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フェアリーテイル・トレック  作者: 片桐奈海
第2章 恋と魔術とレベル上げ
10/28

2


 カインガルド・バルトロメウ・ロンバルディア。

 自称、ただのカイン。

 王位継承権第三位の彼は城を抜け出しては町に繰り出し、クラウス、レッドと共にモンスター討伐に出ている。

 最初は興味本位であったモンスター討伐であったが、国民の生活を直に感じ、思いを直に聞いて、徐々に国民のために力になろうと王家の人間としての責任を自覚するようになる。

 王家の人間らしく、ステータスはオールマイティーに高め。


 という感じのキャラクター設定だったな、と花梨は思う。


 メイン攻略キャラクターの最後の一人だ。

 攻略キャラクターということもあって、こちらもかなりのイケメン。

 クラウスやレッドと比べると少し若いが爽やかなイケメンである。

 まぁ王子様であることを知っている、とは言えない花梨なので黙って話を聞くことにする。

 他のキャラクターにしても色々と設定があるのは知っているが、何も知らないふりをつらぬいている。

 そもそも、花梨はこの世界が乙女ゲームであることを彼らには話していない。

 話さない方が彼らにはよいだろう、と花梨は判断したためだ。

 別の世界から来た、ということだけを話したが、嘘は言っていない。

 ただ、すべてを話さなかっただけ、である。


「彼女は依頼人じゃないんだ」

 はっきりと言った後、クラウスは少しの間何かを考えるように時間をあけた。

 しかしその後に、

「…………しばらくうちで見習いをすることになったんだ。カリン、よろしく」

 ニコリと、花梨に向かって右手を差し出す。

 握手を求められた花梨は戸惑ったが、

「……………………。分かった。見習い、やります」

 ここで放り出されてもどうすることもできない花梨はしぶしぶ了承する。そして、自分の右手をクラウスの右手に合わせしっかりと握手をする。

 きっとこの事務所にいたほうが、この世界から抜け出す方法を探れるかもしれない。

 そんな打算があるのも事実だ。

「マジ?じゃあ、俺の後輩ってことで、俺が面倒みればいいの?」

 と、嬉しそうに言うカイン。

 自分より下の雑用をさせられる相手ができてよろこんでいるのだろう。

 それをたしなめるようにレッドは、

「お前が雑用するのは変わんねーよ。残念だったな」

 と、いつもの片端の口角を上げる笑みを見せる。

 見習いになる理由は全く違うが、この流れはゲームのストーリー通りである。

 親の行方を探すためにモンスターを討伐しようと街を出たヒロインが行き倒れそうになった所を彼らに助けられる。話を聞いた彼らはヒロインの力になろうと事務所の見習いとしてヒロインを受け入れ、ヒロインと共にモンスター討伐をしていくことになる。

 かたや花梨も彼らに助けられ、そして事務所の見習いになった。

 結果としてそのポジションはゲームのヒロインと同じになってしまった。

 マズいかな、と思いつつも他に手はない花梨は流れに身を任せることしかできない。



 とりあえず、とばかりにまずはカインにも花梨の状況を説明し、証拠のミュージックプレイヤーを印籠よろしく起動して聴かせる。

「すっげーーーー!」

 驚きと喜びを同時に出すカイン。

 なかなかに可愛い反応である。

 ラグクエをプレイしていた当時は攻略キャラクターはどれもかっこいい年上のお兄さんであったが、今の花梨にとってはほぼ同年代だ。

 一番若いのがカインで19歳、次いでレッドが20歳、最後にクラウス21歳である。

 それなのに、まるでカインは弟のようだ、と花梨は思っていた。

 あの当時は追いつかない存在だと思っていた彼らが、今こうして目の前にいるという状況は信じられないことだが、それよりも歳が近くなってキャラクターの見方が変わったということも花梨にとっては新鮮だった。

 そんな自分に可笑しくなって、フッと笑ってしまった花梨。

 ほころんだ笑顔はこの世界に来てから初めてだ。

 それを見た3人は、三者三様の反応を見せる。


 いつもの片端の口角を上げる妖艶な笑みのレッド。

 ハッとしたように驚き、その笑顔を見つめるクラウス。

 好奇心に満ちた瞳を輝かせるカイン。


 無自覚でフラグを立ててしまった花梨は、それに気付かないまま笑顔をほころばせる。

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