第40話 我々の【推し活動】は留まる所を知らない!(下)
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――ミセス・マッチョスside――
【ミセス・マッチョス】の面々はブラックドラゴン20匹の退治から報酬を貰い、その足で不眠不休、萌えを書き続けた。
その結果――寝不足である。当たり前だがアタシ達は眠い。
移動場は馬車を今回は借りた。
馬車の中で寝る為である。
無論爆睡であった。
響くいびきで馬が怯えようとも、響くいびきで魔物たちが逃げようとも、我々には【推し活】と言う極めて重要度の高い至福が待っている。
これを逃すなどありえないのだ。
馬車の中で爆睡したおかげで頭はスッキリだ!
身体はボロボロだが!
だがその為の温泉である! 体をシッカリ癒そう。
到着した温泉宿には既にカズマリが到着しているらしい。
部屋にはベッドしか置いてないらしいが、それで十分だった。
何故ならアタシ達の狙いは【カズマリ】と言う推しを堪能する事なんだから!
すると――。
「女湯と男湯と別々に離れにあって良かったですね。やはり女性の皆さんは覗き等に気を遣うでしょうし」
「混浴もあるぞ! 二人で入ろう!!」
「刺激的ですね!」
なんて言葉が聞こえてくる。
アタシ達はザッザッザッザと競歩で歩き「マリリン!」と声を掛けた。
そこには――ラフな格好のマリリンと、ラフな格好をした細マッチョだがベビーフェイスの青年が立っていた!
「お姉さま方! 久しぶりだな!!」
「結婚おめでとうマリリン!」
「結婚祝いがしたくて、急いできてしまった!」
「隣の方が旦那様のカズマ様か!」
そう余裕があるように見せて実は余裕がない。
鼻息荒く二人を見つめる――そう、【カズマリ】と言う推しを見つめる。
三人網膜に焼き付け中だ!!
「初めまして、マリリンの夫でカズマと申します。以後お見知りおきを」
マリリン同様に以後お見知りおきになりたい!!
寧ろ【カズマリ】をもっと摂取できるようにしたい!!
アタシ達の頭は今、まさに、ハピネス状態だったが――何とか理性で繋ぎ止めている。
「カズマ殿、以後お見知りおきを」
「アタシ達はマリリンの先輩にあたるSランク冒険者、【ミセス・マッチョス】と言うチームで活動している」
「一応ホームはキンムーギラ王国だ」
「ああ、友好国の」
流石ムギーラ王国の相談役、キンムーギラ王国についても色々知っていそうだ。
「しかし、お姉さま方まだベッドしか用意できていないのに」
「マリリンの結婚祝いをしたくてな」
「安心しろ、我々はカズマ殿の第二婦人にして欲しいなどとバカげたことは言わない」
「「「我々は、【カズマリ】なのだから!」」」
この言葉にカズマは理解し、マリリンは理解出来なかったようだ。
カズマはマリリンに分かりやすく【カズマリ】の事を説明し、マリリンはボッと顔を赤くすると「そう言う……」と口にしてアタシ達を見た。
「そう、アタシ達はカズマ殿とマリリン二人がいてこそ」
「萌えるのだ」
「尊いとさえ思える萌えなのだ」
「お姉さま方っ!」
「「「そんな我々からの結婚祝いだ」」」
そう言うとずっしりと重い、想いを込めた羊皮紙を取り出し、束にしたものをマリリンに手渡した。
タイトルを読んでマリリンは顔を真っ赤に染めていたが、カズマもタイトルを見て「これは、これは……」と呟いている。
「アタシ達三人の元には、二人の情報は中々入ってこない」
「そこで、妄想を掻き立てられて作ったのがその小説だ」
「せめて二次創作を楽しむくらいは許して欲しい!」
切実である。
キンムーギラ王国ではカズマとマリリンの話題は中々入ってこない。
金を出して仕入れて貰うしか他ない事も告げると、マリリンは顔を上げて「うーむ」と口にする。
「しかし、二次創作を誰もが書けるようになると、我とカズマの事を面白おかしく書く輩も出てきそうだな」
「それもそうですね。ならばこうしましょう。この二次創作を僕たちが公式で認めているのは、【ミセス・マッチョス】の三人のみであると」
「アタシ達三人が」
「二人の」
「公式!!」
「二次創作のですがね?」
この世のモノとは思えぬ誉!!
それは正に、我々だけが【カズマリ】活動をしていいというお許しが出たという事!
アタシ達三人は興奮で顔面をぶっとい両手で隠して咽び泣いた。
最早声にならぬ喜びであった!!
「いっそ、いっそ拠点をムギーラ王国に移すか……」
「それは最高だな! ナナルシカ!」
「名案だわ!! でもキンムーギラ王国が許すかしら?」
「うーむ。だが我々は【カズマリ】情報を早く欲しい」
「「それな!!」」
「それなら、我が兄ジャックが我とカズマの一日の報告書と言う名の日記をつけている。【ミセス・マッチョス】にも同じものを一枚贈るように頼むことは可能だ」
「「「おおおおおおおおおおお!!!」」」
その言葉に【ミセス・マッチョス】である我々は名案だと喜び勇んだ!
毎日近くにいるマリリンの兄ジャックからみた【カズマリ】報告を聞けるというのならば、【カズマリ】不足は軽減しそうだ!
「是非にお願いしたい!!」
「分かった! 国に帰り次第伝えておこう!」
「これで本当の意味で【公式カズマリ】の【ミセス・マッチョス】ですね。所謂僕とマリリンの『ファンクラブ』と言う奴でしょうか?」
「「「「ふぁんくらぶ?」」」」
聞きなれない言葉にカズマ殿が説明をしてくださると、理解出来た。
つまり我々は二人のファンクラブ第一号なのだ。
大零号がいるとしたらジャックとマイケルだろうが、そこは致し方ない。
「実に素晴らしい。公式からお許しが出たのだから、これからは【カズマリ】の二次創作も頑張らねばな!!」
「印刷会社を買うか」
「本屋も買収しないとな」
「いやいや、権利を買うだけで、彼らには新たなる【カズマリ】信者を増やして貰おう」
「「なるほど!!」」
こうしてアタシ達は外で盛り上がった上で、やっと落ち着き、「各部屋にはベッドだけは置いてありますから」とカズマに苦笑いされ、ようやくチェックインしたのだった。
そして綺麗な信じられないベッドに驚きつつ、アタシ達は女湯へと向かう。
「混浴は【カズマリ】だけの世界だ。我々は大人しく女湯で身体を清め、ゆっくりと疲れを取るとするか」
「ああ、網膜にあの二人を焼き付ける事が出来た……しかも公式として認めて貰えた。何にも勝る喜び、誉だな」
「嗚呼……推しが並び合い、幸せをまき散らす姿……実に良い」
「「「尊い、尊し……」」」
身体を洗いながらそんな会話を口にし、驚く程汚れが落ちた後ゆっくり温泉に浸かり――三人「「「あ゛~~……いぎがえる~~」」」と、ヒキガエルのような声を出したのは……誰も聞いていなくて良かった。
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