敵との対話
俺とエルゼとクローンの2人は、ユリが予測した偽ケネスの出現場所に到着した。
今は敵の出現まで草原の中、背の高い植物に紛れて隠れている。
・・・どうして俺がこんな危険地帯に行かされているのだろうか。こんな業務が増えるなんて聞いてないぞ。
俺が死んでも悲しむ遺族はいないが、怪我して生きてた時には労災申請できるのだろうか。クローンの戦いに巻き込まれて怪我したなんて言えないぞ。
「ケネス、そろそろ時間だから常温をキープさせて。」
ハルカがケネスに指示を送る。
「わかった。温度の変わり方がおかしくなったら教えるよ。」
この二人も事情を知らなければ小学生の姉と弟のようにしか見えない。そして俺の隣には女子高生のような人妻(推定400歳)がいる。
知らない人が見れば俺達はどう見えるのだろうか。まるで4人家族・・・なんて気持ち悪い想像はやめておこう。妻は魔女だし、子供はクローンだし。
「急に気温が下がった、多分近くにいる!」
ケネスが叫ぶと、草原の景色に煙のようなものが立ち込み白くなる。更に煙の中から、段々と濃くなる人影が見える。
「もしかして・・・僕の偽物だけ?」
出てきたのは髪や服が緑色のケネス。本物はヤハレルの象徴である赤と黒で統一されている中、偽物の色は特に決まりはないらしい。
「エルゼ、準備して。私がコイツの動きを止める。」
ハルカが呼びかけ、作戦通り浮かせて身動きを取れなくする。
すると偽物のケネスはこちらに話しかけてきた。
「待って下さい!私を消す前に話を聞いて!」
どうやら攻撃の意志はないらしい。
「話?聞いてあげてももいいけど、妙な事したら上空に飛ばして生身で大気圏突破してもらうよ。」
ハルカは拘束を解除して、話を聞くことにした。
「信用して下さりありがとうございます。お話なんですが、単刀直入に言うと私たちは戦いたくありません。」
俺は身を隠しながら、本物と違って話し方が丁重な偽物のケネスの話を聞き続ける。
「クローンのお二人は、戦争がしたいですか?」
この質問にハルカは即答だった。
「必要なら戦争でもなんでもするだけ。やりたいとかは関係ない。」
「・・・私と同じ外見の方は?」
一方、ケネスが答えるまでには間があった。
「僕は・・・ハルカと同じ。」
偽物のケネスは2人の答えを聞いて話し出す。
「そうですか。ヤハレルという人類共通の敵が完全消滅し、結果的には200年の平和を築きました。それでもなお、争いが必要と申しますか・・・。」
「話はそれで終わり?終わったならエルゼに消されてね。」
ハルカは冷たく切り返す。
「・・・やはり、『異端』の作った生き物は救えません。ヤハレルが無くなった以上、世界ごと消してしまうのが得策です。」
偽物がそう言うと、どこからかジェット機のような轟音が聞こえてきた
「お、おい!何してるんだ!!」
ハルカが鉄パイプを偽物に突きつけて叫ぶ。
「あなた方はこの世に求められていません。処分させて頂きます。」
ズシーン!!
偽物の後ろに轟音の主が大きな音を立て着陸した。その主は木箱と岩で構成された巨大な人型ロボット。
俺はどこかであのロボットを見たことがある。確かユリにもらった資料に書いてあった。アイツは・・・
「く、クローン処理装置だ!」
ケネスが言っているものには聞き覚えがない。俺の記憶が正しければ、あのロボットは無金属兵器。
ヤハレルと戦うため、構成国ではなかった国々が製造したとされる伝説の兵器だ。
「私と同じ外見の方、御名答。魔女のクローンはこの処理装置で八つ裂きにします。」
ロボットはケネスに向かって歩き始めた。
「や、やだ、僕は不良品じゃない!来ないで!!」
ケネスはパニックになっているからか、確実に周りの気温が上がっている。
「ケネス君落ち着いて!!」
「ケネス!ロボットに能力を使え!!」
ケネスはエルゼとハルカの言葉で落ち着きを取り戻した。
「あっ、そうか!あのロボットは旧型だから・・・」
ケネスがロボットに手のひらを向けると、ロボットは木箱の部分が発火した。
「へ、へへ〜ん!この古いタイプじゃ僕は処理できないよ!魔女のクローンじゃないからね!」
ロボットは崩れ落ち、ケネスが挑発するも偽物は全く動じない。
「・・・わかってますよ。あなた方は細胞分裂を利用して作られていないことは存じ上げております。」
「もう情けは必要ないようね。約束通り生身で大気圏突破してもらうよ。」
ハルカが偽物に能力を使おうとしたその時だった。
・・・ピロピロピロ
なんてタイミングで電話をかけてくるんだ。幸い偽物のケネスには聞こえていないようなので、端末に表示されている項目から立体映像なしの通信を選択する。
「なんですかユリさん?偽物のケネスなら大丈夫ですよ。」
「ソイツのことじゃないです。波動を消してる奴の正体がわかったんです!」
なんか興奮してるな。何を今更って感じだ。
「無金属兵器ですか?クローン処理装置ですか?」
「全然違います!それは確認のために送られただけ。私がハルカを送った理由と一緒です!」
一緒と言われても、俺はハルカを送ってきた理由なんて一度も聞いてないぞ。
しかしユリは一方的に話を進める。
「早く偽物のケネス処理して下さい!本物のケネスは不良品ができる確率が高くて再生産面倒なんですから!」
「何をそんなに慌てているんですか。一体何が来るって言うんですか。」
「慌てるもなにも来てるんですよ、エルゼさんの偽物が!」




