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……どこだ? ここは?
真っ暗で何も見えない。
まぶたを開いている感覚はあるのに、完全な闇だ。
……もしかして失明したんだろうか……?
目を触ってみようとするが、反射的にまぶたが落ちてきて眼球を触ることはできなかった。
少なくともまぶたの上から触った限り、目玉がくりぬかれてる……みたいな最悪の想像よりはマシみたいだ。
……OK。
まずは状況を整理しよう。
真っ暗闇の中にいる。
今のところ、失明した可能性もまだある。
それは、いま考えてもしょうがないから次に進む。
では、なんでこんなところに?
記憶を思い返す。
オレの名前……藤咲翔。
うん、問題なく思い出せる。
幼少期の記憶もある。
幼稚園の裏の小川で沢蟹を獲ってたのが最古の記憶――
……と、そこまで遡らなくていい。
問題は、今日か昨日の記憶だ。
昨日は……夕方に大学の部室に行った。
文芸部は特に決まった活動日があるわけじゃない。
だからフラッと行って――
……それからどうなった?
うん。明らかにそこで記憶が途切れている。
誰かと会ったような気もするが……
ダメだ。
いくら思い返しても、何も浮かばない。
こんなところにいる経緯はわからないってことだ。
仕方ない。
ここをもっと探索してみよう。
まずは手を伸ばしてみる……が、何の感触もない。
手の届く範囲には壁もないってことか。
自分の体を触ってみても、シャツやパンツの感触はあるが、ポケットには何も入っていない。
……このままこうしててもダメだということだ。
とはいえ、こんな闇の中を歩き回るのは怖すぎる。
仕方なくハイハイで進もうとしたとき……
「ん?」
足元で何かがぶつかった。
硬質だがさほど大きくない板状の感触……これは間違いない。
「スマホだ!」
それを裏返すと、画面が光っていた。