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1.静寂に鐘が鳴る
清澄に晴れた空がある。
薄闇をベールのように纏う空は、ゆっくりと、しかし確実に昇りくる陽光によってそのくすみを地平へと引いていく。応じて、待ちわびていたかのように一斉に小鳥たちが歌い出す。
朝だ。
早朝だが、住宅街にも動く人影がある。新聞配達であろうその人物は、慣れた様子で未だ寝静まっている民家に、次々と新聞を放り込んでいく。もう全て記憶しているのだろう、表札を確認することもなく流れるように投函する。
そうして今、隣家と同じように新聞を放り込まれた民家がある。『洲崎』と表札のある二階建てのその家は、やはり誰も起きていないのだろう、動くものの気配はない――と、音が上がった。鋭い音。
目覚ましだ。




