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8 END2

ここで終わってしまうのもアリかもしれない。


……こんなこと、いつまでも続けていたらおかしくなってしまう。

というより、もう慣れ始めている自分が怖い。

ここは、いちかばちか終わってしまうというのも手だ。

オレはしりとりのルールに則り、「ん」がついたら負けだと思っていた。

実際、「ん」で終わった会話グループもあった……

でも、もしかしたら。

もしかしたら違うのかもしれない。

マチコは子どもじみた存在に見える。

だったら「彼女を勝たせる」のが正解なんじゃないか?

最後に書き込まれた

マチコ『かかし』

を見つめる。

「……よし」

深く深呼吸。

腹を決めて、オレは書き込んだ。

『しさん』

次の瞬間――

ケタケタと笑う声がした気がした。

それは無邪気で純粋な声にも聞こえたし、酷薄な声にも聞こえた。

その声が耳鳴りにかわり、反射的に耳をふさいで目をつむる。

一言、頭の中に、ある声が聞こえてきた。

直後、耳鳴りが消えた。

おそるおそる目を開けると、そこは慣れ親しんだ文芸部の部室だった。

一人でボーッと突っ立っていたのだ。

それを理解したとき、全身から力が抜けてその場にくず折れていた。

手に握っていたスマホは、あの闇の中で使っていたものではなく、木目調のカバーの慣れ親しんだいつものスマホだった。

そこにはマチコとの会話グループなんてなく、文芸部のトークグループが開きっぱなしになっていた。

記憶が、はっきり戻ってくる。

そうだ、文芸部の次の会誌用に、打ち合わせをRUNEで行ってたんだった。

それでネタの案として、都市伝説好きの加藤が面白い話がある……なんて書き込んでいたわけだ。

のちに。

……のちになってわかったのだが。

このRUNEの会話グループにいた部員全員が失踪していたことがわかった。

それと、都市伝説を調べた結果、「しりとりマチコ」という怪談が流布しているのもわかった。

内容としては、「暗闇の中、RUNEでしりとりをさせられ続ける。しりとりをしないと殺される」というもの。

そこには「相手が答えられないよう追い詰めたら助かる」、「『出口』と言わせれば勝てる」というようなウソの情報が載っていた。

もしかしたら、偶然『ん』を使って帰れた人がいて、その人が体験談を残し、そこに無責任な尾ひれがついて現在の形になったのかもしれない。

それより問題は、帰ってこない部員たちだった。

警察も出動する騒ぎになったが、失踪の原因はわからずじまい。

オレは『しりとりマチコ』に巻き込まれたのだと確信していた。

なぜオレたちは『しりとりマチコ』をする羽目になったのか?

これは推測でしかないが、RUNEグループ内で『しりとりマチコ』の話をすると、グループ全員が『感染』するんじゃないだろうか?

だから、全然知らないオレも引き込まれたんじゃないか?

あなたのトークグループに怪談好きはいないだろうか?

その人物が、『しりとりマチコ』の話をし始めたら?

いつどこであの暗闇に引き戻されるか、わからないのだ。

そして、オレの仲間たちのように、戻って来れないかもしれない。

オレにできるのは、彼らがまだしりとりを続けていて、いつか帰ってくることを祈ることだけだ。

最後に、なぜオレが『ん』で勝てることを広めないかを疑問に思っている人もいるだろうから、それにだけ答えておく。

この世界に戻る際、聞こえてきた言葉に原因がある。

その言葉とは――


『こんかいはとくべつに、かえしてあげる。まだおともだちがたくさんいるから』



帰還END

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