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フェアリーテイル・トレック  作者: 片桐奈海
第1章 ここはどこですか?
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3


 だってそうでしょ?

 見たこともない生き物に襲われかけて、何故か手にはナイフ持ってて、突然イケメン現れてモンスター倒して、何故かそのイケメンに今は殺されるかもしれない。

 そんな状況、夢かアニメかマンガかゲームの中でくらいしか起きないに決まっている。

 だからきっとこれはイケメンに殺される夢。

 夢占い的にはどんな意味合いがあるのだろう?

 もし起きた後に夢の内容を覚えていたらググろう、よし、そうしよう。

 さぁ、さっさと殺して夢から覚めさせて下さい、イケメンさん。


 そう、覚悟を決めた花梨とは対照に金髪イケメンのクラウスはレッドをたしなめる。

「どうしたんだ、レッド。突然殺気なんて放って。女の子が怯えているじゃないか」


 やっぱり想像通りの王子様系なキャラだ、と思った花梨。

 もう一人はきっとオレ様キャラ。


「見たことない服だしボワを知らないところを見ると、ただの村娘じゃない。もしかしたら新手のモンスターかもしれん」

 レッドはボワと呼ばれる下級モンスターを顎で指し、

「しかも、オレが来たときにはボワはすでに傷を負っていた。ただの村娘には無理な芸当だろう。警戒するに越したことはない」

 話を聞くに、どうやら普通の娘っこにはモンスターを倒すことは困難なようだ。

 確かに偶然とはいえ何故か持っていたナイフでかすり傷くらいのもんを付けるに至ったわけだが、そのことがこのイケメンの疑いを強くしたということだろうか。

 そう考えとりあえず自分が無害であるということを証明しなければならないらしい、と判断した花梨は手に持っていたダガーナイフを地面に落として両手を上にあげた。降伏のポーズである。


「わたしはあやしいものではありません。どうかたすけてください。ごしょうですからいのちはおたすけください」

 完全なる棒読み。

 この場面で思いっきり感情込めて泣きながら足元にすがりついて命乞い、というのはさすがになにかが違うだろうと花梨は思い直し、結果表面的な命乞い。


「おまえ、それふざけてるのか?」

 その態度はレッドを苛つかせるのに充分で、右目の下をピクピクさせている。額には軽い青筋すら浮かんでいた。すぐさま本格的に腰の鞘から武器を取り出し、右手で威嚇するように大ぶりなナイフの先を花梨に向けたレッド。

「おいっ!」

 大慌てでそれを止めようと、王子様系イケメンのクラウスはレッドを後ろから羽交い締めにするようにつかみかかった。


「……あぁ、わたしってば腐属性ないから萌えないんだよね、そーゆーの……」

 花梨は、目の前のイケメン2人の光景を見ながらボソッと小声でつぶやいた。

 そんな花梨を尻目に2人はゴタゴタと一悶着中である。

 どこか他人事のように感じている花梨だが、事の原因は花梨の存在そのもの。


「あのぉ…、ちょっといいですか?」

 意を決した花梨は2人に話しかける。

 ゴタゴタしていた2人は同時に花梨に顔を向ける。


 ……うっ…。イケメンに見られるの初めてだから、ちょっち緊張……。


 イケメンに怯む花梨は、痛い視線に負けないように2人を見据え、

「わたしの名前は月見里花梨やまなし かりん。目が覚めたら突然ここにいて、いつのまにやらあなた達が現れて、何が何やらまったく分からないまま今に至るわけですが、とりあえず今の所わたしの危険レベルは相当低いのでその武器しまってもらえます?」

 相手の事を知るためにはまず自己紹介。ついでに平和的解決の為の非武装依頼を組み込む。

 もちろん攻撃意志のないことをアピールするためにホールドアップは継続している。


 目を逸らさずに真剣な表情の花梨。それを値踏みするように見るレッドとクラウス。


「……カリンって言ったな。どこから来た?この国ではなさそうだが」

 しばらく考えて話を聞く気になったレッドは、後ろで羽交い締めを続けるクラウスを離せと言わんばかりにふりほどきながらも、まだ武器をしまう様子は見せない。

 くの字型の大ぶりのナイフは切っ先を輝かせている。グルカナイフに形状は酷似しているようだがグルカナイフにしてはサイズが大きめである。

 花梨は自身に向けられた刃物の刃先をチラリと見てからレッドの瞳に視線を戻し、

「日本の東京からきた。というか、どうやってここに来たか分からない」

 嘘偽りのない真実である。

「ニホン?トーキョー?……どこだ、それは」


 花梨は冷静な状況判断に努めた。

 言葉が通じているからには海外ではなさそうだが、しかし目の前にいる男の見た目は日本人離れしている。

 また、日本語で話しているのにも関わらずニホンという言葉を知らない、という事実。

 そして、目の前にいる2人の男はどこかで見たことがあり、聞き覚えのある声であるということ。

 ……そう、何年も前にプレイしたゲームの中で。

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