17. 事件
咏唱の授業って、思ったより難しかった……
「それでは、お先に失礼、アヤメさん。」お姫様は私に手を振ったあと、教室から去った。
「あ、はい!」私も早く片付けないと……
「君は噂のアヤメさん?」女の子の声……
噂の……?
「は、はい!はじめまして、アヤメです……」私が挨拶をしたあと、頭を上げて、彼女の顔をちゃんと見た。
木の妖精…?どこかで見たことある気がする。ポニーテール……あ!
昨日、私と同じ授業を受けた人!確か、後ろの席に座ったような……
「私のこと、知ってる?」つ、机を叩いた……びっくりした……
「知りません……すみません……昨日の授業、一緒に受けましたよね……?」ど、どうしよう?!
「!」か、彼女に襟を掴まれてる……。完全に喧嘩売ってる……
こういうこういう状況、初めてだ……
「名前を言うので、ちゃんと覚えてなさい。イェセニア・ペースです。」
ペース家って、確か……
「代々の六使は我が家が務めましたけど、今年だけは私じゃなかった。ご存知ですか?」
え、ちょっと待って……私が席を奪えたってこと……?
「イェセニアさん、よろしくお願いまっー」今は彼女を落ち着いた方が……!
「だから言わせてもらう。必ず君をあの聖なる場所から下ろしますから、待ちなさい。」
せ、聖なる……?あと、これは宣戦布告ですよね?!
「それでは、また。」消えた……
……
今のは……夢じゃないよね?
だめだ!しっかりしないと!このままじゃ、絶対聖典祭で勝てない気がする!
とにかく、次の授業の場所まで行かないと!
確か、格闘技はホールの隣にある大きなテント……でしたよね!
よし!気合い入れて行こう!
●○●○●
「おはようございます、アヤメさん。」
「お、おはよう、アキトさん、イブキさん!」
やっぱり、同じく格闘技のクラスなのに、さくらちゃんだけ違うところで教わってるみたい……
『頑張りましょう。桜さんの分まで。』
そうだよね……じゃなくて、さくらちゃんが死んでるみたいな発言はやめてください!
「……」イブキさん、笑ったよね!絶対笑ったよね!
「集まって。」こ、これは、先生の声……
『行こう。先生が待ってるみたい。』
うん!
テントの中には、30人くらい集まってる。
中心に立ってるのは、一人の人間のおじさんでした。筋肉も鍛えていて、すごく強い人に見える。
「初めての授業は、お前たちのレベルを試してもらう。格闘技と言っても、種類は様々。相手を傷つくことを前提としての近接格闘術、自分の身体を防護することを目的としたの護身術など、自分のスタイルを見つけることが大事です。」
よ、よくわからないけどすごい!
「まずはあそこから、自分の好きな武器を選んでください。」彼が指差したところは、 すみっこにある部屋でした。
「はい!」皆さん、気合入ってるみたい。
「イブキ、アヤメさん、僕達も行きましょう。」
「うん!」よし……!
「10分以内に、武器を持って帰ってください。」
部屋に入ってみると、思ったより大きだった。
様々な武器が、私たちの上に並んでる。
槍、刀、剣、鞭、弓、弩、メイス、ダガー、棍や棒、しかも銃もいる……
お父さんから教わった知識、使えるかも……!
「アヤメさんは何がいい?僕もイブキも適当に剣を選んだよ。」
そ、そんなに早い?!私も早く選ばないと!
えーと……
「そうだね、アヤメさんにとって剣は重いから、ダガーや鞭、あと弓と弩もいいと思いますよ。」アキトさん、ありがとう……!
鞭と弓みたいな使い難い武器はまず諦めよう。残りはダガーと弩か……
ダガーは近距離で、弩は遠距離……私、戦闘苦手だし、弩を使うほうがいいかも。
『慣れないものに挑戦してみてもいいですよ。』イブキさん……!
私は、二つのダガーを棚から取った。
ひとつだけじゃ怖いから、二つの方がいいかも……!
「アヤメさんらしいたと思います。さあ、行こう。」
私たちがテントに帰った後間も無く、先生が喋り始めた。
「ここからは生徒から二人ずつ選んで、それぞれの戦闘を始めたいと思います。聖典祭にも関わるから、他の人の戦闘技術をさらさないように、魔法をかけます。俺がカウントダウンを始めた際には、準備してください。十、九、八……」
えええちょっと待って!
「頑張りましょう、アヤメさん。」
「は、はい!」どうしよう……
「三、二、一。始めます。」
よ、よし!
私が目を閉じた後、眩しい光がすぐに現れた。
ここから始まるんだ!
光が少しだけ縮まった後、私は瞼を開いた。
目の前にいるのはとっても高い人でした。槍を持ってるみたいです。
あ、あの人、歩き始めた。私は、自分を守る姿勢にした。
槍は、突き刺してくる!