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FANTASY OF OWN LIFE  作者: 矢吹さやか
4/24

#004

 あ、大魔導秘伝書ってのを使っておこう。説明では詠唱時間は半分になることと、威力が最大で3倍になることと、ある。いや、3倍って……やりすぎないかな。でも敵部隊の殲滅ができるんなら、爽快だろうな。んー。楽しみである!ちなみに効果時間は……永続?一回でいいの?未来永劫使えるって、単なるチートアイテムだったか……。ま、これが終わったらログアウト何で意味ないけどね。


 では、早速アイテムを選択して、使用をぽちっとな。

『このアイテムは使用すると消滅して二度と手に入りません。それでもよろしいですか。 はい/いいえ』

 実際のゲームならともかく、ここでそれを躊躇う理由はないな、効果は絶大だし、英雄になるチャンスじゃん(いや、ゲームの中なんだけどね)。

 という訳で、もちろん『はい』を選択。


 その瞬間、ものすごい情報量が自分の中に流れ込んできた。知識の奔流というか、濁流というか、津波というか、何でもかんでもまぜこぜで、自分の知っているものから知らないものまでが一気に詰め込まれた感じだ。

 かなりの息苦しさを感じ(ゲームなのに!)、その場でうずくまる俺。


「大賢者様、どうなさったのですか?」

 心配そうにシャルロッテが駆け寄ってくる。

 息苦しさを超えると、力があふれてくるのが分かる。これはアレか?カ○ン様のご用意された神水ですか?苦しかった時間は悟○ほどではなかったけれど。


「いや、大魔道秘伝書を使った反動というか、そういう感じですかね……。もう大丈夫です。」

「よかったです。神級のアイテムをお持ちなので、問題はないのだろうと思っていたのですが、少し秘伝書に当てられましたね。」

「当てられる?」

「神級のアイテムはその名の通り、神が作ったと言われるもので、使用者に大きな負荷をかけることがあると聞いたことがあります。耐性が低い者だと、発狂するレベルのものであるとか……。」

「危ね!危な過ぎでしょ!そのアイテム!!まぁ、ちょっとアレではありましたが、もう大丈夫ですよ。今なら何でもできますよ!」


 では、そろそろご準備ください、と言ってから、シャルロッテは持ち場に戻った。いや、何回見ても美人だ。ゲームキャラなら攻略とかできないかな……。いや、そんなことを考えている場合ではない。


 という訳で、真打登場の準備である。

「えーと、5分詠唱の魔導はっと……、これか、『アルティミットバースト・フレア・地獄風味のFOOLオリジナルソース和え・多少の隕石を添えて  使用回数1回。』……って、料理名か、これ!」

 地獄風味とか多少の隕石とかなんだよ、これ考えたやつ絶対頭悪いだろ……。戦場で料理名っぽい呪文を叫ぶとか羞恥プレイじゃん!

 突っ込みたい心は押さえられず、ちょっとエキサイトしてしまった。


 だが、やらなければ俺の英雄ロードは開けない。

「始めるぞ!」とシャルロッテに声をかけて、メニューの魔導使用ボタンを押す。

 すると、頭の中で何やら呪文らしきものが展開され、ぐるぐる回っていく。般若心経をサラウンドシステム&輪唱で聞いているくらい訳が分からない。に、2分半の辛抱だ。


「カウントダウン!発動まであと120秒!各隊60秒で各自退避!我が隊は110秒で退避!」

 シャルロッテが全体に極大魔導の発動タイミングを伝える。


 魔導隊としてはここが正念場だ。俺の詠唱終了まで持ちこたえなければ意味がない。

 残り90秒。隊の前の方で、30秒以内グループたちが、敵弓兵の攻撃に少しずつ押されている。結構相手強いんだな。

 残り60秒。30秒グループたちが持ちこたえられなくなっている。やばい?もしかして。他の隊は退避を開始したようだ。

 残り30秒。1分グループが最後の押さえの魔法を発動している。

 残り20秒。色々と不安になってきた。

 残り10秒。

「総員、退避!」


 シャルロッテが叫ぶ。一斉に俺の前から人がいなくなり、津波のような人の波が後ろに引いていく。それに呼応するように、敵部隊がこちらに向かってくる。ちょっとしたホラーだな……ものすごい悪意を感じるよ。でも、ぎりぎりで発動して大逆転!って展開はドラマチックで捨てがたい。

 3・2・1……。『アルティミットバースト・フレア・地獄風味のFOOLオリジナルソース和え・多少の隕石を添えて』!

 とアレな名前の魔導を発動する俺。結構恥ずかしい。すると、前方5m位から、ものすごい量の炎が10mほどの壁を作って湧き出た。その炎はそのまま、横に広がり奥に広がり、戦場全体を覆いつくさんと燃え盛る。敵兵は次々と炎に追いつかれ巻かれていく。発動から5秒後、俺の頭の上を何かが通り過ぎた。角度が薄かったためか頭上の近い位置を通っているようにみえるが、これが『多少の隕石』のようだ。


『多少』……? 無数の隕石が炎の中に突っ込み、敵をつぶして着地する。ぼこぼこと地面に穴をあけているようだ。多少というより過剰だろ。誇大広告ならぬ過少広告とは、珍しいものを見た。


 んー。これはものすごい環境破壊だな。地球上では絶対使えない。こんなもの使えたら恐竜さんたちが滅んだ道をなぞる以外にないだろ……。いや、現実で使えるわけないからな、心配する意味はまったくないわけだが。


 発動から約1分。ようやく炎の乱舞は終わる。


「やったぞ!我々の勝利だ!」

 後ろからシャルロッテの声が聞こえる。うん。そうだろうね。目の前に何もなくなっちゃったからさ……。恐るべし神級魔導。ほんとに殲滅だよ、これ。シューティングゲームとかなら「CLEAR!」ってファンファーレがなるよね、間違いなく。


 という訳で、先に退避した各隊の待つ帝国軍の所に向かう魔導士部隊。

 他の部隊は、先に戻っており、俺たち(正確には俺か?)の凱旋を歓呼の叫びで迎える。


次回7/12投稿予定です。


残り2話で、この第一話は終わります。

この長さだったら、一回で全部やってしまうほうがいいのでしょうか……。

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