第43話 一夫多妻と、一夫一妻
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マリリンは、自分のポケットマネーで元イザベラ王女が使っていた屋敷を購入した。
内装はギラギラしていたので全面改装だ。
要らない装飾品などは売り払い、落ち着きある内装にする為に一か月は要したが、夫婦の寝室と風呂場も広くして貰い、メイドもそれなりの数雇った。
元の趣味の悪い屋敷がウソのように変わって、僕としてもホッとしている。
「魔が差してはいけない」と宝石類やあちらで買った服はマリリンのアイテムボックスに入ったままだが、大きな屋敷なだけあって庭も広く、これなら子供たちも大勢走り回れそうだ。
マリリンに似た筋肉で濃い顔の子供たち……うん、考えるのはよそう。
いや、どんな姿であっても可愛い我が子には違いないだろうし……そうさ、受け入れられる。
思わず虚無りそうな気持になったが、マリリンとの子供を想像すると、遺伝子的にマリリンの方が強く出そうで、僕の遺伝子は消し去られそうな気がする。
頑張ってくれ、僕の遺伝子。
「カズマ! ここにいたのか!」
「マリリン!」
「これだけ庭が広いと、いくらでも鍛錬が出来そうだ! 朝の鍛錬は日課だからな!」
「そうだね、片腕ずつ二刀流の武器を持って修行している姿は、まるでダンスをしているかのようで素敵だよ」
「ンン!! ダンスではないぞ!!」
「想像すると楽しいよ。色んな意味で!」
飛び散るマリリンの清らかなる汗、情熱的な高速ステップで地面は抉れ、戦う相手は古代龍……。片手ずつに両手剣か両手斧を手に舞い散る古代龍の血……。
おっと、眩暈が。
「カズマ!!」
「余りにも素敵すぎて……」
「おおおっ!! そこまで我の事を素敵だと思ってくれているのか!! 我とてカズマがどれだけ素敵か知っているぞ!!」
「マリリンッ」
マリリンの僕への過大評価が恐ろしいけど!!
と思った途端鼻血が顔面に飛んできて僕はマリリンが一体何を考えたのか分からなかった……。いや、興奮したんだろう。興奮したんだろうが鼻血で前が見えない。
取り敢えず噴水で顔を洗いマリリンの鼻血で汚れた服は洗浄魔法を後でかけて貰う事にした。
「全く、一体何を考えたんだい?」
「ンン!! ついつい色々考えて思わず鼻血が出てしまったな!!」
「あんなに純粋なマリリンだったのに……」
「我は今でも十分純粋だぞ!」
「だからこそ、愛し甲斐があるんだけどね?」
「ウホッ!!」
照れるマリリン。相変わらず世紀末覇者の見た目で色々乙女には見えないけれど、可愛い。
僕はすっかりこのアンバラスさにどっぷりハマっている。
この沼は深い……。そして業も深い。
「きゃあああ!! 旦那様が血塗れに!!」
「大丈夫ですか旦那様!!」
「ああ、マリリンの愛の血しぶきを受けただけだよ」
「嗚呼っ! 良かったです……」
「奥様の愛の血しぶきを浴びせられただけなら安心ですわ」
「洗浄致しますのでお着替えを」
「うん。マリリンはどうする?」
「滾るこの萌を鍛錬で振り払っていこうかと思う!!」
「頑張ってね」
僕に萌えたんだ……可愛いな。
マリリンの愛は疑いようがないほどに僕に向かってくれている。
それが何よりも嬉しい。
きっと浮気なんて言う心配もないだろう。
僕も命が欲しいので浮気をすると言う事だけは絶対にしないけれど。
そんな事を考えながら着替えを済ませ、血塗られし服をメイドに手渡し軽くシャワーを浴びる。
マリリンの血が流れていく……嗚呼マリリン……僕は結構狂ってるかも知れない。
そんな事を思いつつシャワーから出て着替えを済ませると、洗浄魔法で僕の服は綺麗に血が落ちていた。
「無事マリリン様の血を落とす事が出来ました」
「ありがとう」
「旦那様は奥様のどこが好きになって結婚なさったんです?」
「こら!!」
と、若いメイドが聞いて来たので、僕は頗る笑顔で答えた。
「だって可愛いだろう?」
「え?」
「僕は頭スッカラカンの見た目だけいい女性って嫌いなんだ。その点マリリンは頭も良いし礼儀作法もしっかりしている。その上可愛いんだ」
「か、可愛いですか?」
「とっても、とってもね?」
――だから君に靡く気はサラサラないよ。
そういう意味を込めてニッコリ笑うと、若いメイドは顔を引き攣らせながら「そうですか」と笑っていた。
きっと趣味の悪い男だと思われているんだろうが、僕はそれでいい。それがいい。
妻を浮気とかで傷つける男にだけは絶対ならない。
僕は妻に一途であれ。
「奥様と旦那様の仲の良さはこの国以外でも有名ですからね」
「そうだね、義兄のジャックさんやマイケルさんのお陰であちらこちらで有名で嬉しいよ。僕の妻はマリリンがいい、マリリンがいいんだ」
「「「まぁ……」」」
そう惚気ると年配のメイドさんたちは頬を赤くし、先ほどの若いメイドはどこか白けた顔をしていたが気にしないし、ウソだって言っていない。
僕の妻はマリリンがいい。あんなにも色んな意味でドキドキさせてくれるのは彼女しか考えられない。
恋のようなドキドキも、命の危険を感じるドキドキも、命を狩られそうになる瞬間のドキドキもマリリンだからこそ得られる快感だ。
他の誰にも奪わせはしない。
「それに、僕のいた国では浮気は重罪。第二婦人を持つことも重罪なんだ」
「そうなんですか!?」
「一夫一妻制っていってね。死ぬまで永遠の愛を誓いあうのは一人と決められているし、それが当たり前だと幼い頃から徹底して教え込まれる。だから妻にすると決めたなら、死ぬまで愛し通すと覚悟を決めた証でもあるんだよ」
そうメイドたちに告げると心底驚いた顔をされ、「それでご主人様は奥様にぞっこんなんですね!!」と納得された。
こういう時、『僕のいた国では』と言うのはとても便利だ。
「では、その重罪を犯した場合はどうなるんです?」
「まず家族を失うのは無論の事、仕事を失い、血の繋がった家族からは針の筵にされるね。友人たちも去っていくのが普通で、とてもじゃないけどリスクが高すぎる」
「そこまで徹底されているんですね……」
「一夫多妻が認められている我が国では考えられません……」
「僕は幼い頃から一夫一妻制を重んじてきたから、一夫多妻の方が奇妙な感じだよ」
「「「なるほど……」」」
「愛する人は一人でいい……。一途に愛し通してこそが、本当の愛だと思うし、僕がマリリンに出来る最も尊い贈り物だよ」
微笑んでそう告げると、女性陣達は「一夫一婦制……素晴らしいですわね」と感心していたが、若いメイドたちにはいまいちピンとこないみたいだ。
若い故に……と言うのもあるだろうが、僕はマリリン以外の女性は要らないという意思表示は出来たので良しとしよう。
そんなある日、僕は城にて仕事をしているとダリュシアーン様より相談事を受ける事となる。それは――。
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