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FANTASY OF OWN LIFE  作者: 矢吹さやか
23/24

#023

第四話 佳境です。

 ちょうど路地あたりに隙間ができていて、何体かのゾンビが歩いてきた。だいたい10体くらいか?

 マシンガンを構え、安全装置を外して、連射する。この辺りはキャラが勝手に動く。


 お、意外に反動が大きい。リアルだな。実射はしたことないけれど。ゲームセンターの感触とは全然違うわ、これ。すげー。

 胴体を中心に何発かずつ当たり、ゾンビは倒れる。手が吹き飛んだり足がちぎれたりしている個体もある。ホントにリアルだ。

 しかし、ゆっくり起き上がって、再びこちらに来る。


 この辺りもリアルだな。やっぱり頭を飛ばさないとダメか。

 狙いを少し上にして、再び連射。

 ほどなく、すべてのゾンビが倒れた。


 よし、やれる。爽快感はゲームセンター以上だ。

 ゲームと違う迫力、感触に俺は虜になりそうだ。というよりも、ゲームセンターのゲームじゃ物足りないだろう。

 ここが、連日連夜長蛇の列になるのがわかったような気がする。これは反則だ。ゲーム業界の危機と言ってもいいかもしれない。


 『FOOL』が量産されたら、既存のゲームセンターは駆逐されるだろう。

 もしかすると家庭用ゲーム機市場も大きな転換を迫られるだろう。


 そうなったら、逆に色々な需要が出るし、俺の仕事もまた潤うだろう。来週会社に行ったら、早速報告しておこう。今から『FOOL』と販売独占契約をしておくのだ。


 おっと、そんな現実的な話をしている場合じゃない。まだまだゾンビは多い。10体くらいじゃ話にならないな。


 スカウターを表示すると、赤の範囲は少し小さくなったかな、という程度であまり大きな変化は見られない。まだ作戦は始まったばかりなのだ。


 ふと、一つの緑のグループに目が行く。光点が4つに減っている。誰かやられたのか。

 比較的ここから近いところだし、援護に行くか。

 少し走って光点を追う。

 幸いあれから光点は減っていないので、被害は最小限に食い止められているようだ。


「大丈夫か!」

 場所にたどり着いて、4名の兵士を見て叫んだ。

「は、ヨージ様。一人やられてしまいましたが、大丈夫です!」

 と言って、班長らしきものは敬礼した。少し休息をとっていたようだ。


「命はかけていても粗末にするものではないからな。無理はするな。援護が必要な時は呼べ。」

「はっ!ありがたきお言葉です!」

「では俺は別の所の支援に行く。ここは頼んだぞ!」


 と言い捨てて、俺は再び移動する。

 スカウターで再度状況確認をする。他にも人数が欠けてているところが出始めている。

 まずい。全体的に押されている。

 俺は無線で指示を出す。


「人数が欠けたところは合流して、合同班を作成。生存者の救出を急げ!」

『了解。合同班の作成を指示します。』

 マミヤの声が聞こえた。


 いくつかの青い光点が、最初にいた集会場辺りに現れてきている。無事保護した生存者だ。

 全体のマップで確認すると、だいたい全体の2割くらい、と言ったところか。


 しかし、緑光点が欠けた付近の青光点が赤に変わっていく。

 ゾンビに喰われて、ゾンビ化してしまった生存者だ。

 そこまでのスピードではないが、着実に広がっている。まずい状況だ。


 ゲームセンターのゲームはとにかく目の前に現れる、ゾンビやらゾンビ犬やらをなぎ倒せばいいが、今は生存者の確保も一つの要素になっている。

 このままではゲームオーバーになりかねない。


 先ほどの指示で緑光点が集まって、新たな集団をつくっている。


 全部で6班。4つの班がなくなった計算だ。

 当然カバーできる範囲も狭くなる。


 しかし、ここはある意味自分の見せ場であるな。

 このリアルな感触を思いっきり満喫するシーンだと思うのだ。

 ヨージ無双ってやつかな。ちょっと滾るね。


 集団がなくなったエリアに向けて疾走する。

 この辺りはゲーム感覚でサクサク動ける。実体の神野洋二はそこまで体力はない。

 途中はぐれゾンビに出会うが、ヘッドショットで切り抜ける。

 何体か相手をしていたら、弾切れになった。


 弾倉を取り替えて、走り続ける。青い光点が比較的多く存在するエリアに入る。

 人数が固まっているところを優先で回ることにした。多くの人を助けるには多少の犠牲も要るだろう。

 相手が美女なら一人でも助けに行くが、色だけではそれはわからない。


『今、邪なこと考えてたでしょ。ヨージ。』


 いきなり耳元にマミヤの声が響いた。な、なんでわかるんだ、コイツ。エスパーか?


「い、いや、そんなことはない。それよりも副官に6集団のカバーを頼むと伝えてくれ。俺は孤立している生存者の救出に向かう。」

『そう言う事にしておきますね。後でみっちり話を聞かせてもらいますからっ!副官への伝言、了解しました。』


 だんだん怖くなっていくよ、マミヤ……。戦場の中に綺麗な花があったらつい見ちゃうだろう?


