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魔法使いの作り方  作者: ゆねのいち
落ちこぼれ研究者の仕事
11/17

新情報続出

「・・・と、ここまでが私とエルゼさんの出会い。そして封じていた記憶の一部です。ユウトさん、所長さん、ここまでご理解頂けたでしょうか。」


ハルカの持ってきた謎の通信機器によって、エルゼに封じられていた記憶について記載されている資料が俺らのもとに送られた。


しかし、資料が凄まじく分厚い。A4サイズの書類が国語辞典の5倍ぐらいの量。全て目を通すのに何ヶ月かかるだろうか。


所長はパラパラと中身を見た後、通信機器によって映し出されたユリに話しかけた。


「とりあえず重要なのはエルゼさんが既婚者・・・じゃなくて、消える魔法と生まれてからお屋敷で働いていた期間までの記憶が無かったということですか。」


婚期を逃した人(所長)が明らかに動揺していた。時代柄もあるし、やむを得ない事情があったので比較するものでは無いと思うが。


エルゼは何かを察したのか所長に声をかける。


「た、多分いつか私より良い人に会えますよ!」


「ぐっ?!」


いらんこと言ってトドメさしたな。こういうのはフォローするんじゃなくて触れないのが正解だぞ。


ユリは気にせず資料の説明を続ける。


「あなた方にとって重要なのは確かにそうですね。資料の大部分はエルゼさんが一瞬でも見た風景や人とか、触ったもの、聞いたもの、口に入れたもの、匂いとかの記憶に関してのリストですから。」


よく資料を見てみると、分厚い資料の大部分が図表だった。


「あの・・・こんな量のデータいるんですか?」


俺の質問にユリは自信満々に答える。


「一つ一つのデータがエルゼさんの人格に作用していますから、なくてはならないものです。人間関係はもちろん、どんな匂いや音を感じて生きてきたかも人格形成に関わっています。」


「匂いや音も?」


「アロマセラピーとか集中できる音楽とかあるじゃないですか。脳の機能に作用してる時点で影響があると推測できます。まだ証明はできませんが。」


「・・・そうですか。」


あまりにも極論だが今はそういうことにしておこう。


ユリは話を続ける。


「私の伝えておきたいことは大体伝えました。これから敵はエルゼさんを狙って度々来ると思うんで、ハルカとエルゼさん2人でどうにかしてください。」


ユリは話が終わり、通信を切ろうとした。


「ちょ、ちょっと待て!」


「はい?」


俺はユリを引き止める。長話しているうちに忘れていたが、もう一つ聞かないといけないことがあった。


「さっきの偽物とか、敵って一体誰なんですか?」


彼女も思い出したのか、通信を切ろうとした手を引いた。


「あー・・・確かにその話してないですね。簡単に言えば世界の終末を望むヤバい集団です。」


「なんでそんなことを?」


「理由なんてわかりませんよ。神の教えが聞こえていて、その神が世界の終末を望んでいると思い込んでる奴らなんですから。」


どうやら宗教的な話らしい。世の中には色んな人間がいるが、人類の滅亡まで望む人がいるのか。間違いなくロクな思考回路ではない。


「私の専門分野の話になるんですが、まず世の中に存在するものには全て『波動』があるんですよ。」


「えっ?」


急に科学者らしからぬ言葉。何の話をしようとしているんだ。


「さっきの未来予知とか、生物を作るのにも『波動』という概念を利用しています。タンパク質や水、カルシウムなどの材料を揃えても生き物にならないのは、それぞれの持つ波動が共鳴できていないからです。」


「そ、そうですか。」


「この波動を共鳴させるには私の所有する極秘施設にしかない『共鳴器』によって『波動の位相』を調整し、相互に『化学的な波のクラック』が発生しないよう『ガンマ線』を『フィブバンパー』に通して照射、物質を『シナプス磁界領域』に固定する必要があります。」


「・・・はい。」


何を言ってるんだ。何一つ理解できない。固有名詞が多すぎる。


この時、俺の後ろから所長が小声で話しているのが聞こえた。


「ユウトさん、この話よくわかりますね・・・。」


分かってる訳ないだろ。放射線の『ガンマ線』という単語が聞こえたが、それ以外何一つ聞き取れていないぞ。


「問題はですね、あの偽クローンを同じ手順で製造していたとすれば、極秘の製造方法が全て漏れているってことなんですよ。データは書類にせず実験用のモルモットに埋め込んで万全にしていたはずなのに!」


その方法がセキュリティとして安全なのかどうかもよく分からない。この人もろくな思考回路ではない。


「ちなみに、ここにいるハルカ、偽物も含め、200年前にヤハレルを滅ぼした無金属兵器は通用しません。私は対策を考えてますので、2人のことは頼みました。」


「ちょっと待て、効かないってどういうことだ。」


通信を切ろうとしたところを引き止めた。日が暮れてきたが、この女が知っていることを少しでも多く知っておきたい


「そりゃあ・・・あくまで”魔女から”作ったクローンを始末するために私が作った特攻兵器なんですから効きませんよ。」


「ちょっと待て、私が作った!?」


次から次へと衝撃の事実が発覚する。一体どこまで知っているんだ。


「あ、いや・・・生物を作り出す方法が確立されて

魔女から作る必要が無くなったのと、たま〜に不良品ができるんで駆除するために必要だったんですよ。」


「えっと・・・なんで敵が使ってヤハレルが滅んだんですか?」


「多分、情報が漏洩したんじゃないですかね。1人目の私はスパイ容疑で監獄に入れられて獄死しました。1人目が秘密警察に逮捕されて以降のことは、9人目の私にはわかりません。」


「え、えぇ?9人目?」


もうきりがない。全部の話に解説がいる。


「ねーえ、ユウト君あと何分ぐらい話すのー?」


「ユウトさん、資料見てから後日連絡しても良いんだけど・・・」


「今日はもう遅いんで、今日の夜はエルゼさんとハルカさんから話聞いて仕事終わりにしませんか?」


エルゼとハルカは明らかにくたびれてるし、所長は今日の仕事を打ち切ろうとしている。


「えー・・・連絡先教えますので、資料見て不明な点があれば後日連絡いただけますか?」


「わ、わかりました。」


ユリが話を打ち切ってくれたので、連絡先を教えてもらおうとした瞬間、再び屋上に上がる階段の方から足音が聞こえてきた。


足音が止まり、ドアが開く。出てきたのは一部始終を見ていないビルさんだった。


「なんで全員屋上にいるんだ。あとその女は誰だ?」


「じゃ、私はここでお暇させて頂きます。さようなら〜」


ブチッ



彼女が通信を切った瞬間、彼女の姿は一瞬で消えた。


一瞬で大量の資料を送ったり、その場に居るかのような立体映像技術は現代のレベルではない。


「あれ?・・・俺の勘違いか。」


ビルさんがユリの最先端技術を理解する前に通信を切ったので、ビルさんにこの場で同じ話をする必要は無くなった。


「あ、そうだ。研究所の掃除手伝ってくんね?一瞬重力が逆さになったせいで研究所めちゃくちゃなんだよ。」


・・・話の長さに関係なく今日は残業確定だった。今日の仕事は散らばった資料を整理すること。


この研究所は国家事業の重要な一部分で、勤務時間や残業についてはしっかりしている。この研究所の唯一良いところだ。


「あの、非常に言いづらいんですけど、掃除は業務外なので残業代出してくれないんです・・・。」



マジですか、所長・・・。


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