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第六章 プログレッション (増殖)   3

 それからは、アデノも含め誰からも追われることのない生活が送れるはずだった。

 もう争いはない。真の平和が訪れるはずだった。

 やっと自由になれるはずだった。

 異人血を持つ俺でも、なんら変わらぬ生活を送り、生涯を幸せに全う出きる、はずだった。


 だが、現実は俺の、俺たちの予想するものとは違う方向へと動いていたのである。


「ちょっと環境の様子がおかしいわ。何かが起こっているのかもしれない」

 朱里の下へと入ってくる全国からの情報は、メディアなどで公表されているものとは異なる。つまり、機密事項なのであった。全て公表すれば、国中がパニックになるであろうと思われ、一部メディアの規制が行われていた。


 毎日飛び込んでくる新しいニュースは、どれも異常気象を告げるものばかりだ。

 まるで世紀末。この世の崩壊を示唆しているかのようでもある。

 だが、その事実に気がついているのはほんの一部の人間だけだった。

 

「いったい何が原因なの?」

 興奮気味に朱里は情報の精査をしていた。無理もない。今までの常識では考えられないほどの異常気象が各地で起こっているのだ。


「俺のせいなのかもしれない。四天王を倒したから、その影響なのかも」

 ジェネの予言だ。だが、それは誰にも話してはいない。朱里にさえも。せっかく手に入れた平穏を、無用な危惧で壊したくはなかったのだ。


「そんなはずはないわ。四天王の後釜の仕事は、インフェやサイモシンがしっかりとやってくれているもの」

 朱里は韻一族の実権を受け継いでいた。国家の中枢を支配する能力を持つ一族なのだ。


「だとしたら……。異人血を持つ俺が生きている影響なのかな」

 異人血を持つものはすぐに処刑される。それが世の常であった。だが俺は生き延びた。オンコジーンという奇跡のお陰で。


「隠れ異血人はたくさんいると聞くわ。だから、ルイ一人が生きていたって影響はないはずよ」

 朱里は励ますように反論する。異血人との恋愛は御法度。ましてや結婚など。世間からはどのように揶揄されているのであろう。それを乗り越え、彼女は強く生きている。


「もしかしたらオンコジーンの影響なのか」

 パーフォリンを吸収したオンコジーンは以前のものとは少し違う様相を呈していた。

 まるで、何かを呼び寄せているような鼓動が聞こえる。

 

「まさか。だってオンコジーンは奇跡を起こすものなのよ。破滅に向かうなんて方向が逆じゃない」

 確かに朱里の言うとおりだ。今まで俺たちはオンコジーンの奇跡によって生き延びていた。オンコジーンが無ければすぐに死んでしまっていただろう。永遠の命。不死の力。それが奇跡だと。

 俺は仙人の言っていた言葉を思い出していた。オンコジーンは変化を起こす三枚と、永遠の魂を呼ぶ三枚とが合わさって出来るのだと。

 変化と永遠。それらの行き着く先とはいったい。


 日に日に、環境異変は大きくなっていく。海水温の上昇に始まり、火山の噴火。突然の雹の嵐。竜巻の大発生。地震に津波、台風の連鎖。

 各地で死傷者が続出し、街も機能を失っていた。

 

「いったい、何がどうなっているというの!」

 朱里は焦り、限界に来ていた。原因もさっぱり分からず打つ手がないのだ。


「ジェネに聞いてみるしかない。この破滅を止める、何かいい方法があるかもしれない」


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