(涙)(笑) ~涙と笑いの物語~
受験勉強の合間に中学生が書いた小説です
誤字脱字などはご了承ください
《ユキ》
ユキ こと宮澤雪子、つまり私、には………好きな人がいる。
彼の名前は………
《ナツキ》
ナツキ こと鰐口夏輝、つまり俺、には………好きなやつがいる。そいつの名は………
《ユキ》
朝からドキッとした。目が覚めたらナツキが目の前にいた。いや、正確には目が覚めて寝返りしたらナツキがいた。
彼の両親は度々出張で家を空ける。そのため、幼馴染みで隣の家のうちによくナツキは泊まる。にしても最近はめったに泊まりにこなかったのに、急にどうしたのだろうか? だがそんなことがどうでもよくなるくらいに私の心臓はバクバクと悲鳴を上げている。もう少しで一生分の心拍数を打つんじゃないかってくらいに速く。隣にはナツキの顔がある。その顔はかっこよくて、でもどこか可愛くて。見慣れていたはずなのに、中学に入ってから意識してしまってあまり見れなかった。だから久しぶりに見たら頬が紅潮して、インフルにでもかかったのかってくらいに体温が上がる。そりゃあそうだろう。だって………
《ナツキ》
今夜は一睡もできなかった。白い肌。長いまつげ。桃色の唇。吸い付きたくなるような首筋。そして最近少しふっくらしてきた胸。そのすべてが今、隣に、無造作に存在するのだから。
昨夜急に父さんと母さんに仕事が入り、最近物騒だからとユキのお母さん(義母さん?まだ早いか)に家に招かれ、部屋が今空いてないからとユキの部屋で眠ってと言われ今に至る。昔は遊んでくれなくて両親の仕事が嫌いだったけど今はナイスジョブだと思う。
眠れなくてユキを眺めると、触れたいという欲求が膨れ上がってくる。少しだけでもいいから、頬に触れるだけでいいから、と、思いながらもブレーキがかかってしまう。ユキは何よりも大切だから。だって………
ナツキのことが
好きだから
ユキのことが
《ユキ》
とりあえず寝たふりをした。もしナツキが起きて目が合ったらと思うと耐えられない。最近は目を見て話すのも恥ずかしい。ナツキがこっちを向いたらすぐに目を逸らしてしまう。ナツキには私がナツキを避けてると思われてるだろうな。
本当はこんなに好きなのに。
《ナツキ》
なになになになになになになんでずっと見つめてくんの!?
昨日の夜のことを考えながらユキの顔を見てたら朝になっていた。ずっと見とれてた。そしたら急にユキが動き出したから慌てて寝たふりをする。ユキの方を向きながら寝てるのを今さら直したら不自然だろうから動けない。まあユキが起きたら五分後くらいに起きよっかなーと思ってたら、ユキがずっとこっちを見つめてる。視線を感じる。かれこれ30分弱。そんなに面白い寝顔なのか!?
《ユキ》
40分くらいナツキの寝顔を見てた気がする。自分でもどうかしてると思う。その後寝たふりをしたらナツキが起きてったので少し時間をずらして起きた。見つめてたの……ばれてないよね?バレたら恥ずかしさで死ねるね。
《ナツキ》
ユキの視線を感じなくなったので起きてみた。ユキは……寝たふりをしている。な・ん・な・ん・だ!?
