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魔法使いの作り方  作者: ゆねのいち
落ちこぼれ研究者の仕事
3/17

少女来訪

急用から帰ってきた所長は何を考えているのか、ヤハレルのクローン、「ハルカ」を研究所に招き入れた。


「ほ、本物なのか、これは?」


ビルさんが問うと、ハルカは答える。


「うん、本物だよ。能力を見せて証明したいところだけど、いつも使ってる道具がなくて不安定なんだ。」


「道具って、もしや鉄パイプみたいなやつか?」


「みたいな、じゃなくて鉄パイプそのものだよ。私はまだ信用されてないと思うから、この研究所に預かってもらってる。とにかく私を信用してくれたマリー所長を裏切るようなことはしないよ。」


外見は小学生だが、受け答えはかなりしっかりしている。


ハルカの鉄パイプについて戦時中、ハルカのことは「金属パイプを振り回す幼女」と記録されており、戦後100年経った辺りの戦争映画や漫画は、フィクションも含めて彼女モチーフの人物が高確率で出演していた。


それぐらい、道具を持った彼女のビジュアルは強烈だし、200年経った今でも知られている情報なのだ。


「そこまで言うなら信用するが、君がここに来た目的は何だ?」


ビルさんの質問が続く。


「私はエルゼと話がしたい。私自身を作った『開発者』いわく、エルゼを狙う『脅威』が迫っている。」


「聞き慣れない言葉が多すぎる。開発者と脅威について教えてくれ。」


この質問で初めてハルカが間をとった。言いたくないことがあるのだろうか。


「・・・詳しく説明すると混乱すると思う。簡単に言うと、開発者はヤハレルの研究者の一人。脅威は彼女の能力を使って世界を消滅させようとしてる。」


「彼女の能力でどうやって消滅させるんだ?不死身の能力だぞ。」


ハルカの話に少し粗が見えてきた気がする。ハルカはまた不自然な間をとる。


「・・・そっか、まだそこまでなのか。申し訳ないがこれ以上詳しくは話せない。いづれ伝えるべきタイミングで教える。どうか、エルゼと話をさせてくれないだろうか?」


本当に信用していいのだろうか。世界を消滅させる方法が余りにも曖昧過ぎる。


「うーむ、世界の消滅の話がよくわからん。もう少し信頼に値する根拠がほしい。」


ここで所長が口を挟む。


「鉄パイプ的な物と持ち物は全部回収しましたよ?」


ビルさんは所長に答える。


「いや、身体の内部とかは見たか?体内に爆弾とか脱獄用の道具とか入ってたりしないよな。」


「うーん・・・流石に爆弾とかは無いと思いますけど、テネセスの研究所でレントゲン撮って来ればよかったですね。」


話を聞いていたハルカは2人に話しかける。


「レントゲンが無くても、指でも入れて確認できないか?」


・・・何故服を脱ごうとしているんだ?


「開発者曰く、今は時間が惜しい。早く済ませられる方法を取りたい。」


どうやら相当急ぎの用事らしい。だが、そんなどこかの国の刑務官のようなことはできないので、服を脱ぎ始めた彼女を3人で慌てて止めに行く。


「わかった!今すぐ会いに行こう。エルゼちゃんは多分寝てるからすぐ会えるぞ!」


ビルさんが声をかけ、ハルカの服を着直させる。


「ありがとう。私は決してその信頼を裏切らないと誓うよ。」


こうして、コンプラ違反を回避した俺と所長、ビルさんはエルゼの眠る部屋に向かう。



「・・・ところで、エルゼは寝てるのか?」



ハルカが質問してきたので、俺は特に深く考えずに答えた。


「普段なら寝てるな。」


「今は昼の2時だぞ。何で寝てるんだ。」


「えー・・・深夜アニメでも見てたんじゃないか?」


「深夜アニメって、何時の?」


「深夜・・・1時半だったかな。」


何かハルカの様子がおかしい。突然ハルカの落ち着きがなくなったような気がしつつも、エルゼの部屋の前に到着した。


「ここがエルゼの部屋か?」


「そ、そうですが。」



カチャッ



ハルカは自分でドアを開け、その先の光景に思わず固まった。


「エルゼ、本当に寝てるのか。」


エルゼはいつも通りだ。ハルカは昔の同僚の姿を見てショックを受けているようだった。


「確か、あなたはユウトさんだったか。エルゼを叩き起こしてもいいか?」


「え?別にいいけど・・・。」


ハルカはエルゼの寝るベッドの横に立つ。そして毛布を掴み、思いっきり引っ剥がす。


「ん、さむ・・・」


寒さでエルゼが起きかけたその瞬間だった。



「エルゼ起きろおおおおおおおお!!」


「きゃあああああああああああああああああ!!」



二人の叫び声が研究所に鳴り響く。ハルカはエルゼの姿にお怒りのようだ。


「こんな時間まで寝てて良いと思ってるのか!?人として情けないにも程がある。もっと有意義な過ごし方はできんのか!」


めっちゃ言うなこの子。俺が休日に12時間寝てこんなこと言われたら泣くかもしれない。


「えっ、ハルカちゃん?もしかして夢?」


「違う。外見、中身まで私そのものだ。」


エルゼは驚きを隠せなかった。全人類が殺されたと思っていたハルカが目の前に現れたのだから、この反応も無理はない。


「『ユリさん』は殺されたって言ってたけど、間違いだったの?」


「間違ってないよ。私だけじゃなくて、『ユリさん』や『他の仲間』もこの世界にいる。」


今の会話の中に聞き捨てならない内容があった。これには所長やビルさんも同じ疑問を抱いたようで、ビルさんが彼女らの再会に口を挟む。


「ちょっと待て、仲間がいる?あとユリさんって誰だ?」


ハルカは200年ぶりの再会に水を差されても動じず、質問に答える。


「ユリさんはさっき言った『開発者』だよ。『開発者』と私達の『仲間』について、今からもう少し詳しく話そう。」


そのユリという人物はヤハレルの研究員、そして開発者であるなら、ヤハレルが消滅する200年以上前から生きていることになる。


ユリという人物が人間ならばこの話は破綻しているが、一体どういうことなのか。

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