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さよならハッピーエンド  作者: 水沢瑞樹
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序章-6

 セシルティアこと、石動麗奈がこの世界に来てから、一か月が経過した。今では部屋から食堂までは…何とか歩けるまでに快復した。

ちなみに、この世界に来た理由、帰る方法、セシルティアのこと。それらについては全く調査出来ていない。身体が弱すぎて、もう、この一か月、ほんっとうに大変だった。

 歩行練習、死んだように眠る、歩行練習の繰り返す…。初めはトイレにも歩いて行けなかったのが、ものすごく恥ずかしかった。

 あ、ちなみにトイレはちゃんと洋式だったよ~ゲームだから、こういうとこは現代で助かるね‼

今思うと食事が美味しいのもその影響か…。

 家族で朝食を食べながら、しみじみ思う。美味しい。

「セシルティア…」

「はい、お父様」

あら、珍しい、イケメンおじさんのパパが声をかけてくるなんて…。いつもは美人ボイン甘甘エルフママが、「大丈夫?口に合う?」とか「今日は何するの?」とか「このあと一緒にお散歩行きましょう」とか…他にもいろいろと、ずっとママのターンだったのに。

珍しく、パパこと、ルーファスが頭を悩ませているようだ。まだ言うか言うまいか迷っている感じ…。

こっちはというと、声をかけられたはいいが、何も言われないので、アホなことを考える余裕もあったのだが、執事さんや侍女さんたちの視線が痛い…。

 そっと、ママことエイラシアの方に目を移す。すると、エイラシアも乗り気ではなかったみたいだが、セシルティアと目が合い、待っていることに気付いたようだ。

「貴方…」

「……ああ、すまない、どうするべきか、まだ決めかねていて…。セシルティアの意見も欲しいのだが…。実は…セシルティアに会いたいと言っている御仁からの手紙が来てな…」

白い便箋、封は破られているが、紅い枠に金色の2本の笛のような物が模様として入っている。そのデザインが本当に綺麗…というより、凝っている感じがして好きな意匠だった。

「その……なんだ…皇室からなんだが…」

皇室‼王様とかってことか…それがなんで私なんかに?セシルティアはよく分からないと頭を傾げる。

「いや、第二王子から、と言った方が正確か…」

ああ、王様じゃないってことね…ってことは、これはあれね…。

縁談‼

ゲーム本編のシナリオでもアルフィオス第二王子殿下の婚約者は、聖女のセシルティア公爵令嬢。

 今はただの公爵令嬢だけど、その公爵令嬢っていうのが大事。南の地方を治める公爵の一人娘だし、取り込めば勢力を拡大できて、第二王子の王位継承に一歩近づける。

王位継承のライバルって第一王女と第三王子しかいないんだよね…。第一王子は王位継承を巡る争いに巻き込まれて、死んじゃって、ヒロインであり、もう一人の聖女である第一王女が頑張るのが、第一王女ルート。第二王子の立場からしたら、一番の障害になる。

 第一王女の選択次第で王位を継ぐことも出来るようになっている。

 第三王子は元侍女との子のため、勢力が弱い…というか、本人が王位に興味がない。それでも平民出身で聖女のヒロインを選んだ場合は、彼が王位を継ぐことがある。

ちなみに聖女に関しては、15歳の頃に行われる『洗礼の儀』というアニマの色を調べる際に露見する。アニマは生命とか魂という意味で、この世界の草・木なども含む生物は全てはこれを必ず宿している。尽きたら死ぬ。生命の炎みたいなもの。死に際の人にはアニマが尽きかけてる、的な言い方をする。ちなみに赤・青・黄・緑・白の5色で、それぞれ得意とする力が分かるというもの。

ちなみにこのアニマってネーミングにしたのは私‼ふっふー、ラテン語で調べて、カッコよかったから、これにしただけなんだけどね‼ぶっちゃけ、魔力みたいなものだから、魔力でも良かったんだけど、魔力切れで死んじゃう世界ってどうなの?って思ってアニマにした。…ぶっちゃけ序盤しか話に出てこないから。

 セシルティアは、ふと、気が付いたことがある。

(…………あれ、思ったけど、これ、誰ルートの話なんだ…?)

………ィア…。

「…セシルティア!」

「え?」

「そこまで呆然としてしまうほどだとは思っていなかった…。今回は体調が優れないとし、遠慮する旨を返事するとしよう」

あー確かに、誰のルートに進んだ場合でも、セシルティアは必ず死ぬ…。

一番、死を回避できそうな…安全なルートは誰のルート…?それを必死に思い出す。セシルティアがどの段階で死んでしまったかを。

(このまま会わないのが一番安全なんじゃ…?)

そうすれば婚約することもなく、何の問題も起こさず、なければ、それだけで死亡ルートを回避できるのでは?我ながら、ナイスな発想だった。

………いやでも、会って婚約しなければ別に何の問題もないんじゃ…?

今は元の世界へ帰るための情報も欲しい。皇族に知り合いが出来れば悪くない。それに第二王子のバックにいる王妃陛下とは仲良くしておいて損はない…。本編でも、セシルティアと共に数々の妨害工作を講じてきた一人なのだから。

(きっと悪役ポジション的に通じ合うものがある…はず)

「あの、会ってみたいんですけど…ダメ…ですか?」

ダメ元で聞いてみて、ダメだったら仕方ない。ルーファスも乗り気ではないみたいだし。

「…本当に…いいのか…?」

ルーファスはエイラシアの方を見る。

「セシアがそうしたいなら…」

エイラシアが頷いたのを見たルーファスは、しばらく、沈黙の後、「分かった」と頷いた。

「日にちをちょうど10日後にしておく。こちらから、出向く必要があるので、9日後に出発する…私が付き添おう」

「え?」

あれ、会いたいって、来てくれるんじゃないの?あれ、こっちから行くの?でもそれはそれでありかも知れない。王都で何か帰れる手掛かりでも見つかるかもしれないし。

ただただ、移動だけが心配だった。

(私まだ、全然歩けない…)

こうして、唐突に会合が決まったが、セシルティアの生活はいつもと変わらず、歩行練習して死んだように眠るの繰り返しだった。


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