第53話 日本でのハネムーンに胸躍らせる!(下)
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――マリリンside――
実の所、我は悩んでいた。
カズマとは夜は愛し合っているが、中々子に恵まれない事に。
家族も欲しがっている、夫であるカズマだって我が子を待ち望んでいる。
だが、妊娠する気配が無かったのだ。
故に……カズマが提案してきた「子宝温泉」というのに縋りたくなった。
温泉に入りながら、本当にこの湯が子宝に効くのだろうかと不安に思いつつも、我は縋るしかなかったのだ。
もし妊娠しにくい身体と言うのなら、それを直す薬を飲めば済む話だが……女性としてそれは酷な話でもあった。
出来れば自然に授かりたい。
そう思いながらも、ついつい後回しにしてしまった我が子への思い。
無論出来るのなら今すぐ妊娠したい所だが、そう上手くはいかないだろう。
「この異世界の子宝の湯が、我に効いてくれればいいが」
カズマが出て行ったあと、ついぼやいてしまった。
彼との子は願ってもない、是が非でも欲しい存在なのに……そう思いながらも、表情は暗い。
だが、そんな顔を見せる訳には行かぬ!!
気合を入れ直して着替えて愛する夫の元へと向かい、夜はバーベキューで舌鼓を打ち、こちらの世界では牛肉や豚肉、鶏肉と食べる為に育てているのだと聞いて驚きながらもしっかりと味わって食べた。
すると――。
「このコテージの子宝の湯はね、源泉かけ流しなんだよ」
「凄いですね」
「たまたま空いてたけど、何時もなら満員御礼のコテージさ」
「「へぇ」」
「ここの湯に入って子宝に恵まれたって人は、俺が知る限りじゃ100%だな」
「「そんなに!?」」
「なんでも、おまじないがあるそうだ」
おまじない……一体どんなものだろうか?
「寝る前に温泉のお湯を欲しい子供分だけ飲んで寝るんだそうだ。それがご利益あるらしいぜ」
「寝る前に欲しい子供の分だけ温泉の湯を飲む……か」
「マリリン試してみるかい?」
「そうだな! 是非試してみたい!!」
「お湯の出てる龍の口からお湯を取って飲んでみな。みんなそこかららしいからな」
「分かった!」
こうして片付けまでして帰っていったオーナーと言う人に我たちは別れを告げ、風呂場にコップを持って向かい、ドバドバとドラゴンの口から出ているお湯をコップに入れて5杯程飲んだ。
――所詮呪いだ。
――効けば御の字。
だが……子沢山を夢見るカズマの為にも、沢山の子を産みたいのだ。
フウ……と溜息をつき、もう2杯飲むと我は風呂場を後にした。
そしてその夜はハッスルした訳だが、翌朝、もう一度お風呂に入り体を清めて温め、風呂から出て大きく背伸びをしてから身支度を済ませる。
昨夜から体がかなり火照っている気がしたが、きっとこの異世界での気温に慣れていないせいだろう。
朝ごはんを食べてから車に乗り込み、まずは、おるごーるなる物を見に行く。
大きな施設の中に今日行く二つは入っているらしく、車を停めてから中に入り、カズマと手を繋いで施設内を歩いていく。
そして【オルゴールの館】と書かれた趣きある店の中に入ると、木のいい香りがして……色々な箱や陶器、そして見た事も無いものまで並んでいた。
これが、オルゴールと言う奴だろうか?
カズマが小さな試供品と書かれたオルゴールを指さし、精密に出きた中身に驚きながらもネジを回して貰い、奏でる音に驚く。
「ほおおおおお……」
「色んな音楽があるんだ。これなんかどう?」
そう言って聞いた二つの音楽は、一つは何となく物寂し気で、もう一つはこれから次第に未来を明るくさせる音楽だった。
物悲しいより、これから明るくなる未来が欲しい。
そう我は思い「こちらの音楽の方が好きだ」と告げると、オルゴールを探すことにした。
そして、重厚な箱で出来たその音楽のオルゴールの音色に気に入り、カズマがプレゼントしてくれることになった。
「頑丈そうだし、これならマリリンがネジを回しても早々壊れないかな?」
「だといいんだが」
「あとはマリリンが選ばなかった奴で、王様に渡す奴と、ミセス・マッチョスに渡すのを買おう」
こうして王様には陶器で出来た素晴らしい出来のオルゴールを。
『ミセス・マッチョス』の3人には同じ音楽と見た目のを3つ選んで購入した。
「ニコニコ現金払いで」とかカズマは言っていたが、店員は驚きつつ札束を数えていて、この程度で驚くとは……と我は驚いた。
我が選んだのがたかだか50万のもの。
陛下には100万、ミセス・マッチョス達は各自30万の贈り物だった。
持って帰ると告げると重厚な程に手厚く包装されていたが、店を出て直ぐアイテムボックスに入れ込んだ。
次に世界のビールが飲めるという場所に向かい、そこでハンドルキーパーなるモノを頼んでからカズマもお酒を楽しんだ。
昨日の夜から火照っている体が更に火照りそうだった。
「このドイツビールはうまいな。ガツンと来る重さがたまらん」
「いいですよねぇ。僕はベルギーも割と好きです」
「軽めなビールだな。我はドイツの方が好きだ。この太めのソーセージにも合うしな」
「僕はナッツと食べるのも好きだよ」
そう語り合いつつ食べては飲んで、久しぶりに二人だけの時間を過ごした。
何時も屋敷やギルドにいると、何かしら仕事だなんだと我やカズマに人が群がるが、この世界では二人だけで、それが幸せで、何よりも贅沢で。
「子が出来たら……また行くところが変わるんだろうか」
「そうだね……。子供を連れてあちこち行けるようになるのはまだ先だろうけど、行く場所は大人が行く場所じゃなくて、子供が楽しめる場所が基準になるだろうね」
「ふふっ そうか」
「きっとマリリンは、最高に良い母親になれるよ」
本気でそう思っているのだろう。
我の頭を撫でつつそう語った愛しの夫に、我は照れ笑いをしながら自分の腹を撫でた。
嗚呼、この中に命が宿っていれば……。
「マリリン、何時か必ず来てくれると信じて、二人で待とう」
「カズマ」
「大丈夫、不安そうな顔をしないで……」
その言葉に我は頷き、ドイツビールを巨大ジョッキで飲み干したのであった。
そして夜は無性に肉が食べたくて肉のバーベキューを食べつくし、その日の夜もハッスルし、翌日は――見た事も無いホテルに泊まり、驚きを隠せないまま呆然としつつも、一夜を共に過ごし、翌日カズマの実家に帰ると火照りは収まっていて……。
「なんだか不思議な感じだ」
「マリリンどうしたの?」
「いや、なんでもない。気のせいだろう」
「よし、じゃあ僕たちも帰ろうか」
「ああ、あちらの世界に」
――こうして、様々なお土産を持って義理の両親に別れを告げ、鏡を通ってあちらの世界へと戻っていったのである。
すると……。
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