表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あたしの彼女は愛想が悪い  作者: ありきた
3/5

3話 分かりやすい

 放課後。学校前で雫ちゃんの姿を発見するや否や、あたしは飼い主に甘えるペットのように嬉々として駆け寄った。


「雫ちゃん、お待たせ!」


「それでは、帰りましょうか」


 雫ちゃんは今日も変わらず愛想が悪い。

 きっと周りのみんなは、あたしたちが付き合っているなんて考えもしないんじゃないかな。

 もしかしたら、かわいい後輩にまとわりつく厄介な先輩ってイメージを持たれているかもしれない。


「手、つないでもいい?」


「どうぞ」


 そっけない返事だけど、雫ちゃんは待ってましたと言わんばかりに指を絡めてきた。

 加えて、当然のように恋人つなぎをしてくれる。


「雫ちゃん、好きだよ」


 学校から離れて住宅街に入り、周りに人がいないのを確認してから囁く。


「へぇ、そうですか」


 うーん、なんとも冷めた反応だ。

 彼女を深く知っていなければ、間違いなく心が折れていた。

 ちなみに、日によっては淡々とした口調ながらも「私もです」って返してくれる。

 今回においても、適当にあしらわれたというわけじゃない。

 歩いてる途中だから凝視するわけにはいかないけど、隣を一瞥すればすぐに分かる。

 頬がほんのりと赤らんでいて、彼女の方もこちらの様子をチラッとうかがっていた。


「そんなに照れなくても、素直に愛してるって言っていいんだよ?」


「照れてないです」


 キッパリと断言する雫ちゃん。

 ここで「愛してもないです」とは言われないことが、すごく嬉しい。


「ベタベタして迷惑かな? 黙ってた方がいい?」


「え……あ、いえ、全然、そんな……もっと……」


 表情はずっと同じだけど、今度は顔が青ざめる。

 ちょっとからかっただけなので、ここまでショックを受けられると罪悪感がすごい。


「ごめん、冗談だから気にしないで。雫ちゃん、昔からおしゃべりするの好きだもんね」


「べつに」


「ところで、いつも寄ってるコンビニって肉まんとかおでんが一年中あるけど、そういう店舗って珍しいらしいよ」


「へぇ」


 恐ろしく冷めたリアクションだ。

 ただ、どうやら本人もいまの反応には思うところがあったらしい。

 手を握る力がちょっとだけ強くなり、肩が当たるぐらいに距離を詰めてきた。


「どっちも好きなので、嬉しいです」


 返事をやり直すように、いつもよりちょっと早口になっている。


「雫ちゃんって、あらゆる意味でかわいいよね」


「寝言は寝て言ってください」


 辛辣に吐き捨てる雫ちゃん。

 だけど声に棘はなくて、頬どころか耳まで赤くなっている。


***


 途切れることなく会話して、もう間もなく家に着く。

 手を離そうとしたら、それを咎めるようにギュッと握られてしまう。


「晩ごはんまで、あたしの部屋で遊ぶ?」


 ふと浮かんだ提案を口にすると、雫ちゃんは何度もうなずいた。

 あたしの彼女は無愛想だけど、とっても分かりやすい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