第五章 プロモーション (促進) 13
先ほど撃った自分の腹部の弾痕も大分癒え始めていた。並外れた治癒能力、これがオンコジーンの力なのだ。
痛みはまだあるが、戦いに集中できないほどではない。
「これで終わりにしよう」
そう言ってNKは黒いマントの下から拳銃を出した。黒く光るその拳銃は、異質な存在に見えた。
「望むところだ」
俺も『ナイン』を構える。残る弾丸はあと三発。これで最後だ。
ダン
まずはNKが攻撃してきた。弾丸の発射位置から軌道を推測して、寸前の所で交わした。
その弾丸は後ろにあった家の壁へと当たった。
弾丸が壁に当たった直後、壁は見る見る砂となり、崩れ落ちたのだ。
「この銃の名をグランザイムという。そして、放たれる弾丸はパーフォリン。全てのモノを無に返す」
NKの持つ最強にして無敵の武器。触れれば最後、どんなものであっても無になるのである。
ダン
パーフォリンが、次から次へと放たれる。壁に隠れようとも、すぐに砂のように崩れ去り、隠れる場所などすぐになくなってしまう。
俺も応戦するが、軌道は読まれ、当たらない。残る弾丸はあと二発。
何度かNKの攻撃を交わしている間に、NKの持つグランザイムという銃は連射が出来ないのではないかということに気がついた。一回、一回引き金を引くのに随分と時間がかかっている。といっても二、三秒ではあるが。
この数秒が命取りだ。それだけあれば、NKに近づき、至近距離から撃てる。
一か八か賭けてみるしかない。
真正面から突っ込んで行った。全速でNKへと近づく。
ダン
NKの放ったパーフォリンをめがけて一発撃った。
俺の弾丸はパーフォリンに命中し、弾丸はすぐに消えてなくなっり、パーフォリンも消滅した。
わずかコンマ何秒の出来事だ。
弾丸に弾丸を当てるというのも、オンコジーンによる能力向上のお陰で出来る芸当なのだ。
次の瞬間にはNKの懐に入った。グランザイムの引き金を引くだけの時間はない。
俺は避けられないように銃口をNKの心臓に向けて数センチの至近距離から再後の一発を撃った。
ダン
NKの左手には、もう一丁の拳銃が握られていた。これもグランザイムと同じもの。つまり二丁あったというわけだ。
今まで、引き金を引く時間を俺に見せるために、一丁しかないフリをしていたのだ。
その策に乗せられて、俺はNKの懐に入ってしまったのである。
もう一丁のグランザイムから放たれたパーフォリンが俺の胸に直撃した。
そして俺の再後の一撃は、寸前の所で手元が狂い、空へと舞った。
「終わりだな、小僧」
パーフォリンにより、俺は無となって消えてなくなる。服も何もかも。跡形も無く。
今まで、その事実に例外などはなかった。
どんなモノであったとしても、パーフォリンには消滅させられる力があった。
ダン
俺は、NKの持っていた右手のグランザイムを奪い、それでNKを撃った。
「パーフォリンが効かぬだと!?」
それがNKの再後の言葉となった。直後NKは砂となり、朽ち果てた。