 改めて確認すると、右に5地点8名、左に4地点12名の生存光点が見える。

 左に進路を取り、一番多い4名の光点に近づく。


「大丈夫か?助けに来たぞ!」

 と入ったところは、ある一軒の家。

 中には、家族と思われる人たちが身を寄せ合っていた。固まっているくらいならとっとと動けばいいものだが、本当の恐怖状態のときは簡単に体を動かすことができない。

 彼らには、どこからゾンビが出るのかわからないのだから仕方がない。そういう時は身を寄せ合う生き物なのだ、人間は……というか、あまりのリアルさに忘れていたけれど、ここって仮想世界だよね。

 兵士がプレイヤーなのはいいとして、他の生存者はNPCじゃないのかな。ここもやたらリアルだ。無駄に金かけてるよね、このシステム。


「あ、ありがとうございます。」

 と父親らしき50絡みのおっさんが礼を言ってきた。

 後は母親と娘、息子だ。

 母親はストライクゾーンを大きく外れているが、娘の方は17・8といったところか。ぎりぎりセーフだな。って、またマミヤにどやされちまうし、俺には舞美がいる。まだ付き合ってもいないけれど、ほぼそこは既定路線になる確信がある。他の女の子に目移りしている場合ではない。

 モニターされていて、見られて誤解されたら目も当てられない。


「さ、早く移動するぞ。」

 と、家族を集会場の方向に誘導する。

 少しビビっていたけれど、何とか動いてくれた。


 さて、後16名だな。

 次の場所は、ほどなく見つかった。

 とある商店の中で、店主と思しきおっさん(またおっさんか)と、売り子さんと思われる女性(これまた綺麗どころだな。仮想世界ってのは美女の集まりなのかいな)を見つけた。こちらはさすがに身を寄せ合ってという感じではなかったが、カウンターの裏に隠れていた。


 先ほどの家族と同じく、集会場の方向に誘導する。

 少し腰が抜けているおっさんを、女性が何とか支えて移動を始める。


 改めて、スカウターで状況確認する。全体の状況は膠着状態のようだ。班の再編が上手く機能したようでよかった。こちらの生存者も数が変わらない。しかし、赤い光点の範囲が徐々に広がっている。


 次の光点はうまく隠れているのか、赤い光点に周囲を囲まれてしまっている。これでは身動きが取れない。


 さて、無双タイムにしますか。

 弾倉を確認し、マシンガンを構えながら、目的の場所に行く。

 果たして、多くのゾンビが建物を取り囲んでいる状態だ。


 ゲームや映画でも不思議に思うのだが、彼らはどうやって獲物(人間)を探しているのだろうか。

 ゾンビは死体だから、脳は活動していないだろうし、五感が正しく機能しているかも怪しい。

 なのに、確実に人間に襲い掛かるし、隠れていても場所を特定してくる。どういう設定なのかね……。人間が出す特殊な脳波とか、フェロモンみたいなものに惹かれるのか?

 もちろんそんなことを考えても意味がない。ゲームなんだから、ゾンビは的確に襲ってくる設定になっているだけだ。


 とりあえず雄たけびを上げながら、マシンガンを乱射して突っ込む。

 その建物は3階建てで、屋上に2名の女性がいた。何とか扉を封鎖して凌いでいるようだ。

 俺は彼女たちに声をかけた。


「今から下のゾンビを掃討するから、俺の合図で降りて来い!」

「は、はい!ありがとうございます!」

 

 涙声で礼を言う二人。本当にリアルだな。くどいけれど。いや口説きたくなるくらいいい女だな。

 え?親父ギャグは要らないって?うん。わかってる。


『くだらないこと考えていないで、早く救出してください。』

 またマミヤが突っ込んできた。本当にエスパーじゃないのか、コイツ。

『後でみっちり聞くことがどんどん増えてますから、覚悟してくださいね。』


 こ、怖いです、マミヤ様。

 ゾンビのほうが可愛く思えますよ。

 それにしてもこのヨージというキャラ。思いっきり尻に敷かれてるな……。


『何か言いましたか?ヨージ』

「いや、な、なんでもな……いえ、なんでもありません。」


 思わず言い直してしまったじゃないか。


 気を取り直して、掃討を開始。取り囲んでいたゾンビが50体はいたので、マシンガンの弾倉が2つなくなったが、何とか終わった。

 屋上の女性たちが恐る恐る降りてきたので、先ほどと同じく集会場への誘導をする。

 何度もお礼を述べて、彼女たちは走って行った。もちろんメモをそっと渡されるようなことはなかった。残念。


次回第四話最終話です。明日更新予定です。


臨場感って難しい。って難しいばかり言ってます。

まだまだ勉強です!皆さんのご意見もいただけると嬉しいです。


もう1作品あります。そちらもよろしくお願いいたします。


『異世界訪問は突然に』

http://ncode.syosetu.com/n0848dk/

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