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FANTASY OF OWN LIFE  作者: 矢吹さやか
3/24

#003

 気がついたら、大勢の人が集まる広場のようなところに来ていた。

 ほう、これが最新の仮想世界か。何だかものすごくリアル。

 頬に受ける風を感じるし、何だか街の匂いまでする。

 どんなエンジン積んでんだろ。さすがNASAとかMITの手が入ってると噂されるだけはあるな!


「諸君、注目してくれ!」


 広場の中央では、見るからに偉そうな感じのするおっさんが、高い所から俺達を見下ろしながら演説を始めるところだった。


「諸君、よくぞ集まってくれた。今、まさに今この時、我がロンバルディア帝国は未曾有の危機に晒されている。長年の仇敵である、アマダルガス王国が、我が帝国を滅ぼさんと、30万もの群勢を従えここまで行軍している。」


 ゲーム開始後の大事件ってあるあるだな。まぁ、だいたいコテンパン……死語だな、これ……にされて、一度滅ぼされるか、占領されるかしたところで、主人公が色々な理由で立ち上がって旅に出るってとこだよな。


「おい、聡。何か壮大な物語のスタートって感じだが、こんなんで何時間かかるんだ?」

 隣にログインしている聡に聞いてみた。聡は全身鎧で、槍を持っている。流石竜騎士、格好はすげーな。

「ん?そんなにかかんないぞ。基本的には殲滅戦だ。大仰におっさんが話しているが、前回もそうだったしな。」

 何だ?帝国とやら、そんなに攻め込まれるのか?いや、そういう設定で繰り返しているだけだろう。日常に放り込まれても退屈で終わるからな……。体験するんなら、いきなり最終回的な感じの方がいいんだろうな。

「で、ここに集まってる俺達が、その敵国勢力を叩き潰すということだ。その時の色んな要素で得点化されるらしい。時間とかあんじゃないかな。」

 とりあえずストーリーは無視の方向で。


「今回の戦いが、帝国全土の民の将来を担うことになる。被害を最小限に押さえ、生き残り、かつ王国に我が帝国の強さを思い知らせるのだ!」

 おっさんはまだ暑苦しく演説していたが、そろそろ終わりのようだ。


「各員の奮闘に期待する。ハイル、ロンバルディア!」

「「「「「ハイル、ロンバルディア!」」」」」


 何か帝国っぽいぞ。ちょっと楽しいかも、こういうノリ。


「さ、俺たちも行くぜ!巧、暴れてこいよ!別に死ぬこたぁねぇんだからさ!」

 聡が竜騎士部隊が集まるところに駆け出して行った。


 魔導士の俺は、同じく魔導士らしき集団のところに行ってみることにした。

 そこでは、さっきのおっさんと同じく、少し高い所から俺達を見下ろすヤツがいた。今度は女性だ。


「聞け!先ほどマーシャル将軍がお話になった通り、我々は持てる最大戦力をこの戦いに投じている。この魔導士部隊も、もちろん全力で戦うことを期待する。今から隊列を組むので、各々の最大魔法順に並べ。」


 女性魔導士の掛け声で、バラバラと動き出す魔導士達。さて、俺はどこなのかな。

 脳内でメニューを開き、使える魔法を見てみる。

 ファイヤーアロー(2秒)

 アイスアロー(2秒)

 ウィンドカッター(3秒)

 ……

 と並ぶ。どうやら後ろの時間は、発動までの詠唱時間らしい。長い方が強そうな名前がついている。班分けは、詠唱時間が5秒以内、10秒以内、20秒以内、30秒以内、1分以内で分けられていっている。


 俺は長いメニューを(どんだけ覚えてんだよ!このキャラ!使いこなせないだろうがっ!)めくり、漸く最後の項目にたどり着き、目を剥いた。いや、バーチャルなんでそこまでの表情変化はないだろうがな。


