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フェアリーテイル・トレック  作者: 片桐奈海
第2章 恋と魔術とレベル上げ
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 花梨は『ラグーンクエスト』のヘビーユーザーであったが、《フェアリーテイル》なんて言葉は聞いたことが無かった。ゲームのヒロインはこの世界の住人であったし、そもそも異世界トリップしたキャラクターなんてモブにもいなかった。ドイルにしても名前だけは出てきていたが、ゲームでは姿を出すことは無かった。

 もちろんゲーム製作者の裏設定としてはあったのかもしれないが、設定集にも書かれていない以上はいちプレーヤーの花梨に知る術はない。あくまでも花梨はゲームで描かれた一側面しか見ていないのだから仕方がない。

 それにゲーム内でヒロインがトラブルバスター見習いになる時は戦闘訓練のようなものではなく物語の流れの中に組み込まれたひとつで、どちらかといえばスキップ候補で流し読み程度のもの。必ずトラブルバスター見習いになると決まっていたからだ。

 もしかしたらストーリーが変化しているのかもしれない、と花梨は思い始めた。

 クラウスやレッドと離れ、城で魔術訓練なんてシナリオには無かったのだから。


 そうこう考えていると、ドイルから花梨に課題が出された。

「ここに水晶がある」

 そう言って差し出したのは卵サイズの球状の水晶。

「まずはこれに四大元素を宿してみるかの」

「なんか、そんな簡単そうに言われても…」

 不安げに花梨は水晶を見つめる。

「なに、簡単なことじゃ。この世界で魔力をある程度持っている子供が最初にやるのがこれじゃ。これで、相性のいい精霊も判断がつく」

 こんなの誰でもできる、と言わんばかりのドイルに内心ムッとしながらも花梨は黙ってドイルの話を聞く。

「とにかくやってみることじゃな。ホレ、水晶を持つんじゃ」

 そしてドイルは花梨の手のひらに水晶をそっとおいた。

 重さは卵サイズとはいえず、手のひらにややずっしりとくる水晶を大事に持つ花梨。

 無色透明のそれは手に吸い付くように収まりがよい。

「そうしたら願うんじゃ、四大精霊に。魔術は学術でもあるが、その前に持つ者の想いを具現化する力でもある。イメージが大事ってことじゃ」

「想いを…具現化……。イメージ……」

 そうつぶやきながら花梨は水晶を見つめ、頭の中にイメージを浮かべる。


 四大精霊ってことは、火・水・地・風だったはず。

 それをこの中に集まるようにイメージする。

 それぞれの属性の妖精が中に集まればいいのよ!


 花梨のイメージが具体的になるにつれ手の中の水晶が輝きはじめ、そしてゆっくりと色を持ち始めた。決して混ざることはないがそれぞれの色が濃く輝く。

 火の赤、水の青、地の黄、風の緑。

 すべてが均等に水晶の中を流れるように動いている様はとてもキレイで、花梨はそれに見とれる。まるで太陽の光を反射して雪が輝くダイヤモンドダストのように様々な色の光がダンスをするようだ。

 そして、それを見つめるドイルは驚きの中にもこうなると予想していたような表情でゆっくりと瞳を水晶から花梨に移した。

「簡単じゃろう?その水晶の中に集まったのが四大元素。すべての物質の元となる元素じゃ。それにしても、おぬしは本当に凄い魔力じゃなぁ…。こんなに強い輝きは初めて見たわい」

 これでいいの?と聞きたいような疑問顔の花梨だったが、ドイルの言葉に気を良くして口元がニヤニヤと歪んでしまう。

 自分が魔法を使える、ということもそうだが、人より凄いなんて言われ慣れてない花梨は照れるような嬉しいような何とも言えない気分になっていた。

 それに追い討ちをかけるように、

「しかもどの精霊とも相性がいいとは…。期待以上じゃ」

「それほどでも…ないですよ……」

 なんとか謙遜する花梨だが顔はニヤニヤのままだ。

 人より優れたところなんて何もないと思っていたのに思わぬ所で長所ができた。まぁ、履歴書には書けないけど。

 そんなことを花梨が考えていると、

「こうなったら、さっそく実戦じゃ!ついてこい」



 ついていった先は、先ほどゴーレムと戦った中庭。

 そして再び目の前にはゴーレム。

 先ほどと違うのは、襲ってこないということ。

 ゴーレムを作ったドイルは、魔力を使って倒せ、と花梨に言った。

「でも、何も持ってませんよ?杖とか、なんかそういうの無いんですか?」

 戸惑う花梨はあたふたとドイルに尋ねた。

 魔法を使う時は大概、魔力の媒体になるようなものが必要なはずである。杖やアミュレットなどの宝石とか、ゲームやマンガではそういったものを持っていたのに、と花梨は思う。

 そう言われたドイルは少し考えてから「ちょっと待っておれ」と言いながらどこかに行ったかと思うと、手に銃のような物を持って戻ってきた。そして、それを花梨に手渡す。

「ちょうど良い。トラブルバスターとしておぬしの適性に合う武器の訓練もしようかの。それは魔銃じゃ。魔力を弾丸に込めて撃ち込む武器じゃ。魔力のありあまるおぬしにはもってこいの武器じゃな」


 そして花梨は当初の予定通り、魔銃を武器とすることになった。


花梨の願い通り、魔銃を使えることになりました。

ガンナーっていいですよね。個人的に好きです。

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