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魔法使いの作り方  作者: ゆねのいち
落ちこぼれ研究者の仕事
8/17

狂人の提案

「君、魔女なんだよね?」


「え・・・」



なんでバレてるんだろう。魔法もここに来てから一度も使ってない。パパ以外知らないはず。



「・・・ビックリした?」



このとき、驚きのあまり私からは声が出なかった。


この人は一体何が目的なの?



「ハッタリのつもりだったけど、君の反応見た感じ大当たりみたいだね。」


「え・・・?」


バレてなかった。今わかっても既に手遅れ。


「ペトロス様、君がこの屋敷に来て一週間後ぐらいに行方がわからなくなってる。そして魔女が自首したっていう号外が配られてたのが翌日だったかな。」


不気味な程、彼の爽やかな笑顔は変わらない。


「偶然にしては日付が近すぎると思ってね、屋敷の寮に住んでない使用人や警備員から色々聞いていたんだ。」


私は震えながらもフランクに精一杯の声を出す。


「わ、私をどうするんですか!?」


フランクは表情を変えない。


「今のところ、この事は僕と君だけの秘密にしてる。僕の言う事を聞いてくれればこの家にいられるように協力してあげる。」


ママの悪評は既に全世界に広まっている。この時点で処刑されていたこと、そして黒霧病の報告が世界中から無くなったことを私も知っていた。


そして、世間はママのような人智を超えた力を持った人物が再び現れないように血縁者を探している。


私が見つかったら良くないことが起きるのは明らか。バレてしまった以上、ここは彼に従うしかない。


「・・・何をすればいいですか?」


「ここでは話せないな。仕事終わったら僕の部屋に来てよ。」


すると後ろの方から聞き慣れた声が聞こえてきた。


「エルゼちゃん、おまたせ・・・って何してるんですか!」


ソフィアが鬼の形相でフランクに迫りくる。


「エルゼちゃんに手出すなんて絶対ダメですよ!顔も生まれも良いんですから自分でナンパして変態女でも探して来てください!!」


「何も都合の悪いことはしてないよ。都合の悪いことは。」


フランクの答えにソフィアが怪訝な顔になる。


「何か含みのある言い方ですね。エルゼちゃん、ホントに何もされてない?」


何をされたかなんて言えるわけがない。


「いえ、何も・・・」


「ふーん。ならいいけど、何かあったら私に言ってね。女関係はホントにろくでなしだから。」


仕事が終わりの夜、私はそのろくでなしことフランクの部屋に行った。


彼の部屋は机と本棚、ベッドがある何も変哲もない普通の部屋。


私が来た時、彼は机の前に座っていた。彼は私を見ると、私の方を向いて椅子に座り直した。


「よく来てくれたね。今は君一人かい?」


「はい、今はソフィアさんも誰も来てません。」


今、部屋にいるのは2人だけ。この部屋で何かあっても、明日の朝まで誰かが来ることはおそらく無い。


「じゃあ、この家に来るまでの事情を聞かせて。」


私は正直に彼の質問に答える。


「・・・ここに来たのは母親が黒霧病の件で自首したから。巻き込まれないように父親が信者のブラウンさんの所に逃したの。私も母親みたいになんでも消せる能力があるから。」


なんでも消せる能力のことを言ったのに、彼の態度は変わらない。


「なるほど。ということは、この家で働いてないと住居も仕事も無くなるんだね。」


「・・・そうですね。」


彼は私を追い出したいのだろうか。だとしたら警察に突き出せばいいだけなので、かなり回りくどいやり方をしている。


「大体そうだろうなと思って、君が家にいられるように自分なりに方法を考えてみたんだ。」


フランクは椅子から立ち上がり、私の前に来た。しかし、視線は少し左を向いている。目を合わせないようにしているのか、そのまま話し出す。



「・・・僕の妻にならない?」



「・・・へ?」



何言ってるのこの人。ママの二の舞いになりたくないから使わないだけで人消せるんだよ?まともな人間なら触りたくも無いと思うんだけど。


「正直、性格とか容姿とかめっちゃ好みなんだよね。僕も結婚できるし、エルゼもこの家に居られて一石二鳥だと思うんだ・・・どうかな。」


「い、いや、結婚したらしたで戸籍とか色々探られてバレるんじゃないかなぁ?」


すると突然、フランクは私に視線を合わせた。


「じゃあバレなければ結婚しても良いのかい?」


「あ、あの・・・」


フランクはやけに興奮している。ソフィアが言ってた顔が良くて優しそうな男は何処に行ったのだろうか。


「大丈夫!君を店で買ったって言えば戸籍見られずに済むよ。」


「み、店でってどういう事?」


「この国にあった奴隷制度は時代遅れとか色々言われたから政府が無くした。だけど失業者や元奴隷の人を助ける制度も無い。結局その人達は奴隷のようなものになって、それを売る商売が流行ってるんだ。」


「えー・・・つまり、そこで私が買われたことにすれば戸籍とかお咎めなしってこと?」


「そうそう!ソフィアも元々、社長さんの娘だったんだけど、会社が倒産して家族全員売られてたから

僕の父親が買ったんだ。ソフィアの母親はキッチン、父親は僕の親の会社で働いてるよ。」


この国、一旦奴隷として売られれば移民入り放題で私が来るのにもうってつけだったのか。国としては破綻寸前で先は長くなさそう。


「というわけで僕が色々手続きしとくから、これからよろしくね。」


「う、うん。」


勢いに流され、結婚するまで押されてしまった。


あとから知ったことだが、奴隷的なものになると本人は福祉サービスを受けられなくなるらしい。なお、生活保護等は元からない。


年をとって働けなくなったら、適当なお店に刃物を持って入って捕まり、刑務所でできる仕事をして余生を過ごすのが一般的らしい。


もちろん、国民からは不満だらけで首都では国軍と反政府軍との内戦が続いて行政どころではない。内戦の原因はどう考えても行政だけど。


手続きは身内に隠して行い、私とフランクは手続きが完了した数日後に結婚したことを報告した。


聞いていた皆、ひどく驚嘆していた。


「え、エルゼちゃん、そういう趣味なの・・・?」


違うのソフィア。言えない事情があるの。


「エルゼ、気持ちは有り難いが相手は考えた方がいい。親として言うのも難だが、そのバカ息子はその代表例だぞ・・・」


この男がヤバいのは知ってるけど、親から言われるって相当ね。


「ひどいなあ。お互いのこと理解し合った上で結婚したのに。」


合ってるような、間違ってるような。隠す方法考えてくれて助かったけど、彼の問題は言わずもがな中身なの・・・。

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