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思い切り振り下ろしたレイピアは刃にまとった剣撃波とともにゴーレムの額に埋め込まれた赤い石にあたり、その石を砕いた。
剣に力を溜めることで衝撃波が生まれることを知っていた花梨は、剣撃だけでなく衝撃の波が加わることで攻撃範囲が広くなると仮定し、額周囲に当たれば赤い部分にも必ず攻撃が当たると考えた。
その推理通り、切っ先は赤い石にかすりもしていないがまとう衝撃波が石を砕いた。
力の源であった赤い石がなくなったゴーレムは瞬時に動かぬ泥の塊となり、そして砂に還った。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
着地してレイピアを杖代わりに立ち上がった花梨は、乱れた息を整えようと深呼吸をする。しかし普段しないような運動でなかなか息が整わない。現役の女子高生であるにも関わらず、日頃の運動不足のせいである。
「ハァ…ハァ…ジョギングくらい……しとくんだった…」
運動をしていなかった今までの自分に後悔しながら、疲労している花梨は崩れて砂の山となったゴーレムの成れの果てを見つめる。
「もし、万が一、また動きだしたら、もう、倒せない……」
絶対になってほしくない事を口に出し、花梨は後ろを振り返った。
何かが動いた音がしたからだ。
「花梨様」
そこには花梨を中庭まで案内したメイドが無表情で佇む姿があった。
「中へお戻り下さい。ドイル様がお待ちです」
えーっと、不合格なのかな?
メイドの淡々とした態度に、めでたいという雰囲気を感じ取れない花梨は最悪の結末を予想する。良くも悪くも、女性は悪い方に考えやすいものだ。
行きと同じようにメイドが先を進み、花梨はその後ろをただただついて行く。
着いた先は、得物を選べ、と言われてレイピアを選んだ場所。
そしてテーブルの上にあった武器が無くなり、そこにはレッドの師匠であるドイルが胡座をかいて鎮座している。
なんとも風格がある、と思いながら花梨はドイルに近づいた。
「あの……」
移動している間に呼吸も元に戻り話しにくさは無くなったが、悪い予感に先の言葉が出てこない。
「良い…瞳をしておったよ」
まごまごしている花梨ににこやかな笑みを向けながらドイルは話し始めた。
しかし、花梨はそれを遮るように、
「でもダメなんですよね?不合格なんでしょ?やっぱり時間的な問題ですか?それとも無駄な動きが多すぎました?もしかして体力ないから?それとも……モガッ」
早口にネガティブを垂れ流す花梨の口を誰かが後ろから塞ぐ。
チラとその人を見た花梨は目を丸くする。
「話は最後まで聞け、アホ」
レッドが花梨の口を塞ぎながら戒める。
その後ろからクラウスもクスクスと笑いながら姿を現した。
「んー!んー!」
口を塞がれた花梨は離せといわんばかりにジタバタと暴れるが、レッドは素知らぬ顔で花梨の口を塞ぎ続ける。
「離してやりなさい、レッド」
静かにドイルが言うと、イタズラを見咎められた子供のような顔をしたレッドは花梨の口を塞いでいた手をどけた。
「花梨、まずおぬしが気になっていることから答えよう。おぬしは見習いに合格じゃ」
「……ホントに?……やったぁーーー!」
合格の二文字を聞いた花梨はその場で飛び跳ねながら喜んだあと、その喜びを分かち合うべく並んで立っていたクラウスとレッドに飛び込むように抱きついた。
驚いた2人だが、間にいる花梨の喜びように釣られて2人も笑顔になる。
「じゃが、どうやらおぬしにはまだ覚醒していない力があるようじゃ」
ドイルは喜ぶ花梨に淡々と伝えた。
不穏な空気を感じた花梨は2人から離れ、再びドイルに向き直る。
「今のままでもある程度までは戦えるじゃろう。しかし、力を解放すれば更なる高みに行ける可能性を秘めておる。どうじゃ、力を解放してみんか?」
「ちからの……解放?」
花梨は戸惑いつつも好奇心が湧き上がるのを抑えられなかった。
どこかに底知れぬパワーがあるのだと思いワクワクする花梨。
わたしは他の人とは違う、特別だ。だなんて、まるで中二病だ。
それでも、力があるのなら試してみたくなるのが人の性よね。
「する!」