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第五章 プロモーション  (促進)  11

 そのスピードを目で追うこともできない。

グサ 

 一瞬痛みが胸の辺りを襲う。朱里が受けたものと同じ攻撃なのだろう。


「TAAという技なの。あなたの細胞を頂いたわ」

 その直後、もう背後にファージの姿はない。双子の方へと戻り、俺から採取した細胞を双子に渡していた。


ダン・ダン

 俺は闇雲に発砲したが、すべてファージの剣によって弾かれてしまう。力の差は歴然だ、というより、普通の人間が敵う相手ではない。常識を逸脱しているのだ。


 直後、俺に向かって手裏剣が飛んで来る。寸前の所でかわしたが、弧を描いて戻ってくる。

 銃で狙うが、数が増えてくると間に合わない。

 肩や足などが手裏剣によりダメージを負った。

 手裏剣はどんどん増えている。このままでは朱里もやられてしまう。

 なんとかしなければ。


 手りゅう弾を投げてみたが、それもファージに切って落とされた。それも着火部分を正確に切り落とされている。何か突破口を見つけなければ。簡単に倒せる相手ではない。だが、時間もない。

 焦りと無力感だけが先走る。


 もう一度手りゅう弾を投げ、空中でそれを銃で爆発させた。その爆発を煙幕に、双子の方へと近づく。手りゅう弾を一個、また一個と投げては爆発させ、時間差で数十個のありったけの手りゅう弾を爆発させた。

 あたり一面煙の渦となり、視界はほとんどない。


 俺は一目散に双子へと走り、双子の一人、手裏剣を作っていた方へと銃口を向けた。至近距離であればファージとて弾くことは出来まい。

 双子までの距離、わずかに五十センチ。


ダン

「まさか……」

 ファージは倒れた。

 俺は、自分自身のお腹に銃口を当てて引き金を引いたのだ。ファージが後ろから襲ってくることを想定し、双子を打つ振りをして。

 だが、ファージの剣による一撃も食らうはめになった。

 骨を切らせての、決死の選択だった。


「なんてね。期待させてごめんね。こんな攻撃では私は倒せないわ」

 一度は倒れたファージだったが、再び上半身を起こす。確かに銃弾は彼女を貫通していたが、急所は外れていた。それどころか、傷口が徐々に塞ぎ始めてるではないか。


「私、無敵なのよ。どんなに傷を負ってもすぐに回復するの。だからあなたには勝ち目はないわ」

 俺の傷の方はまだそれほど回復していない。回復力も数段ファージの方が上なのだ。

 その上、数十個の手裏剣が四方から飛んでくる。

 もう逃げる術もない。

 傷の痛みと、渾身の攻撃とが効かなかったことによるショックで、俺は立ちすくんだ。

 万事休すか。


「さあ、終わりにしましょう」

 ファージは大刀を振りかざしたその時である。


ゴゴゴゴー

 突然の地鳴りが響く。だが、今回は地震ではない。地面に揺れはない。空気の振動。張りつめた空気が歪むかのような感覚。風は止み、雲は静止する。まるで時間が止まっているような感じだった。


「こ、これは……。トレランス!」

 ファージは目を見開き、苦しそうな表情を見せる。そして、お腹を押さえながら前のめりに倒れこんだ。よく見ると、先ほどまで治癒に向かっていた俺の放った銃弾の跡が、再び開き始めているではないか。血がドクドクの流れ出し、ファージは意識を失った。

 

 先ほどまでこちらに向かって来ていた手裏剣も、あちらこちらへと飛んでいってしまった。いったに何が起こっているのか。

 だが、この正気を逃す訳にはいかない。俺は、ファージに留めの一発を放ち、目の前にいる双子とも銃殺した。


「朱里、大丈夫だったか」



 

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