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魔法使いの作り方  作者: ゆねのいち
本物の躍動
15/17

運命的失敗

「慌てるもなにも来てるんですよ、エルゼさんの偽物が!」


その時、偽物のケネスがいる方向が騒がしくなる。


本物のケネスは、大気圏突破させると言っておきながら未だに空に打ち上げないハルカに声をかけた。


「ハルカ何してるの?まだ用事でもあるのか?」


ハルカが鉄パイプを向けている偽物は微動だにしない。偽物は静かに話し始める。


「ハルカさん。残念ながら時間切れです。あなたの研究者はこの運命を予測できなかったようですね。」


ハルカは能力をつかっているようだが全く効果がない。


「・・・一体何をしたの?」


ハルカに偽物は答える。


「あなた方の研究者や私達の研究者は、物や概念に手を加えることはできても、エルゼさんのように物を完全に消滅させることはできませんでした。」


「ッ!?」


偽物は突きつけられたパイプを右手で掴み、自身の右側に引っ張りながらハルカに詰め寄る。


「ですが、与えることはできました。万物に魂を与える力により、私の周りの空気や地面、概念は私に味方しています。」


ケネスの偽物は子供の短い腕でも手を伸ばせばハルカに届く位置にまで近づく。


「そして目に入る光でさえ意志を持ち、貴女に敵対する。」


気がつくと、パイプを掴んでいるのが偽物のケネスから別人に入れ替わっていた。


「ハルカちゃん、こんにちは。みんなを救いに来たよ。」


「・・・!?」


その場に居た俺や他3人も、その外見に絶句した。


「ケネス君と私のそっくりさんと・・・ユウト君もいるね。」


「お、お前は・・・!」


ケネスが震えながら指さした先、皆の視線の先には本物とは相対的な白いエルゼがいた。


「驚かせちゃってごめんなさい。私は今追われてるから要件だけッ・・・!?」


ハルカがパイプを掴んでいた偽物の手を力づくで引き剥がした。


手の届かない位置で再度先端を向け、後ろで距離をとっている本物のエルゼに向かってハルカは叫んだ。


「エルゼ!私とケネスでなんとかする!ユウトさんと一緒に逃げろ!」


それを聞いた白いエルゼは大慌てで釈明しようとする。


「待って、違うの!私は今ユウトさんが電話してるユリさんは絶対に信じちゃ駄目だって伝えに来たの!」


偽物の伝えたい事はなんとユリについてだった。


というかなんで俺が隠れていることに気づいたんだ?まだ草むらから飛び出してないぞ。


この偽物の声はユリに繋いでいた電話を通っていた。


「あれが偽物のエルゼさんですか・・・妙な事言ってますね、私の知り合いかも。」


電話の向こう側のユリは非常に落ち着いて分析していた。これが科学者の鑑なのだろうか。


ハルカとケネスは偽物の言葉に困惑していた。


「うん?ユリさんが何か変なのか?」


「は、ハルカ?何かされる前にやっちゃおうよ・・・。」


攻撃されそうになり、偽物のエルゼはまた釈明する。


「待って待って!あのね、あのユリさんは一人目のユリさんを冤罪で投獄させた張本人のクローンなの!」


「は、はぁ?」


中途半端な情報のせいで二人はさらに困惑する中、ユリに動揺するような素振りは全く無い。


「ほー・・・わかりましたよ、敵の正体がなんとなく。」


ユリさんは何かわかったようだが、俺には全くわからないので彼女に聞いてみる。


「何なんですか、正体って。」


「昔作った私自身の不良品です。処分し損ねてどっか逃げちゃったと思ってたらこんな事してたんですね。」


偽物のエルゼは話を続けていた。


「あのユリさんは記憶を受け継いでるけど、脳の構造の問題で思想が全く違う不良品なの!」


彼女の様子からして、でまかせを言っているようには見えない。


「あの・・・ユリさん?」


俺が声をかけると、ユリは自信満々に話し始める。


「私の事と言えば、処理装置の情報を流出させてヤハレルの暴走を止めた影の英雄だと思うんですよ。医者に行くべき可笑しい人はどちらでしょうかねぇ。」


今のユリは俺と初対面の時の人を小馬鹿にした態度になっていた。


そしてハルカは本物のエルゼに指示する。


「エルゼ、早く偽物消して。これ以上話を聞く意味が無い。」


「えっ、あ・・・うん。」


偽物はエルゼによって消されそうになる。


「だ、駄目っ!」


偽物は叫んだ瞬間、一瞬で姿をくらました。


・・・いや、周りの景色が突如変わった。空は午後3時なのに赤い。


「な、なんか突然暑くなったし、しかも息苦しいような?」


ケネスの言っている事は恐らく気のせいではない。周りの物質・概念に魂が与えられ、俺達は魂に敵視されている。


そして偽物のエルゼの姿が見当たらない。


・・・よく見たら本物のエルゼもいない。


「エルゼ!どこにいるんだ!」


呼んでも返事はない。ついにやってしまった。


見える景色が変化したこの一瞬でエルゼは誘拐されたに違いない。


このまま見つからなければ世界は消えるのか、こんなあっさりと?


・・・クソっ、徐々に風景が歪んできた。どこを見てもマーブリングのようだ。


「df|kはlg*h☆y#っh・・・!」


「mい?gh$でsd○vh<k!」


2人の声が聞こえるが、人の言葉のようには聞こえない。きっと二人も同じ状況なのだろう。


もはや風景が戻るのを待つしかない。呼吸ができないほど息苦しい訳では無いし、自分の体も見えない状態で移動なんてできない。


エルゼを逃した責任は研究所・・・いや、外出させたのは俺だから俺の責任になるのか。


もらえる給料と責任が全く釣り合っていない。どこで間違えたんだろう、俺の人生。

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