謎の刻印入り指輪
「ユリさんはさっき言った『開発者』だよ。『開発者』と私達の『仲間』について、今からもう少し詳しく話そう。」
ハルカは俺と所長、ビルさんに説明を始めた。
「ユリさんは私達を作った人。ここで疑問になるのは恐らく、ユリさんや私達が何年生きてるのかってことじゃないかな。」
俺達は相槌を打ち、ハルカは話を続ける。
「実は私、生き残りだって言うのは厳密には嘘なんだ。」
「えっ嘘?」
所長は意表を突かれたかのように驚いた。多分テネセスで聞いてた話とは違ったのだろう。
「うん、実はユリさんの開発した技術で、見た目が全く同じ別の体に記憶だけ差し替えられている。中身は戦時中の人と一緒だけど、外側は新しく作り直されたんだ。」
つまり、体はいつか老衰するが体を入れ替えれば実質無限に生きられるということか。
脳の記憶だけを移し替えるなんて、にわかには信じられないが一体、『ユリ』とは何者なんだ。
「私達やユリさんはこの技術を使ってこの世にいる。脅威に立ち向かえるのは現状、私達だけだから。」
一通り説明を終えて、ハルカの話題はエルゼに移る。
「エルゼ、奴らはあなたを狙ってる。今日中には来るかもしれない。」
「「「えっ今日中!?」」」
時間が惜しいとは言っていたが、ここまで緊急だったのか。俺だけでなく、エルゼも所長も揃って知らない様子なので本当に突然の知らせのようだ。
「は、ハルカさん、今日来るんですか?」
「可能性は高い。何ならもう近くに来てるかも。」
バンッッ!!
突然、どこからか大きな物音が聞こえてきた。何か金属製の物が落ちてきたような音だ。
「多分来た。ユリさん曰く、ここにいるのは私の模造品。」
ハルカは部屋の窓を開けて外に出ようとしているので、ビルさんが引き止める。
「おい、脱走する気か?さすがにそれは許容できねえぞ。」
しかしビルさんは振り払われ、ハルカの足は止まらない。
「お、おい、どこ行くんだ!」
「建物から絶対に出ないで。もし危なくなったら、さっき預けた『指輪』をエルゼの左手薬指にはめて。」
ビルさんの声掛けも顧みず、捨て台詞を残してハルカは空に飛んでいった。多分引力操作の能力を使ったのだろう。
「所長!逃げちまったぞアイツ!!」
ハルカを連れてきた挙げ句野放しになり、所長の行動が理解できないビルさんは苛立ちを隠せずにいる。
しかし所長は全く気にせず、真っ先にハルカから回収した物品を探りにいった。
「指輪ってもしかして・・・」
所長に付いて行き、見つけたのは銀色の指輪。よく見てみると刻印が刻まれている。
「エルゼ・・・フランク。まさかこれ婚約指輪ですか?」
婚約指輪だとすればエルゼはフランクという人物と結婚していることになる。
「ええ?流石に知らないよ、結婚してない。」
エルゼのこの反応からして結婚指輪ではないのだろう。危なくなったら左手薬指にはめろとハルカは言っていたので、恐らく何か仕掛けがあるに違いない。
「とりあえず、状況がわかるまではこの指輪に手をつけるのはやめましょう。」
「そうだなユウト。アイツが何を企んでるのか全くわからん。あくまでも最後の手段にしよう。」
今は指輪には触れず、ハルカが戻ってくるまで待ってみることにした。
しかし・・・
「戻ってこねえぞアイツ。」
20分経ってもハルカが戻ってこない。
「俺は探しに行ってくる。やっぱり信用できねえ。」
ビルさんがちょうど窓から身を乗り出そうとした瞬間だった。
確かに今、体が浮き上がった。おそらくハルカの能力だ。
「俺はこんなことで怯まねえぞ。すぐに連れ戻してやる。」
ビルさんは体が浮いた勢いで部屋に戻された。しかしビルさんはもう一度窓から身を乗り出そうとした瞬間、今度はどこからか声が聞こえた。
「ダメだ、外に出るな!!」




