新しい仕事
掃除を終えた日の翌日、国から連絡がきた。
エルゼやハルカの事について所長が報告した後、政府は専門家を招集し会議を行っていた。この連絡はその会議の結果を伝えるために行われた。
招集された専門家の中に、研究所所属の人間がいないことは1つ目のツッコミ所。
そして政府から伝達された内容はコレ。
『けが人も出ておらず、大きな損害も無いので、エルゼは現状の管理体制を維持する。ハルカも同様の管理体制を適用する。危険生物であるため、取り扱いには充分に注意せよ。』
・・・危険生物かぁ。
俺は同じ部屋にいるハルカとエルゼを眺める。
「ハルカちゃん。ここからぜったいれいど当てれる確率どれくらい?」
「確定で3回試行できるから、全部外す確率が21.6%、一発当たる確率が88.4%。」
ポケ○ンで一撃必殺狙いの害悪戦法をしている。確かに危険かもしれないな。
もちろんこれは冗談だが、政府は明らかに対応を面倒くさがっている。しかも敵が来ていたことには全く触れていない。
ユリからもらった資料によると、偽ハルカを作った団体の名前は『エンドロダム教団」。
教団は世界各国に点在し、神の名において世界の終末を願う新興宗教。死こそが救済だとでも言いたげな宗教だ。
俺の今の仕事は二人を管理し、敵の正体を突き止めること。戦力外の俺にとんでもない仕事が舞い込んできた。
まあ、俺だけに任せるわけにはいかないので、人員は増やす予定らしい。10人くらい増えたら俺は仕事を辞める。
「ユウト?なんかお前に用事があるっていう男の子が来てるぞ。」
突然部屋の扉を開けたのはビルさんだった。
「えっ、男の子?」
俺は不思議に思いながらも待合室に向かう。
待合室の扉を開けると、小柄・・・というかハルカより小さい男の子が待っていた。
「えーと・・・どちら様ですか?」
「僕だよ僕。昨日ユリさんが話してくれたんでしょ?」
ユリさん、ということはクローンか。昨日ユリさんが話したと言われても全く分からない。
「ごめん、全くわかんないや」
「僕はケネスだよ。エルゼに消されたとか聞かなかった?」
エルゼに消されたのは確か・・・
「 絶対零度の子?」
「そうそう!ここに二人いるって聞いて来たの!」
どうすればいいだろうか。2人までならともかく3人なんて無理だぞ。
「・・・なんでユリさんは君を送ってきたの?」
ケネスはエルゼやハルカと比べると、とても元気で明るい雰囲気で俺に接してくる。
「なんか、今度は僕にそっくりな奴が来るらしいの。僕はそいつをやっつけてこいって言われて来た!」
おそらく、エルゼを狙って来るのだろう。今度はこの子の偽物か。
「・・・もしかしてこの研究所に住んだりする?」
「しないよ。倒したらさっさと帰る。」
・・・どうやら敵の根幹をどうにかするまでクローンが度々来るらしい。管理の仕事が増えるわけでは無いのは非常に助かる。
「ところでエルゼとハルカは?」
ケネスが2人に会いたがっているので、俺は彼を案内し、二人の部屋を開ける。
「エルゼ、多分つららばりにしたほうが強いぞ。」
「ええ?1回もあたんない時あるじゃん。じわれのほうがマシだよ。」
今は2人でポ○モンを育てているらしい。
「エルゼ、ハルカ、それってもしかしてテレビゲーム?」
・・・嫌な予感。
「スゲー!こんなにあるんだ!ここもしかしてゲーム研究所?」
違う。エルゼが小遣いでネット注文してる。
「ケネス君いっしょに遊ぶ?」
エルゼが声をかける。
「ホント!?やるやる!!」
中身は完全に子供だコイツ。元が魔女だから男の子は精神まで子供になるのか、それともハルカが特例なのか・・・。
「あ、あの、お兄さん!」
「はいっ!?」
突然声をかけられ驚きながら返事した。
「やっぱり僕の偽物倒してもここに来ていいですか?」
「あ・・・う、うん、いいよ。」
「やったー!!エルゼ早くやろー!!」
ダメとか言えねえよ。子供がいるってこんな感じなんだろうか。俺にはお金が無いし、誰かと付き合う予定もないので絶対に子供ができる事はないが。
今は面倒事が起きない様、監視しておかないといけない。知らない子供が何をしでかすのかハラハラする。お金を貰ってるからこの仕事をやっているが、無料では絶対やらない。
まあ絶対零度にできるとはいえ、ゲームやってるだけなら大丈夫か。
「あー!!お茶こぼした!蒸発させた方が良い?」
「ダメに決まってるだろ建物が溶けるぞ!」
「ちょ、ちょっと待って、布巾持ってくる!」
・・・やっぱりこの仕事辞めたい。




