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そのプログラム自体には、もちろん善意も悪意もなかった。そういった原始感情、もしくは意志はプログラムを組んだ作者のものだ。そして、目的も……

 ある日、電話回線を伝って、そのプログラムはとあるパソコンのハードに潜り込んだ。そして静かにその生存意義を発揮しはじめた。

 驚いたのは、パソコンの持ち主だった。

「なんだ、ちゃんと動くじゃん」三好はいった。「ユカリったら、昨日の話じゃ、ノロクて使い物にならないってことだったけど」

 三好は高木由加里に助っ人として呼ばれたのだ。MACでウィンドウズのソフトを適切速度で走らすために。

「ありゃりゃりゃ、本当!」

 三好から場所を明け渡されると、席に陣取った高木はいった。走らせたかったソフトがすいすい動く。昨日はやたらと引っかかってばかりいたのに。

「でもユカリ、よく買ったわね、ウィンドウズのエミュレータ」

 あきれ声で三好がいった。

「そんなんなら、最初から普通の互換機買えばよかったのに。だいぶ安かったんじゃない?」

 せっせとバイトした金をすべてマシンにつぎ込んだ経緯を知っている三好はいった。

「普段はMACの方が一〇〇〇倍も都合いいかんね。でも、どーしても、このソフト動かしたかったんだよ」

「顰蹙モンだね」

「あたしもそう思う」

 二人は笑った。

「しっかし、不思議だなぁ?」

 嬉々としてマシンを動かす高木を見ながら、三好は思った。高木より一年速くMACに手を染めたので、彼女より事情に詳しかったとはいえ、どうしてもハードに依存するエミュレータが(しかもその上で走るソフトが)、見た目快適に動くのが信じられなかったのだ。もっとも、と三好は思う。Jobsたちが最初にやってたのは、ハードの機能を最大限に引き出すOS(だから逆によくフリーズしたのだが)の開発だったような気もするし、昔の話だが、PowerMacだってチップはRISCなのに680x0のエミュレーション機能は抜群だ。とすれば、さらに昔、VideoWorksとかを開発したプログラマーがウィンドウズのエミュレータを作ったとすれば(そんな話は聞かないが)、もしかしたらすごいモノができあがっていたのかもしれない。

「あ、出てきた、出てきた! これが見たかったのさ」高木が叫んだ。

「ユカリ、あんたそんなモン出すために、わざわざエミュレータ、買ったわけ?」

 ディスプレイに映った像をふっと見やると、あきれて三好がいった。それは、とあるゲームの前半途中に登場する全裸の美形キャラクターだった。

 しかし、画像からすぐに目を離してしまった二人には、キャラクターの背後で移動する、ぼおっとした白い影は認識されなかった。


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