第五章 プロモーション (促進) 7
手のひらサイズのシャボン玉が、もの凄い数で向かってくる。
ダン・ダン
俺はすぐ側の机や床を狙って撃った。銃弾は机や床に当たり、木片や石片を飛び散らす。その飛び散った破片が、シャボン玉に当たると、シャボン玉は溶けてなくなった。
手当たり次第撃ちまくった。
『ナイン』は十二発の弾丸が込められるが、予備の弾丸は六十発しかない。残りが尽きる前に勝負を決しなければならない。
なるべくグラニュウの方へ向かう道筋を作りながら、破片を飛ばした。
シャボン玉は次々に溶けて、床もその液体にさらされて溶け始めている。
石の欠片を投げつけ、それを弾丸で飛び散らせて、ついにグラニュウの一歩手前まで接近することが出来た。
グラニュウは変わらずシャボン玉を撃ち続けている。
このままではこちらの残弾がなくなる。決死の覚悟で、俺は左腕をシャボン玉に突っ込んだ。
シャボン玉は壊れ、中の液体に曝され、腕は煙を上げながら溶け始める。
それでも、拳をグラニュウの方へと力を込め突き刺した。
グラニュウに拳が当たるころには、手の皮は溶け、骨がむき出しになっていた。
その骨さえも溶け初めている。
痛みをこらえながら、突き出した左腕に沿うように『ナイン』を連射し、グラニュウを撃った。
弾が尽きた。
左腕の感覚もない。
その頃には、シャボン玉は体のあちらこちらに接触し、壊れ、液体をばら撒いていた。
全身の痛みのあまり、意識が遠のく。
弾丸がシャボン玉を貫通し、グラニュウまで届いたかどうかは定かではない。
シャボン玉の攻撃をまともに喰らい、その場へ倒れこんだ。
「ルイ、しっかりして。大丈夫?」
どのくらい時間がたったのであろうか。心地よい声が体を包む。眼は開かなくとも、そこには美しい景色が広がっているのが分かった。
「ここは天国か」
そこは、いつしか運び込まれた朱里の家の医務室だった。横にはアデポネもいる。
「助かってよかった……。あとすこし遅かったら」
朱里の顔は涙で濡れ、包帯だらけの俺の胸に顔を埋めた。
「奴は、倒したのか」
弾が尽きたところまでははっきりと覚えている。その後、グラニュウはどうなったのか。
「死んだわ。誰なのかしらないけど、強い相手だったみたいね」
届いていたのか、再後の攻撃が。なんとか四天王の一人を倒せたというわけだ。
朱里達が駆けつけた時には、グラニュウは倒れ、栗夏達は逃げ出した後だったという。
部屋中に妙な液体が散乱しており、助け出すのに一苦労だったと。
「あと三人……。三人倒せば、自由になれるんだ」
朱里に全てを話した。