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フェアリーテイル・トレック  作者: 片桐奈海
第2章 恋と魔術とレベル上げ
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 おぬしは人よりも凄い魔力を持っている、と花梨の目の前のドイルと呼ばれる人は言った。

 このドイルという老人、有名なSF映画の緑のキャラに似ているな、と見た瞬間に思った花梨だが、言っていることも似ているではないか。

 フォースを感じろ、的な。

 そう思う花梨は、あまりドイルの話にピンときていなかった。

 もちろん魔力があるなんて思ってもいないし、あったとしても使ったことがない。そもそも現代の地球上で魔力なんて都市伝説でもいいくらいの、あるかどうか眉唾な存在である。

 あくまでもゲームやマンガなどの中に存在する一つの力であるという認識が普通だろう。


 だが、花梨はふと気付く。

 ここはゲームの世界だということを。


 そう考えるならば、今の自分に魔力があったとしても不思議なことではないのではないか。と花梨は思った。

 力を解放する、とは言ったものの実際どうすればいいものかとドイルの発言を待つ花梨。

「では、しばらくおぬしの身を預かろう。レッド、クラウス、おぬし達は帰れ」

『えっ?』

 花梨、レッド、クラウスの声が揃う。

 声が揃ったことに驚いた花梨は2人を見るが、2人の視線はドイルに向いたままである。

「あたりまえじゃろう。あんな動きをしていればズブの素人と誰でも分かるわい。力の使い方を教えるのも時間かかかるのでな、しばらく泊まりがけで特訓というやつじゃな」

 ニコリと笑顔で言うドイルであるが、文句は言わせねぇぞ、と言わんばかりの雰囲気を醸し出している。花梨が分かるくらいなので、付き合いのある2人もすぐにそれには気付いた。

 ドイルに反抗したところで敵わないことは充分に理解していたため、余計なことは言えない2人。

 それ以上に花梨は何も言う資格は無く、事の成り行きを見守るしかなかった。

 ドイルは有無を言わせぬ物腰で、

「危険なことがまったく無いとは言わんが、少なくともおぬしらといるよりは安全じゃろうよ。安心せい、長くはかからんはずじゃ」

 そう言うと、乗っていたテーブルからスタッと音もなく降り部屋の出口に進む。

 出口まで進むとクルリと振り返り、

「何をしておる。早よう付いて来い」



 あれから数時間……。

 花梨は、思いのほかとんとん拍子に魔力を引き出したことに驚いていた。

 もっと苦労や困難があったり、精神と○の部屋的などこかで武者修行をさせられるものだとばかり思っていたが、額の何ヶ所かを木製の魔法の杖のような物の先で確認するように軽く突いただけだったからだ。

 おそらくツボ的なものだろう、と花梨は認識していた。それを突かれてから一瞬全身が熱くなった気がしたが、それは気のせいだったのかと思うくらい本当に一瞬でなくなった。

 それからすぐに、

「これで力は解放された」

 と、事も無げにドイルは言った。

 こんなに簡単なら2人を帰らせなくてもよかったのでは?と疑問に思ったが、他にも何かあるのだろうと黙ってドイルのいうことを聞く花梨。それに、解放されたところで使い方を知らないわけで、このままでは宝の持ち腐れにしかならない。

「さて、おぬし魔術は知っておるのか?」

「聞いたことはありますが……」

 ゲームではコマンドの中にあったから使ったことがあるしマンガやアニメで魔法を使うキャラクターがいたのを知っているが、きっとそれとは別物だろう。と花梨は判断して答える。

「ふむ……。やはり、おぬしは《フェアリーテイル》か」

「えっ?」

 ずいぶんファンタジーな言葉が聞こえてきた気がする。と耳を疑う花梨だったが、聞き間違いでは無い。

「突然この世界に現れた者のことじゃな」

 端的に花梨の現状を言い当てたドイルを花梨は目を見開いて見つめる。

 ドイルには異世界から来たことを話していない。

「たまにおるんじゃよ、この世界のことわりを何も知らない者がな。その者達は決まって別の世界から来たと言っておった。まるで御伽噺おとぎはなしのような話に、いつからかそういった者を総じて《フェアリーテイル》と呼ぶようになった。じゃが、おぬしのように魔力を持った者はおらんかったと聞く……」

 そこまで言うとドイルは考え込むように顎に手を当てて、

「ふむ、魔力を持った特別な《フェアリーテイル》か……。何やら嫌な予感がするが…、心配したところで何か起こるときは否応なしに事が運ぶものじゃ。荒立つ時は台風みたいに荒立つ」

 不穏なことを言うドイルに怖くなった花梨は、

「《フェアリーテイル》は不吉の象徴……とか?」

「いや、そんなことはない。ほとんどはこの世界に馴染んで生活していた、という話じゃ。じゃが、中には忽然と姿を消した者もおったそうじゃ。もといた場所に帰ったのじゃろう、と言われておる。しかしじゃな、おぬしは特別なようだ」

「特別…?」

 うむ、と言いながらドイルは花梨の前にあるテーブルにスタッとジャンプして乗った後あぐらをかくように腰掛けた。

「ワシが知っている最後の《フェアリーテイル》は50年前。それからしばらくはパッタリと姿を現しておらん。そして今、再び《フェアリーテイル》が現れた。しかも、強大な魔力まで持っておるんじゃ。特別と言わずに何と言う」

 そしてドイルは真剣な顔で、

「魔術はおぬし次第で善にも悪にもなる。その力を見誤るではないぞ」

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