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第六章 プログレッション (増殖)   5

 ジェネの案内で、EPIの城を地下へと降りる。

 地上の光が届かない地下へは、懐中電灯片手に降りるしかない。暗く続くらせん階段。いったいどこまで続くのであろうか。


「ここまでよ。私がついて行けるのは。ここから先は一人で行くしかないわ」

 らせん階段の終段は、洞窟の入り口へとつながっていた。真っ暗な洞窟の先には何があるのか分からない。


「ここを通って、今まで生きて帰って来た人はいないわ」

 神のいる聖地へと入り口。聖域へと扉。ここが未来への掛け橋となるのか。


「よし。じゃ、俺一人で行く。すべては俺の播いた種だ。運がよければまた戻ってこれるさ」

 多くの人たちを犠牲にしてきた。そんな上で幸せを手に入れたとしても、それは本当の幸せではない。ただ平穏に、何もいらない、何も起きない。そんな幸せが欲しかっただけなのだ。


「ダメ。私もついてく。死ぬときも一緒よ」

 朱里の決意は固い。もう、離れるなど考えらない。一人で生きていくなんて無理だと訴える。


「それじゃ、意味がない。朱里はここに、この世界に残るんだ。そして俺がこの世界を救った事実を見届けて欲しい。もし、出来なかったときは、朱里が神に頼んでくれ」

 俺か、朱里かがやらなければならない。できれば俺が成し遂げたい。この世界の破滅と止めるという使命を。


「運よく帰ってこれたなら、その時こそ、本当に幸せになろう」

 俺は、朱里に力いっぱい抱きしめ、キスをした。ジェネとアデノの前だったが、恥を忘れて。これで最後かもしれない。そんな予感がそこにいた四人を包んでいた。


「分かったわ。もし、あなたが失敗したら、私が後を追います」

 朱里の顔を伝う涙は、彼女をより強く魅せていた。くしゃくしゃの顔とへの字に曲がった噛み締めた口元が忘れることが出来なっかった。


「愛してるよ、朱里」

 出会えてよかった。一緒に生きれてよかったと、心から感謝した。


「ここから、先は試練の門『グリア』があるわ。そこを抜けると、六野と呼ばれる空間へと道が繋がっているはずよ」

 ジェネには先が見える。俺が神の起こす天災を止めるかどうかも、ジェネであれば確認ができる。


「私も行くわ。この世に、未練なんてないから。ルイの手助けになるかもしれないし。それに、神にも会ってみたいし」

 突然口を挟んだのは、アデノだった。今まで興味本意でついてきただけとしか思っていなかったが、意外だった。アデノも俺と同じ、小さい頃に親に捨てられ、そして爺に育てられたのだ。殺し屋として。感情などというものは遠に忘れているであろう。神に会いたい気持ちも少なからず理解できた。


「助かるよ。じゃ、二人で行こう」

 俺とアデノの二人で、試練の門『グリア』へと向かった。もう後戻りはできない。朱里とジェネはその場で立ち尽くす。きっと戻る。そして、今度こそ幸せを手に入れる。相手が神であろうが、何であろうが、俺達の幸せの邪魔などはさせない。

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