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拙い文章にお付き合いいただけて感謝です。
当面の目標はロンバルディア城へ赴き、花梨のトラブルバスター見習い申請をすることになった。
カインだけが気まずそうな表情を浮かべていたが、花梨は気にしなかった。それよりも、ゲームの中では語られなかった見習い申請などという手間に内心げんなりしていたからだ。
まさか城に行って手続きが必要とは……。
それに何より、城まで行くとなれば今着ている制服をどうにかしなければならないだろう。
買うとなってもお金は日本円しか持ち合わせがない。たしかゲーム内では通貨単位が違っていたはず。
花梨は悶々と悩みまくっていた。
諸々そろえるにもお金が必要だが、住むところを用意してもらった上に服まで用立ててもらうには忍びなさすぎると考えているためだ。
かと言って、すぐにお金を稼げるとは思えない。
こうなったら彼らのお古あたりを借りるしかない、とそう考えていたのが分かったのだろう。クラウスは、
「服のことなら心配ないよ。僕たちの使っている装備屋があるから、そこで用意しよう」
気付かれた、とバツの悪い花梨だが正直に話すことにした。
「それもそうなんだけど、……お金がね、持ってないから……、その……」
結局はっきりとは言えない。
「金なら心配いらない。こう見えてもウチはそれなりに儲かってるんでね、あんたの服を揃えるくらい問題ない」
こともなげに言うレッドはシニカルに微笑んでいる。
「なんなら舞踏会用のドレスだって良いのを用意できるぜ。もちろん馬車付きでな」
「でもでもでも……」
それでもためらう花梨にクラウスは笑顔で答える。
「レッドの言うとおりだよ。タダで貰うのが嫌なら、……そうだな、事務所の掃除とかやってもらえるかな?それに、下で給仕をすれば給金が貰えるようにお願いしとくよ。そうすると、上で働いている僕たちとしても助かるしね」
優しそうに提案したクラウスに花梨は、
「…いいの?ホントに」
地獄に仏とはまさにこの事だ、と花梨は思う。
ゲーム通りの優しさに感動すら覚える花梨は、2人の申し出に甘えることにした。
この間のカインは黙ってそのやりとりを眺めていた。
カインとしてロンバルディア城に行くことを躊躇している彼は、どうしたものかと考えていた。
城に行けば自分が王子だと否応なしにバレてしまう。
そうなってしまえば、ただのカインというトラブルバスター見習いとしての自分は終わり、カインガルドというロンバルディア王国の第三王子としての自分しかいなくなる。
少しの間カインとして彼らに接触することをやめようか、花梨が見習いの申請をして戻ってくるまでのほんの少しの間。
花梨のことは気になるが、今バレるわけにはいかない。
トラブルバスターの見習い申請には王家の人間が関わるような手順はない。
城にいても姿を見られることはないだろう。
これまでも事務所に来ない日はあったし、不審に思われることはない。
「ゴメン!俺、一緒に申請について行けないや。明日は指定のモンスター討伐クエスト行かなきゃなんだよね。申し訳ない」
そう言って、顔の前て手のひらを合わせてゴメンナサイのポーズをするカイン。
これで共に城に行かなくてもよいだろう。少しだけ花梨が悲しそうな顔をした気がするが、気のせいだろう。
「それなら仕方ないね…」
少しだけ口を尖らせながらも惜しむような花梨の口ぶりに、カインの決意は揺さぶられる。
そんな残念そうな顔をされると、心苦しいじゃないか!
花梨の両頬をムニッとつまみながら、
「討伐が終わったらまた来るから、気をつけて行けよな。2人がいれば何の問題もないさ」
ニコッと笑って言うカイン。
触れる肌の暖かさに心を動かされそうになるが、ぐっとこらえる。
カインはまだここにいたいという気持ちを隠しながら、今日のところは城へ戻ることにした。
王子であることをこの人達にまだバレるわけにはいかない。
花梨がヒロインとして若干チート気味。メンズの心を鷲掴みです。