第二話
部長にプレッシャーという名の復讐を受けて、俺はその日非常に不機嫌だった。
放課後はまっすぐ家に帰らず、俺はいつもはサボる図書委員の仕事をするべく図書室にいた。
どうして今日に限って図書委員の仕事をしたくなったのかは俺自身も分かっていなかったが。
「ま、いつも通りなんとなくなんだよな〜」
なんとなく、直感で。俺は14年間の人生においてこの方法で間違ったことが無かった。
早めに小説を書いておくか、と仕事が一段落してから俺は原稿用紙を取り出した。
・・・どれくらいの時間が経ったか、2・3本の鉛筆がおしゃかになり、引き裂かれた原稿が机の上に散らばった以外、何も変わっていなかった。
「駄目だな、今日はもうむりってことで〜」
俺は奥の本棚のところに行き、「残酷歴史物語」というアレなタイトルの、しかもジャンルがノンフィクションの本を取り出そうとして・・・・
見慣れない、黒いパンフレットを見つけた。
「・・・あん?なんじゃこりゃ?」
いくら仕事をさぼっているとはいえ、一応自分は図書委員である。見たこと無い本なんて珍しい・・・というよりありえないはずだが・・・と思いつつ伸ばした手を方向転換。それを手に取り机に戻る。
「やべ、こんな時間かよ。」
俺は黒い冊子と原稿用紙をバックに入れ戸締りを済ませると、足早に下駄箱へと向かった。
帰り道、俺はずっと不可解な黒い冊子のことを考えていた。
帰宅後、俺はベットに転がりながら、図書室から持ってきた黒い冊子を眺めていた。
「何だろね、これ・・・」
俺は気になったが、開くのをためらっていた。
直感が「面倒なことになる」と告げているのだ。
しかし今回ばかりは好奇心が打ち勝って、直感を拒否。
一気に、それを開いた。
「英雄に・・・なろう?」
その一ページ目には黒をバックに「英雄になろう!」と大きく金色で書かれていた。
「代わり映えのしない日常から抜け出したい、ファンタジーに生きてみたい、私の才能はこの世界に留まらない、そんなあなたに勧めたい『英雄ツアー』!あなたの才能を生かして異世界でミッションをクリアし、あなたも英雄になろう〜!・・・・・か」
くだらない、くだらないが、これは小説のネタに使えるな。このツアーに参加した主人公が、自分の才能を開花させていく。これはいける!
俺は原稿用紙をバックから出そうと冊子を机に置こうとするが・・・
「む・・・これは・・・!」
まるで瞬間接着剤で固められたように、冊子から手を離すことができなかった。
そして、俺の腕は自分の意思に反して次のページをめくった。
次のページには何も書かれていなかった。ただ黒いページが俺の方に向いているだけである。
俺の腕はそのまま誰かに操られているようにその黒いページに触れた。
「っ・・・!」
声にならない悲鳴、俺は腕から一瞬にしてその冊子に飲み込まれた。
意識を失う直前、俺は「やっぱり、開けなかった方が良かったな」と直感に従わなかったことを反省していた。