでいこう」


 レオルが励ますと、アクアは少しずつ表情を和らげていった。彼女の心の壁が少しだけ薄くなったのを感じた。


「二人ともありがとう少しだけ、頑張ってみる」


 その言葉に、渉は微笑み、アクアの手を優しく握った。彼女が心を開くことを、渉は本当に嬉しく思った。


「さあ、行こう。少しずつ、一緒に」


 三人はゆっくりと村に足を踏み入れた。アクアは心臓が高鳴るのを感じながらも、渉とレオルの存在が心強かった。


 村に入ると、耳を隠しているお陰か冷ややかな視線を向けられることはない。渉はアクアの手を握りしめ、少しでも彼女が安心できるよう努めた。


「大丈夫だよ、俺たちがいるから」


 渉はささやきながら、アクアを守るように歩いた。彼女の不安を少しでも取り除けるように。


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