こういう紛らわしいことはやめて欲しい。ユキが俺に好意を持っているような、そんなのを感じさせないで欲しい。フラれて関係が壊れるのがいやだから、ずっとずっと我慢しているのに、そんな気にさせるようなのは……………そういえば少し胸を見てしまったのはバレていないよな?バレてたら申し訳なさで死ねるね。
《ユキ》
よく考えたら今日は休日でもなんでもないただの平日だった。学校じゃん!! なに朝からあんなに時間を浪費(自分的には有意義に使ったつもり)したんだろうか。あわてて私とナツキは用意をする。朝御飯なんか食べてる場合じゃなく、仕方なく空腹状態でダッシュ。後でコンビニでパンでも買おう。だが男は用意がすぐ済むからナツキはちゃんとごはんを食べた。でも私の用意を待ってくれたり私がコンビニに行けるように一緒に走ってくれるところにまたときめいて、どんどん恋心は膨れていく。もう容量オーバー寸前だ。
《ナツキ》
はしるーはしるーおれーたーちー
食後のダッシュは超きつい。腹が痛い。激痛だ。カッコつけたら失敗だ。
そんな風に走ってたら曲がり角で女子にぶつかった。たぶん俺らと一緒で走っていたのだろう。
「大丈夫!?」
「あ、はい。へいき……ッ」
「やっぱり挫いてる………。ユキ! この子送ってくから先に行っといて! もしかしたら遅れるけど先生にはうまくごまかしておいて!」
「う、うん。わかった」
その女子は俺の所属しているサッカー部のマネージャーでもある2年3組の神谷柚葉さん。校内一とも言われている美少女だ。知らない女子と話すのは苦手だが、知らないわけではないので安心した。
「神谷さん、立てる?」
「あ、立つのはいけるんですけど歩くのがちょっと……」
「肩、貸すから。荷物貸して」
「あ、ありがとうございます、先輩」
そのままゆっくり歩いて学校へ向かう。二時間目まで遅刻したが、神谷さんが説明してくれたからか、ユキが説明してくれたからか、おとがめは無しだった。その日、いつもの待ち合わせの下駄箱前にユキはこなかった。
《ユキ》
ベットで泣いている。なんでだろう? そんな疑問は要らないだろう。肩貸すくらいでなんで泣くんだろう、私。たぶんナツキとあの女の子がお似合いだったからだ。いつも私が思っていたナツキとの背の差のコンプレックスがあの二人にはなかった。あの女の子の身長は155くらい。ナツキが167だからちょうどいい感じになる。でも私はチビで150も無い。その事にずっと悩んでたからいい感じの二人を見て泣いてしまったんだろう。もう、自分が嫌いだ………
《ナツキ》
次の日、なんか謝んないといけない気がして、謝るために朝少し早くユキの家へいった。でもユキは家を出た後だった。クラスが1組と5組と離れているから、短い五分休憩の間に会いに行くのは難しい。うちの学校は授業中以外のケータイの使用が認められているため、メールで昼休みに校舎裏のベンチで一緒にお弁当食べようという旨を伝えよう。
学校に着くと下駄箱に手紙が入っていた。神谷さんからの手紙で、「昨日のお礼にお弁当を作ったので校舎裏で一緒に食べませんか? 良ければメールしてください」と丸文字で書いてあった。なんで手紙なんだろう? と思ったけど、ユキと三人で食べたら楽しいだろうと思い了解の返事をした。
《ユキ》
ナツキから校舎裏に昼に来いとメールがあった。もしかして告白? 何てことを考えると沈んでた心に翼が生えたような気がした。そんなはず無いけれど。すぐには返信しない。焦らす。仕返しだ。でも彼は校舎裏で待ってるだろう。私が好きになったナツキはそういうナツキだ。
《ナツキ》
昼休みになった。校舎裏に足を運ぶと神谷さんが待っていた。そして……………
《ユキ》
昼休みに校舎裏に行った。そしたらナツキが見えた。心がついに成層圏を飛び越えた。だがナツキの前には昨日の女の子。そして女の子は背伸びをして目をつぶって唇をすこし尖らせている。まるで……………キスするかのように。
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで、そんな疑問が頭を駆け巡る。そしてナツキと目が合った。その瞬間私は走って逃げてしまった。そこにいられなくなった。理由は簡単。ナツキがキスしようとしてたからだ。
《ナツキ》
今俺は、ユキを探して町を走っている。俺がキスするのを見て逃げたってことは勘違いしてもいいってことだと信じて
《ユキ》
あてもなく走り続けてる。もう自分の居場所がどこかなんてわからない。でもいっか。もうなんでもいいや。なにもかも、ナツキのことだってどうでも…………
「ユキ!」
ビクッと私の体がバイブのように震える。なんで、なんでナツキがいるの? 目から涙が溢れ落ちる。この涙は安心したから?
「なんで私を探すの! 部活の後輩といちゃついてればいいでしょ! こんな腐れ縁の幼馴染みなんかほっとけばいいじゃない! 私のことなんかどうでもいいじゃ
「どうでもよくない!」
えっ、それって………
「じゃあさっきのはなんなのよ!」
「説明するから聞け! まず、神谷とは付き合ってない!」
「じゃあなんでキスなんか
「だから!『付き合ってください。もし〔はい〕って答えが返ってくるならキスしてください』って告白されたんだ!」
「じゃあなおさらなんで…………」
「だから、ふったんだよ!」
「なんで? 私と違ってあんなに美人なのに?」
「お前の方がかわいいに決まってんだろ!」
えっ………………
「初めてコクられて、初めてふって、初めて女の子泣かせたんだよ! だからお前は泣くな! もう涙は見たくない! 俺が一生笑わせてやるからお前は泣かずに笑っとけ!」
それって、こくはく?
「ユキが好きだ!一生笑わせてやるから、一生俺の隣にいろっ!」
ならばこう答えるしかない。ずっと昔から胸に秘めてた言葉。涙を拭って言う。
「わ、私も、私もナツキが大好き! これからもよろしくお願いします!」
私の顔は、満面の笑みだった。