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「……ふぅ」
とりあえず、長期化を覚悟はできた。
上手く物資を得つつ、脱出口を掴もう。
「はじめるか」
マチコが最後に書き込んだのは『かき』だ。
『き』に続くなら――
『きみ』
でどうだ?
するとすぐに、
マチコ『みず』
の書き込み。
「おお」
足元がぼんやり光り、ラベルのないミネラルウォーターらしきペットボトルが現れていた。
頭からバシャッとかじゃなくて助かった。
喉も乾いていたので、そういう意味でも助かる。
続けよう。
『ズッキーニ』
マチコ『にまめ』
「煮豆か……」
逃げ道、とは流石にいかないか……
足元に現れるのは、紙皿とその上に乗った煮豆。
やはり、そのものだけが現れるのではなく、ある程度使いやすい形で出現するらしい。
煮豆は重要じゃないが、あとでつまむか……
『メカ』
マチコ『かめら』
カメラが現れたが、これもいまのところ使い道がない。
懐中電灯が来てほしいところだったが、そのうち出るのを期待しよう。
『ラムネ』
マチコ『ねこ』
「ねこ!?」
生き物も出せるのか!?
驚いていると、どこか遠くで「ニャーン」と鳴き声がした。
この闇の中に、本当に猫が現れたのか。
……だとすると、少し考えないといけない。
猛獣が急に現れる可能性があるということだ。
過去の会話グループはざらっと見た限り、出てきているのはせいぜいカラスやスズメくらいだった。
たまたまなのか狙ったのかはわからないが……
マチコのひらがなばかりの返答を見るに、子どもなのかもしれない。
子どもが言いやすい猛獣は避けたほうがいいだろう。
ライオン……は、『ん』がつくからない。
シロクマも『し』が優先されるからないだろう。
警戒するとしたら、チーターやハイエナ、ゴリラとかだろうか。
毒~を避けるために『ど』で終わらないようにしたほうがいいだろう。
過去のトークでスズメバチは出ていないので、『す』は行けるか……?
とにかく、こうして考えると使える言葉も少ないかもしれない。
……急いだほうがよさそうだ。
『こいぬ』
マチコ『ぬかづけ』
……「抜け道」狙いだが、これも失敗か。
妙に渋いチョイスで出てきたぬか漬けのツボが床に現れた。
『けいひ』
来い、非常口!
マチコ『ひしもち』
……ダメか。
最近ではめったに見ないひしもち、食べてみたら意外にうまかった。
しかし……早々、上手く解決につながりそうな気配もない。
導きたい解決策に繋がるような、一手は……?