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フェアリーテイル・トレック  作者: 片桐奈海
第2章 恋と魔術とレベル上げ
15/28

7


「闘技場?」

 花梨は中庭と呼ばれていた場所へ案内され、その中央まで進む。

 想像していた中庭は庭師がいてキレイに手入れされたような絵に描いたようなものだったのに、花梨の周りに広がるのは砂と少しの緑とレンガの壁。広さはちょっとした学校の校庭くらいはある。

 そして花梨の後ろにある入り口が重い音とともに閉じる。

「なっ………!」

 出口が塞がれたと同時にゆっくりと別の入り口が上に開き始めたが暗くて何があるのか分からない。

 ドドドドっ、とゆっくり重い音が終わり、そしてそこに何かがいるのが見える。

「……うそ、…でしょ?」

 ザシュ、っと砂を引きずる音とともに何かは姿を現す。




「まずはこの中からお好きなものをお選び下さい」

 案内してくれた人とは別のメイドがテーブルの上を示しながら花梨に説明をはじめた。

「ここでは花梨様のバスターとしての適性を見させていただきます。こちらの中から得物を選んでいただきました後、ご案内させていただく中庭にて試験を行っていただきます。もし、試験を途中で棄権される場合は大声で、棄権します、とお叫び下さい」

 ここまで聞いた花梨は、謎解きゲームでもするのか、と判断した。

 テーブルに並ぶ武器は謎解きに必要なアイテムか何かだろう。

 そう思い、とりあえず細身の剣を選んだ。俗に言うレイピアというやつだ。他には柄の長いハンマー、鎖鎌のような形状のものが置いてある。

「では、中庭へご案内いたします」

 そしてメイドは花梨を連れて城の通路を進み、薄暗い道になったと思った先に外の明るさが目に入る。

「それではご健闘をお祈りしております。花梨様」

 そこでメイドは一礼をして去っていった。



 花梨の前に姿を現したのは異形の者、モンスターだ。

 ゲームで似たような姿を見たことがある花梨は、それがゴーレムだと分かった。

「試験ってのはコレを倒せってことか……」

 謎解きだと思っていた花梨は落胆する。

 謎解きならいざ知らず、戦闘を求められては合格の文字が遠のくこと受け合いである。

 相手は自動で動く泥人形であるゴーレム。花梨の前にいるゴーレムは大きさは2メートルほどで額部分に小さな赤いものが埋め込まれている。

 ゲーマーの勘で額の赤い部分が弱点だと分かるが、そこをどう攻めるかどうかが花梨にとっては問題である。

 ゴーレムを倒すなんてできるわけがない。でも、倒さなければ終われない。

 だが、花梨にはそんなジレンマに囚われている暇は与えられなかった。

 ゴーレムが花梨に向かってゆっくりと動き始めた。

 ズズズ、と重く引きずるように進むゴーレム。

「とりあえず動きは遅いんだから距離を取ろう」

 ジリジリと迫るゴーレムに背を向けて壁際まで走り、壁に背をつけるように再びゴーレムと向き合う。

「距離をとったはいいけど……どーしよぅ……」

 尻すぼみに泣きそうになる花梨。

 しかし、頭をフルフルと振って考えを改めた。

「怖がってちゃダメだ。考えないと!」

 その間にも徐々に近付くゴーレム。依然動きは鈍い。


 ゴーレムは自分からは動かないから、誰かがどこかで命令しているはず。

 操者本人かゴーレムか。

 どちらかを倒せば終わるはず。


 花梨は、近付くゴーレムに注意しながら冷静に辺りを見回した。

 高さ3メートルほどの壁の上には観覧スペースのようなものがある。花梨にはそこで何かが動くのが見えた。

「あれが操者だな。………でも距離がありすぎる…」

 緊張でレイピアを握りしめる花梨。手はじっとりと汗ばんでいる。

 ゴーレムは泥でできているため剣撃には強い。花梨の選択したレイピアで戦うとなれば、的確に額の赤い部分にある程度の力で攻撃をヒットさせる必要がある。

 距離をとって剣撃波を当てようとすればコントロールが必要になり、また威力が弱いため時間を要する。

 そして、ふと花梨は思う。

「もし力をこめるのが武器以外でもアレが出るとしたら、……跳べる?」

 花梨はその場で少し腰を落とし、足に力をこめるように集中する。その力を解放するように上に向かってつま先に力をこめ一気にジャンプする花梨。

 その結果、足の下がトランポリンだったのではないかと思うほどに花梨の身は高く跳んだのだった。味わったことのない浮遊感が花梨を襲う。

「うわっ!」

 跳んだ高さは2メートルほどだが、体感ではそれ以上だ。

 予想していたとはいえ、あまりのジャンプ力に身体がついていかずに着地のバランスが崩れるが、すんでのところで転ばないようにこらえた花梨は着地後のしゃがんだ状態て間近のゴーレムに視線を向けた。

 距離を詰めたゴーレムがゆっくりと腕を上げて今にも振り下ろさんばかりである。

 花梨はとっさにゴーレムの上げた腕とは逆の方向に回転レシーブの要領で飛び退けた。

「…ハァ…ハァ…あぶなかった」

 息が上がる花梨だが、予想通りに跳べることを確認し勝機を得た。


 花梨はすぐさま立ち上がり、ゴーレムに向かって走り始める。

 向かってくる標的にゴーレムは再び腕を振り上げて攻撃しようとするが、花梨はゴーレムの上げた腕の横を通り過ぎて振り返り、足に力をこめる。

 ゴーレムは緩慢な動きで標的の方を向く。

「いっけぇーーー!」

 ゴーレムの振り向きざまに合わせて花梨は高く跳び、ゴーレムの大きさよりも高く上がったところでレイピアを額部分に思い切り力をこめて振り下ろす。

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