第27話 マギラーニ宰相の思惑と、カズマを狙う女と
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――マギラーニ宰相と???side――
泣き叫ぶアスランを引きずり、何とか徒歩で屋敷に戻ったマギラーニ私は、出迎えた執事に驚かれながらも妻を呼び、一連の内容を説明した。
「マリリンは本気で私とアスランを殺そうとした……。絶対に、これから先何があろうとも、カズマをマリリンから奪おう等と考えてはならない。権力を使うなら力を使う。それが今のマリリンだ」
「何てこと……っ」
「マルシェリティの話もアスランがしてしまった……。直ぐにマルシェリティを呼び、養女の話と第二夫人の話は無かった事にしなくては、彼女すら危ない!」
チリチリになった髪と髭、そして未だ文句を言いながら泣き叫ぶアスランをそのままに指示を出すと、マギラーニはアスランを自室に放り投げた。
「アスラン! 全てはお前のしでかした責任だ! もっと穏便に行けば命だけは助かったかも知れんがな!!」
「どういう事なのお父さん!!」
「貴様の今後を話し合う必要がある……それまで部屋から出るな! 一歩たりともな!」
本気で怒っている父を見たのが初めてのアスランは涙すら引っ込み驚いているが、アスランのしたことは自殺行為であり、また宰相クラスの家が冒険者の力で潰される可能性を生み出してしまった。
それは――とても恐ろしい事だ。
更に言えば、マリリンがリーダーであるレディー・マッスルと対峙する事は、ムギーラ国王の相談役、カズマの怒りを買う事にも繋がる。
何故そこまで自分ですら考えが及ばなかったのか……悔やんでも悔やみきれない。
――それから三時間後。
マルシェリティと彼女の父が訪れ、変わり果てたマギラーニを見て驚愕し、事の次第を説明した。
ショックを受けたマルシェリティは、そのまま倒れそうになったが何とか堪え、フルフルと震えている。
「すまないマルシェリティ……。カズマ殿はマリリンに一途で他の妻を持つ気はないと民衆の前でも宣言していた。これ以上此方が動けば、我が家だけではなくそちらの家も恐らくは……」
「あのマリリンに屋敷ごと吹き飛ばされる可能性がありますな……」
「ええ、事実。血の繋がりすら煩わしいと激怒されてこの有様です」
「あぁ……マリリン……貴女は昔あんなにも優しかったのに……」
「マルシェリティ……」
◆◆◆
ハラハラと涙を零し、当時のマリリンを良く言う彼女だったが、一族が知らないだけでジャックとマリリンは、この私の本性を良く知っていた。
儚い印象の私は、幼い頃は毎回マリリンの事を陰では「あのような見た目に生まれて可哀そうに」と言いながらマリリンの価値を落としまくっていたのだ。
更に、マリリンの性格すら捏造し、如何に乱暴で恐ろしい野獣かを周囲に語っていたのである。
そして、屋敷から追い出され冒険者になったと聞いたときは腹を抱えて笑い、何時死ぬか友人たちと賭けを楽しんでいたのだ。
そのマリリンが、恐ろしい程の財産を手にした美青年と結婚したと言う話を聞いた時には、家族の前で発狂したのである。
暫くの間情緒不安定ではあったものの、一度だけ王室の夜会でカズマを見てからは、是が火でもマリリンから奪い取ろうと必死になった。
――しかし、単独で行動しても上手くはいかず、そんな時にマギラーニからカズマの第二夫人にならないかと打診が来たのだ。
どれ程喜んだことか分からない。
だが――それさえも潰えようとしている。
「お父様、叔父様……わたくしとマリリンなら同時にカズマ様を愛することはきっと可能です! だって昔はあんないマリリンと仲が良かったのだもの!」
「マルシェリティ……」
「しかし、カズマはマリリンだけで良いと、私にも断言してきたのだ……難しいだろう」
「きっと、わたくしの事をカズマ様が知って頂けたら、直ぐに第二夫人になれますわ! お願いです……次の王家主催の夜会までお待ちください。その時に必ず……必ず!」
必死に縋る私に、二人は暫く考え込んだものの、「確かに美しい心根を持つ私ならば、カズマは惚れるかもしれない」と口にし二人は了承した。
しかし――。
「だが、マルシェリティが幾ら言ってもダメだった場合は諦めるんだ。いいね?」
「国に関わる事なんだ」
「わかりましたわ」
――国なんぞ知った事じゃねぇ。
それが、私の判断であった。
要は、マリリンが悔しがる顔を見れた上で、最高の財力を持つ美青年を奪い取れば勝ちなのだ。こんなドキドキする賭けにもならない出来レース、楽しむしかない。
自分の見た目に落ちなかった男は今まで一人もいなかったことも災いし、私は声を上げて笑いたくて仕方なかった。
(マリリンは、どれだけ惨めにカズマ様に追いすがろうとするかしら……楽しみだわ)
優しい笑顔と言う仮面をつけ、私は今後の打ち合わせをする父親と叔父を見つめ笑った。
◆◆◆◆◆
「と、言うのがマルシェリティと言う女だ。全く気に入らない!!!」
ドン!!
とオリハルコンで出来た机を叩いたマリリンに、僕は風圧で頬が歪んだ。
どうやら、話題に出たマルシェリティと言う女性は裏で暗躍する系の儚げそうな美女、と言う事は分かったが、表と裏の顔を持つ女性は全くと言っていい程好みではない。
女性には裏の顔と表の顔があるとはよく聞くが、表も裏も優しさがあればいい。
だが、表では良い子ぶって、裏では人を攻撃するような小物は、正直見るに堪えないブスだと言っても過言ではないだろう。
その点、マリリンは裏表がハッキリしていて両方清々しい。
位の高い相手には礼儀を持って接するし、だからと言って負けはしない。
言うだけ無駄な相手にはそもそも殆ど反応しないのがマリリンだ。
故に、周りの一言で言えば両面ブスは、好き放題のさばっているのだろう。
そう言う奴を妻や恋人にした男は見る目がないなと僕は可哀そうにと合掌した。
「話を聞く限り、表の顔と裏の顔が合わさってブサイクな女性は僕のタイプでもないし、最も嫌いなタイプだから安心して良いよマリリン」
「カズマ……」
「それに、見た目も性格も好みの女性は目の前にいるじゃないか。そのマルシェリティと言うのはマリリン程に美しい女性だと言えるのかい? 言えないだろう」
「カ……カズマッ」
「実際会ってみれば仮面なんてすぐに剥がれ落ちるよ。僕のスキルを知っているだろう?」
そう、悪意察知と言うスキルを以てすれば、マリリンに向けられる悪意の言葉だって解ってしまうのだ。
大事な妻に悪意を向けられて大人しくしているような僕ではない。
「マルシェリティが何かをしでかすなら僕も動く。だって、大事な妻を傷つけようとするのなら、100倍にしてだって返すよ?」
「もう……カズマったら」
照れる世紀末覇者。実に可愛い妻である。
「それよりも、夜会が終わったら一緒に指輪を作りに行かないかい?」
「指輪?」
「ああ、僕のいた世界では結婚したら薬指に結婚指輪をするのが習わしなんだ。永遠の愛を誓う為にね」
「永遠の……アイ――!!!」
「二人で選ぼうねマリリン!」
「愛してるカズマ――!!!!」
こうして、不機嫌だったマリリンも落ち着きを取り戻し、数日後に迫った夜会に向けて戦いの準備を万全にするのだった。
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