18. 挑戦狀
私は手を握りしめた。
戦うって言われても、私、実戦経験ないもんね……
お父さんから教わった基本の護身術も、役に立てるのかな……?
槍、槍が、突き刺してくる!
やっぱり、ここは逃げよう……チャンスが見つかるまで!
私は必死に走ったけど、あの人……
体でかいのに、なんであんなに走れるんだ?!
どうしよう……もうすぐ追い越される!
「……」
槍が来る……ここはまず、ダガーで攻撃を止めよう。
……重い!槍は剣より軽いはずなのに、思ったより重い……
ダガーを二つ使っても、効果がないみたい……
「君は勇気のある人だ。これだけは言わせてください。でもここまでだ。」
喋った……男性の方だ……
ここまでって……ダガーを使って、一応攻撃は止めてるけど……?
もしここで気を抜けたら、絶対負ける!なんとかしないと!
「!」お、お腹……?ダガーのガードを抜けてお腹に刺したの??
……痛くないけど、これは私の負けだね。
「お疲れ。」彼が去る前に、私にこう言った。
意外と良い人かも……?
●○●○●
「アヤメさん、結果どうだった?」
「……惨敗しました。えへへ……」アキトさん、わかってるのにわざわざ聞くなんて……悪趣味だね。
「予想通りです。格闘技を選んだ生徒は多分全員、基礎の攻撃技を学んだことある人だよ。」
そうですか?!
『さっき戦った人も、初心者には見えない動きをしました。勝つためにちょっと頑張った。』
勝つためにちょっと頑張った……ってことは、勝ったの?!
『まあ、一応……そうですね。』
い、イブキさん……怖い……
これから、イブキさんに怒らないようにしないと……
「あ、あの、アキトさんはどうだった?」そう言えば、言ってないね……
「すごく頑張ったけど、負けたよ。」
え、え?!私から見ると、アキトさんはしっかりした人だから、勝てるかと……
『あいつは実戦が弱いみたいだよ。』
なんでイブキさんが知ってるんだ……?
この二人、思ったより仲良しかも……って、まずはさくらちゃんを探さないと!
「アヤメちゃん〜〜!!」噂をすれば……
「聴いて聴いて!!うちのクラスが剣の天才が現れたって!」
剣の天才……?
「すごい……誰なの?」
「魔法をかけたから、誰かはわからないけど……話によると、動きもめちゃ早いし、飛んでるように見えるって!」
その人が私と一緒に聖典祭を参加したら、勝てるかも……!
……いやいやいや……人の力を貸せるなんて、ダメだね。
確か、聖典祭はチーム戦だよね。
五人を集めないと、何も始まらないんだ。
「アヤメちゃん?」
さくらちゃんは多分手伝ってくれるけど、ほかの3人はどうする… …?
「すみません。ただの考え事です。」聖典祭は来年の一月だから、まだ時間あるし。
「悩み事なら相談に乗るよ!大丈夫?」
『僕とアキトも一緒だから、心配無用です。』あなたの自信はどこから来たの?!
「後で言うから、今はご飯を食べに行こう!ね!」皆さん、優しいすぎて、どうやって対応して良いのか、わからないよ……
食事の後、私は自分の悩みを吐き出した。
「なんだ、そんな事で悩んでたのか。ばかだな、アヤメちゃんは。」さくらちゃん……?
「授業始めて数日間で、もう聖典祭のチームの候補者を見つけたいとは……さすがアヤメさんって言うか……」アキトさん、いつも微笑んでるけど、こんなに笑ってたの、初めてかも……
それ褒めてるの?それとも私が変な人だと思ってるの?
「これは推測だけど、アヤメさんとアキトは六使だから、心配しなくても、いろんな人たちからお誘いがくると思うよ。」
そうなの……?
「六使よりも、僕みたいな生徒の方こそ悩むかもしれません。」
「アキトさんはすごいだと思いますよ!私よりも!」優しいし、なんでも知ってるし……!
「悩むなら私もだよ!アキトなら大丈夫だって!」
「いや……桜、ある意味では一番心配いらない人かもね。」あ、それ、わかるかも……
さくらちゃん、すごく私たちに懐いてる感じだから、つい忘れてた……さくらちゃん、人気者だもんね……
「ア・キ・ト……」
「ごめん、地雷だったもんね。それで、提案あるんだけど……」
提案……?って、その前に、アキトさんとさくらちゃん、いつの間に……?
「5人のチームだったから、もう一人引っ張って、一緒にチーム組まない?」
……え?
『いいよ。』
その考え、ぜん、全然思わなかった……
強い人選んだ方がいいのかなって思ったけど、私、人脈もなくて……
「それいいね!この4人で組んでみたい!面白そう!」
面白いの……?負けたら願いは叶えないよ……?
『もう一人なら、考えたよ?』え?誰?
『ツキノさん。』
ツキノさんなら心強いかも……!しっかりしてるし!
「まずはツキノさんの方から許可を取った方いいよ。勝手だとツキノさんに嫌われちゃうよ。」
『はい。』
「この話はここで終了しましょう。イブキも宿題あるでしょう?」
そう言えば、咏唱も課題ありましたっけ……?
「じゃあここで解散しよう。また明日。」
「ま、またあした!」
寮に帰った後、私はとある事に驚いた。
やっと、来たのか。
……挑戦狀。