「そこの貴様、早く自分の持ち場に行かんか。」

 軽くフリーズしていると、女性魔導士が近づいてきて声をかけてきた。いや、バーチャルなんだけど、ホントリアルだな。つか、無茶苦茶美人じゃん!後で連絡先を……、って聞いてどうすんだ?(笑)


「すみません。そこに入っていいものなのか、わからなくて……。」

「どういうことだ。最大魔法が何か分からない愚か者なのか?」

 いや、愚か者はあっち(竜騎士隊)に行きましたし。

「いや、俺の持ってる最大魔法は詠唱時間が5分なんだ。1分グループでいいのか、気になって。」

「な、ご、5分だ……と!貴様、いえ、貴方様はもしかして大賢者様ですか?」

 何か急に言葉遣いが変わった。これが世に言う手のひらクルーなのか?周囲からも、ざわざわとした空気が流れている。5分の詠唱時間魔法は珍しいのか?

「いや、そんなたいそうなものではないのだがな。」

「何をおっしゃるのですか。5分などという詠唱を用いる魔法なんて、お伽話の中位でしか、聞いたことがありません。1分でも戦術級なのです。5分なんて、ま、まさか、神級?」

「よくわからないですがねー。5分なんて長いだけで、使えないようなきがしませんか?あ、何か『大魔導秘伝書』ってのを使ったら半分の時間で行けるようですね。」

「ひっ、だ、大魔導ひ、秘伝書までお持ちなのですか?」

「あ、うん。持ってるようですな。」


 女性魔導士は暫く目を見張って(ホントにVRなのか?何か表情豊かだな。)、目の前に跪き、漸く言葉を発した。


「貴方様がおいでなのでしたら、既に勝敗は決しているようなものです。神級魔導は広範囲殲滅魔法と伝えられます。30万程度の群勢なら、ほぼ瞬殺できるかと思います。」


 ほう、そんなに凄いのか。でも2分半は長いよな。


「全軍に伝え、貴方様の魔導発動までの時間を稼ぎ、一気にこの戦いに決着を付けようと思います。貴方様は我が隊の最後方にて、こちらの合図でご準備をお願いします。申しくれましたが、私はこの隊を任されましたシャルロッテ・フォン・ブラウンと申します。シャルロッテと御呼びください。」


 女性魔導士は貴族令嬢だったようだ。そりゃ綺麗だよね。ゲームで貴族令嬢が美人じゃなかったら炎上するわ。にしても、その後、なんか扱いがそれこそ神級になったかのようだ。人垣でリアル十戒とか、生まれて初めて見たわ。いや、ゲームなんだけどさ。


 どうやら、全軍に対して伝令が飛んでいるようだ。さっきから飛龍が頭上を行き交っている。


「大賢者様の詠唱が終わるまでは、こちらに敵を近づけるな!」


 流石に2分半位なら問題ないんじゃないかな。でも、どのタイミングで始めたらいいのだろうか。

 その辺りをシャルロッテに聞くと、


「詠唱が終わった魔導は程なく放出されます。有効射程距離もありますので、その位置まで進軍してから詠唱を始めてください。残り10秒になったら全軍引きます」


 こちとら初めてなんで、タイミングがわからないが、キュー出ししてくれるなら問題ないだろう。

 空からの攻撃は聡達竜騎士隊が、地上の先兵は弓兵隊が、それらの撃ち漏らしを戦士とモンクが、中程から後方への攻撃は、召喚士がそれぞれ行うようだ。いや、そこまでやったらただの蹂躙でないのか?

 魔導隊は俺のサポートに回ることになった。そりゃ、神級魔導があるんならそっちの方をメインにしたらいいよな。


 何か全てが俺のために組まれてる作戦って、萌える……、いや、燃えるな!世界の中心でオレが叫ぶぜ!って感じ。やってやるぜっ!


次回は7/11投稿します。


奇特にも本作をお読みいただいた皆様、ご感想等よろしくお願いいたします。

誤字脱字等もご報告いただけますと幸いです。

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