第6話 カメラは偉大で、アルバムはもっと偉大である!
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――カメラを異世界に持っていったらどうだ?
という話をしたのは、つい数十分前の事だ。
そして我が家にあった一般的なデジカメと一緒に母が持ってきたのは、僕の幼い頃から現在に至るまでの数冊のアルバムである。
ちなみに父は現在、別室にて僕の今までの写真からイイものをチョイスしたミニアルバムを制作中の様で、あとでマリリンの雄叫びが近所に響き渡りそうな予感がする。
「おお愛しき君よ!! 嗚呼! こんなにも愛らしい時期もあったなんて……これは最早国宝だ!! 国宝にすべきものだ!! 神殿を建て、あらゆる防御魔法を屈し、そこで全世界の者たちに我の夫の素晴らしさを伝える為に存在すると言っても過言ではない!!」
「母さん、僕いつの間にマリリンの夫になったの?」
「何時だったかしら~?」
このマリリンの様子からして僕はある事を悟った。
そう――オリハルコンを越える物は、こちらの世界には一般人が手に入れるには無理な話だと。
その上で考え付いたのが、こちらの世界でお手軽に手に入るアイテム、香辛料や砂糖や塩といった生活に根付いた物を浸透させていった場合、色々な場面で有利になるのは異世界ではなくこちらの世界ではないかと。
無論、それらはマリリンと言う世界最強冒険者と言う後ろ盾が無ければ成立はしないだろうし、マリリンなしでは僕自信が生き残れる可能性は極めて低いと言える。
異世界相手を掴むなら胃袋から……とも言えるだろうか?
無論、世界の半分を手に入れたいというのなら、美容関連の物を売りに出せば簡単に世界の半分は手に入るだろうが。
事実、マリリンがこちらの世界で生活し始め、母がマリリンの為に用意したシャンプーや美容液や洗顔などを使い始めてからというもの、彼女の荒れていた髪や肌がみるみる美しくなったのは紛れもない事実である。
「おお……おお!! 愛しのカズマとの子をなせたら、この様な天使が世界に誕生するのかっ! そうなれば生誕祭だ!! 人類全てが祝福し、生きとし生きる者全てが頭を垂れるだろう!!」
「どこぞの国王じゃないんだから……」
想像して感涙するマリリンンに僕は小さく溜息を吐きつつも、見た目はゴッツイ兄さんで女性らしい胸のふくらみ極小な彼女に対し、少なからずの可愛さと言う物を感じつつあった。ただし、マスコット的な意味合いでだが。
感涙するマリリンを僕と母とで見守る事数十分――父は一冊のアルバムを手に現れた。
「マリちゃん」
「何でしょう義父様」
「君の真摯な気持ちに答えてあげたくてね。コレを君にあげよう」
そう言って受け取ったアルバムを開いた瞬間、人間には聞こえない周波数の叫び声を上げたマリリンと同時に、森が一斉に騒めいた。
その日の夜――。
地元のニュースでは、一般道に多くの野生動物が出現し話題をさらっていった。
暫し興奮冷めやらぬマリリンをそのままに、僕は「オリハルコンのようなレアは無理でも、異世界の胃袋を掴むことは可能である」と両親に話し、両親もまた考えに同意した。
無論――世界の半分も諦めてはいなかった。
斎藤家……意外に強かであった。
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