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第二章(3)

 血に染まりし文殊堂の話はよく知られている伝説だ。実は言い伝えというほどの昔の話でもないらしい。今では薄れてしまった人々の記憶として、知人が近所のじいさんから聞いた話だ。今では面影もないが、どこかこの山に存在していたらしい。

 その文殊堂は中規模の祠であった。昔そこで痴情として逢引が行われていたが、情のもつれから女が男を殺害したらしい。まことしやかに囁かれた噂だ。

昔畳を開けたとき、畳の下には人の顔の写真が敷きつめられていた。それは殺された男の写真だったという。なぜそこにそんなものがあったのかはたぶん後世の噂の飛躍だろうが、写真があったということは事件が起きた時代がそれほど古くないことを物語っている。女は文殊堂で自殺したとも、気が狂って物乞いとして生きただの言われているが、事件自体があったという事実も伝聞で怪しく、あったとしても真相のほどはわからない。ただ、人の死体があったのは確からしく、それ以来、人は近づかなくなった。

そして、いつしか荒れ果て、野ざらしになり、それではよくないと地方の篤志家が取り壊し、新たに祠が作られた。それで今では文殊堂と言われているのに、お稲荷さんが祭られている。もっとも、それもいつしか荒れ果て、梵字の書かれた御幣が飾られ、何の人形か分からないものまで置いてある。

語った老人によると「皆口をつぐむのは誰かに話すと呪われると言われていたから」との話で、「自分も九十だしもういいかなというわけで話した」と。その老人は三年後に寝たきりになったが、それからさらに六年生きて、大往生した。



 報告書メール(二月某日、二日目)

 不法投棄については若干電化製品(テレビ、冷蔵庫、車のタイヤ等)が捨てられている。大量に捨てられた建築資材等は見当たらず、またその可能性は低いが、若干最近捨てられた思われる大型の冷蔵庫等があり、やはり捨てていく一般の個人は居ると思われる。それが蓄積していくと思われ、環境等には悪い。ただ午前中に捨てにくるとは考えにくく、巡回も午前中は避けて、午後から夜までにしておきたいので許可をください。



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