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法則性が、あった。
はじめに『いのち』。
自分が書き込んだのが
『ちょっと~いいでしょうか』
次にマチコが、
『かい』
続けてオレが
『いや~わかりますか?』
だ。
「しりとりに……なっている?」
そして、マチコの返答が、この空間に現れるってことか……?
だとすれば……最初の『いのち』というのは……オレのこと……?
頭が上手く回らないのに、心臓だけが自分でもわかるくらいに跳ねている。
「……ま、待て」
しりとりが繋がったのは、偶然だ。
本当にびっくりするくらいの確率で、二回成功しただけだ。
これが、失敗してたら、どうなってたんだ……?
ルール違反には、何が起こる?
「ん?」
ここで、今さらながら気づいた。
トーク欄の上部に「新しいグループ(76)」とある。
「76……?」
待て。
76ということは、他にたくさんのトークグループがあるんじゃないか?
上部をタップすると、下からグループを選択するフレームがせりあがってきた。
「やっぱり……」
ゴクリと、音がした。
それが反射的に自分が唾を飲み込んだものであると、一瞬後に気づく。
震える指先でトークグループを開くと、上からザラッと大量のトークグループが現れる。
まず、一番最初に相当する()がついていないグループを開いてみた。
「!」
……ある意味では、想像通りだった。
そこにあったのは
マチコ『いのち』
『なんなんだここはふざけるな』
この2つだけ。
後には何もない。
……おそらく、だが。
この人物はルール違反で、消されたのではないだろうか。
無事に帰された……とはとても思えない。
それを確かめるためにも、2個目に当たる「新しいトーク(1)」を開く。
同じように、しりとりが成立せず、マチコに助けを求めた後に止まっていた。
「……」
絶望的な気分になる。
それでも手掛かりがほしくて、先に進めていくと、会話が続いているグループを発見した。
それは「新しいトーク(23)」。
かなりの数の会話が続いている。
気になるのが、最初の『いのち』に対して、すぐ『チオール』と返していることだ。
そして、次々と『る』で相手に返している。
明らかに、これのルールがしりとりだと理解しているとしか思えない。
だとすれば、それはそれでおかしい。
22までのグループで、法則に気づいている人は一人もいない。
なのに、なぜ23はルールを知っている?
仮に、ルール違反で現世に帰れるとしても、ルールはわかっていないままのはずだ。
考えられるのは、誰か脱出できた人がいる……その場合、このスマホ以外の端末でこの『ゲーム』をやらされている人がいるということになる。
もしくはマチコ本人から情報が出ているということだが……
いずれにせよ、ルールを知ってる人がいたというのは大きな情報だ。
トーク履歴を下に進めていくと、何度も『る』を仕掛けたことで、マチコの返答が遅くなっているのがわかった。
マチコは明らかに同じ言葉を使うのを避けている節があり、だからこそ『る』攻めは有効だった。
これなら、勝てる……そう思ったのだが……
マチコ『いじわる』
その一言が書き込まれてから、
『ごめんなさい』、『ごめんなさい』、『ごめんなさい』、『ごめんなさい』、『ごめんなさい』、『ごめんなさい』、『ごめんなさい』、『ごめんなさい』、『ごめんなさい』、『ごめんなさい』、『ごめんなさい』、『ごめんなさい』、『ごめんなさい』、『ごめんなさい』、『ごめんなさい』、『ごめんなさい』、『ごめんなさい』、『ごめんなさい』、『ごめんなさい』、『ごめんなさい』
謝罪のコメントがおびただしいほど並んでいる。
最後に『助けて』と残し、そのトーク履歴は終わっていた。