表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界データ管理人  作者: 水友 想
第一章
6/38

6. 逃げるは恥じゃないけど

 ちょっと待て。転生して早々に無限労働endは嫌すぎる…


 何とか回避すべく周りを見回すと、1階の一部に本棚ではなく、幾何学的な模様が描かれた豪華なドアを見つけた。


 あのドアの先が、世界と繋がってるかわからないけど、ココよりマシだろ。


 逃げる気まんまんで逃亡先を探す俺には気づかず、のんきに鼻歌を口ずさむリクル。


「なんとかなりそうで良かった~。みんな私だけじゃ終わらない量だってわかってるのに、誰も助けてくれないし」


「……」


「いーーっつも。みんな文句ばっかりでさぁ、頑張って対処しても感謝の言葉もなく、対処して当然って言わんばかりの態度だし」


「…………はぁ」


 前世の自分と同じような境遇や雰囲気を感じとってしまい、逃げようとした足が止まる。


 ここで逃げても、転生先の世界について何も知らない俺が、ちゃんと生きていけるかわからんないし。

 見た目10代の女の子一人に任せて逃げるのもカッコ悪いしな。

 

 そう心の中で言い訳すると、頭と気持ちを仕事モードに切り替えて、今までに得た会話内容や情報を整理する。


 ーー主に新規登録が遅い

 ーー恐らく、長い期間は普通だった?

 ーー直近で何か変化が…?


「なぁ、リクル」


「ん?なに?」


「ここって、暫くは問題なく処理してたんだよな?問題は最近発生したのか?」


「うん。そうだよ。問題が起きてるのは1ヶ月前からかな」


「問題が今のように大きくなる前に、何か今までとは違う事がなかったか?例えばシーボの台数や動作が変わったとか、本や本棚に対して何かしたとか」


 リクルは思案顔で考え込むと「何かあったかな…?」と、暫く独り言をつぶやきながら思考していたが、思いつくことは無いようだった。


「うーん…特にないよ?シーボの数は変わってないし…あー…強いて言うなら本の色を変えたくらいかなぁ」


「本の色?」


「うん。遅いって怒られた後、周り見たら、登録しきれなくてシーボが何冊も本の出し入れしてたの。だから、シーボがわかりやすいように、未使用は白に、1ページでもデータが入ってる本は黒にしたの。そしたら、シーボが白本に優先して書き込むから、ちょっと前まではすっごい速く処理してたのよ」


  慎ましげな胸を張り自慢気に語るリクル。


 ………ん?それって……


 嫌な予感がして、周りの本棚を見回すと黒本ばかりで白本は全く見えない。シーボを見ると、黒本を取り出して戻す作業を何度も何度も繰り返しており、中央にあるクリスタルに戻るまで、相当時間を要していた。


「えっと……ど、どうかした?」


「白黒に分ける前って、何色か色がついてなかったか?」

 

「うん。そうだよ。白、青、黄、赤、黒…だったかな。何でこんなに色がついてるのか知らないんだけどね。あれ?え?何で知ってるの??」


 うっすらと原因が見えてきて、顔をしかめる俺を、リクルは不思議そうに見ていた。


「色を変えたことが今の大幅遅延の原因で、恐らく本の色は、大まかな書き込める残りページ量を意味してたと思う」

 

「え?え?で、でも、ちょっと前までは速くなってたよ」


「白本が無くなるまでは、な。周り見て見ろよ」


 俺に促されたリクルは、慌てて見回した後、タブレット端末を操作しだした。顔を近づけて一緒見ると、端末には図書館の本棚や本の状態が表示されているようだった。


「うぁ…ホントだ…真っ黒…」


「もともと黒だった空きが余りない本と、少ししか書かれてない本、どちらも黒になってるから、シーボが適切に判断できず遅延してると思う」


「でも!白黒にする前にも遅延してる、って言われたよ?戻しても同じじゃない?」


 自分の失策を指摘され、少しむくれながら反論してきた。


「確かに、最初に遅れた原因は不明だけど、今よりは大幅に改善するはず。元々の状態では、こんな惨状になったことがないなら間違いない」


 状況からの推察だけど、可能性は高そうだ。

 ただ、本当に推察通りなら、SF技術に感心してたのに、空きチェックが外見とか、管理者が適当とか、色々残念すぎるんだが…


 最初の原因も、思いつくものはたくさんあるが…

 断片化、行移行、シーボの移動時間、シーボの不足、あげればキリがない。が、まずは現状の復帰が先だ。


「植物とか人とかスキルとか、ジャンルくらいは、分けて配置されてるんだろ?」


「もちろん。えっと…植物、鉱物、生成物、生物、スキル、魔法…」


「興味はあるが、時間がないから詳しい解説は後でいい。先ずは本の色を元に戻す。次に、ジャンル毎に細かく散らばったデータを集約する。その際、キッチリ詰めすぎないこと。2割くらいは空きを残しておいてくれ」


 指折り数えながら説明しようとするのを遮って指示を出す。


「どうして?キッチリ詰めた方がスッキリしない?空いた白本も多くなるよ?」


「まぁそうなんだが、更新や追加の際や、検索時のシーボの動作時間を減らすには必要なんだ」


 時間がもったいないので、細かい説明や理由は端折ったためか、イマイチ理解してないようだったが、無理やり押しきる。


 さてと。まずは、クレームをもらってる植物と生成物から片づけますか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