16. 咏唱
咏唱と格闘技の授業は二日後。
選択科目だから、他のクラスの生徒と授業をするんだよね……?
つまり、人数も元のクラスより多いかもしれません。
心配するなぁ……知らない人も絶対いるし、さくらちゃんやアキトさんみたいな優しい人もいないし……
「アヤメちゃん?アヤメちゃん!」
「え?!えーと、どうしたの、さくらちゃん?」急に呼ばれて、びっくりした……
「ボーッとしているから、大丈夫なのかなーって。まぁまだ朝だし、授業が始める前に気を取り直して行こうね。」
「う、うん……ただ、新しい科目も始まるから、ちょっと緊張してるだけ……」
「そんな事で緊張するなぁって!アヤメちゃんならきっと大丈夫だよ!」
さくらちゃん、人を慰めるのは得意だね。
「ありがとう。頑張ってみる。」
「よし!じゃあ気合い入れて行こう!」
「……お、お!」
●○●○●
咏唱と格闘技のクラスは今日から始めるのか……確か咏唱は9時から11時で、格闘技は11から12時半だったよね。
咏唱はともかく、格闘技のレッスンはイブキさんやアキトさんがいるから、きっとなんとかなる……!
噂によると、咏唱は暗記系の科目だから、私も一応覚えるのも別に悪くないから、多分いけるかも!
そんな気持ちを持ちながら、私は咏唱の教室まで歩いた。
よかった……思ったより人が少ないかも……
席に座ってるのは、20人くらいだけでした。妖精は人間より圧倒的に多いけど、いじめは思ったより少ない。
よかった、私が作ったルールのおかげかな。
私は適当に空いてる席を探して、静かに座った。
先生はまだ到着していないから、周りから大きな話し声がこっちまで届いた。
「あの子か。まぁ、エリサ様ならきっとなんとかなるって。」
「大丈夫か?私たちからから先手を打っても良いのに……」
「ほら!こっち見てるよ!だから静かにしてって言ってたのに!」
……私の事じゃないよね?自意識過剰かもね……
「ごきげんよう、エリサ様。」
「エリサ様、おはようございます。」
「皆さん、ごきげんよう。挨拶しに来てくれて、本当にありがとう。」相変わらず上品だね、お姫様……
さくらちゃんも顔や仕草はお姫様みたいだけど、性格はお姫様より明るいだよね。
二人からも色々助けてもらったし、私もいつか、恩返しできるかな……?
「おはようございます、アヤメさん。」
え……?え?!!
「お、おはようございます!エリサ様!」考え事をしたら、まさかお姫様が挨拶に来るなんて……
「緊張しなくても良いのに。隣で座っていい?」
「も、もちろんです!どうぞ!」入学式の時みたい……
えーと、何か話さないと!
「アヤメさん。」「あ、あの!」被った!どうしよう……
お姫様は私に向くて、笑った。「あら、被りましたね。アヤメさん、先にどうぞ。」
「あ、あの、エリサ様はなぜ咏唱を選んだのですか?」
「面白いと聞いたし、先生も昔から知った人だから、やってみたいだけ。」
先生の事……?知ってる?!
「アヤメさんは?」
「ほ、他の科目が難しいそうだから……」武器研究だったり、生物学だったり、ちょっと怖いだよね……
「なるほどね。残りの科目は何を選んだの?」
「か、格闘技です……!」私が言い出した後、エリサ様はなぜか変な表情をした……一瞬だけど、初めて笑ってない顔を見た気がする。
気のせいだったりいいなぁ……
「ちょっと意外ですね。理由を聞いてもいいですか?」
「聖典祭に……役に立ってるって友達言ってたから……」
格闘技は多分、この中に一番怖い気がするけど、あの願いが叶えるなら……!
「君にも願いがあるんだ……」え、え……?声が小さ過ぎて聞こえない……
「ただの独り言だよ。気にしないで。」
「あ、はい……」
「皆さん、お静かに。授業、始めるよ。」気つかないうちに、先生が教室に入ってきた……!
光の妖精は大体優しいイメージをくれるから、ちょっとだけ落ち着きました。
顔や服装を見ると、優しいおばあちゃんみたい……
「咏唱を構成するのは、3つのもの。」
「歌、咏唱文と『霊』。」
う、歌……?!
「歌はリズムとピッチの正解度を重視します。咏唱文は暗記でできるけど、油断しないで。『霊』は、魔法の才能や資質に関わってる。」
「教科書を配ります。しっかり受け取ってください。」